第41話 遠征の準備とアクセサリー作り
浄化遠征に出かける前の下拵え。
ここで夏に食べたくなるアイスを作っておく。
材料、牛乳、卵、砂糖、塩、氷。
鍋に牛乳と砂糖を入れて火にかけてヘラでかき混ぜ、弱火から中火で半分くらいになるまで焦がさないよう煮詰める。
ボウルなどに水を入れて粗熱を取る。
ボウルに卵を割り入れ、かき混ぜる。
煮詰めた牛乳を少しずつ加えよく混ぜる。茶漉しのような物で1〜2回アイス液を漉す。
容器にアイスの種を入れて、冷やし固める為に準備する。
桶に氷を入れ、塩を入れる。
……化学の実験みたい。塩を入れるとよく冷える。
0℃の氷が溶けて水になる時、周りにある物の温度を下げる働きがあり、さらに塩が水に溶ける時も、熱エネルギーを奪う。相乗効果凄い。
更に1時間程冷やし、なるべく滑らかになるようヘラで沢山かき混ぜたら、しっかり冷やして出来上がり。
早く食べたい、でも我慢。
やるべき事をやってから、お仕事の終わりに食べた方がきっと美味しい。
また浄化の儀式にギャラリーがわりといる可能性がある為、料理人を臨時で多めに雇って彼等に沢山のパンと腸詰めを作って貰う。
ホットドッグのようにパンに腸詰めを挟むので長めのパンを焼いて貰うのだ。
近くに食堂も食べ物を売る店も無い可能性があるので、領民の為にお父様がライリーの騎士とアシェルさんに魔物狩りと言う名の食料調達を頼んでいたのだ。
それでオークが群れでいたので12体狩れた。
オーク肉を使った腸詰めってなんか凄いけど味は豚肉に近いらしい。
* * *
料理人達が頑張ってホットドックを作ってる間に、私は自室にこもってアクセサリー作りをしていた。
杖作りは魔力を使うから浄化儀式の終わった後にやる。
細工師から注文していたパーツが届いたのだ。
イヤーフックだ。
殿下が魔の森の川で獲ってくれた虹色の魚と銀色の魚の鱗を使って耳飾りを作る。
イヤーフックならピアスと違い、耳に穴を開けずに耳の後ろ側からひっかけるだけで済むので。
虹色を上に、銀色を下に、藤の花のように連ねる。
両耳用で自分用とお母様用と他、贈答品用に2セット。
8個程耳飾りを作った。
耳にかける金具の先端。 お母様のは小さいアクアマリンを付けた。
私のは量がわりと多かった青いクズ魔石を使用。
贈答品用は小さいルビー、もう一つは小さく透明なダイヤモンドを使用。
何しろ他所への贈答品用なので小さくても宝石を使う。
けれど主役は殿下のくれた魔魚の鱗なので宝石の主張が強くなり過ぎ無いように小さめ。
贈答品用はやや豪華にデザインも少し変えて使う鱗の量も多い。
私とお母様の耳飾りは片方で上から虹色と銀色一枚ずつ。
贈答品用は上から虹1銀1虹1銀2というように5枚の鱗が連なっている。
虹色鱗4枚で立体的な蝶の姿のようにくっ付けた指輪とブレスレットも作った。
耳元にその蝶アクセを付けた手を持って行くと虹色の花弁に誘われた同じ色の羽根を持つ蝶のようになる。
写真に撮ると映えそうなんだけど、この世界カメラが……スマホが無いからね、残念ね。
皆が記録の宝珠持ってる訳でも無いし。
ちなみに夕食はオーク肉のトンカツをお出しした。
驚きの美味。
衣がサクっとして、お肉は思いの外柔らかく、ジューシー。
殿下も、え? これがオーク肉!? って驚いてた。
ケチャップで美味しくいただいた。
* * *
出発の日の朝は快晴でした。
朝食はご飯、焼き魚の鮭、味噌汁の和食。 お肉はキャンプで食べるので。
イヤーフックは落とすといけないので着替えと一緒にお父様に亜空間で収納して貰っている。
現地で着ける予定。
城の外の庭に出るとワイバーンの前で竜騎士とお話をしてる殿下がいた。
私に気が付くと、雨上がりの空のような美しい蒼い瞳で私を見て、「おはよう」と言って微笑んだ。
私も礼儀正しく挨拶をした。
さあ、今日も飛び立つぞ。
今回ちょっと距離が長いけど、ワイバーンさん、頑張ってね。
上空から見えるライリーの景色は、徐々に瑞々しい緑が増えて、広がって来ている。
荒れた地が減って来ているのがとても嬉しい。
緑色の草海原は目に優しい……けれど、ちょっと感極まって涙が出た。
今日もモモンガ似の妖精のリナルドは私の騎士風の衣装の前開きの胸元からちょこんと顔を出している。
胸元に入っているのは、風圧で吹っ飛ばされ無いようにである。
可愛いのでは?
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