第30話 緊急家族会議

「大変な事になった」


 お父様が急に家族と家令をサロンに呼び集めて深刻そうに言った。

 (妖精は私の部屋で寝てるから置いて来た)


「まさか、魔の森に行けなくなる程の事件でも!?」



 私は楽しみにしていた冒険なのでつい、強い口調で聞いてしまった。


「いや、魔の森には行けるが」

「なんだ、行けるんですか」私はほっとした。


「行けるが同行者が増える」

「良いじゃ無いですか、多少増えても」


「第三王子のギルバート様が、魔の森に狩りに行きたいとおおせだ」


 ダイサン……オウジ……?


「歓待の必要は無いが当家に逗留して、魔の森に狩りに行きたい、故に、食事、寝床、風呂の提供だけ頼むと言うような伝令が来た」


 ええええええっ 王族のお守りが追加された!?


「まあ、魔の森で狩りがしたいだなんて、やんちゃな王子様ですね」



 私がそう言うと、お父様にお前が言うか? という目を向けられた。

 うっ。


「こちらを」と、家令がテーブルの上に謎の袋を置いた。

 じゃらっと音がして、お金かな? って思ったら


「これが、殿下が用意して下さった支度金で、そして砂糖と胡椒まで下さいました。砂糖と胡椒については厨房に」


 と言葉を続けたのだった。


「殿下はいつこちらへ来られるのですか?」



 私は胡椒と砂糖をくれるなら、まあ良いかなと、のんきに聞いた。


「10日後だ」


 お父様が困り顔で言った。


「早いですね、王族の方を迎えるなら、せめてひと月くらいは準備期間が欲しい所ですが」



 今まで静かに話を聞いていたお母様が口を開いた。


「だが、王族が泊まれるような宿もこのライリーには無いし、安全面も考えるとこの城と言う事になる。

支度金まで頂いて、拒否も出来ない。

滞在日数は正確には決めていないが7日程を予定しているとの事」


 王子様アバウト〜!


「では急いで、殿下や護衛騎士様達のお部屋の用意を致しましょう」


 お母様がそう言うと、家令が動く。


「至急、貴賓室と護衛騎士様用の部屋の掃除と準備を致します」


「頼む、コーエン」「はっ!」



 家令が返事をしてメイドと早足で出て行った。

 

 お父様がソファの上で長い足を組み直して、私を見て言った。


「ティアは料理の指示を料理人達にしてくれるか?」

「はい、お父様」 


 はい! 喜んでー! おおせのままにー! 推しの頼み!


「貴方が一番よく出来そうだから、私からもお願いするわ」

「はい、お任せください、お母様」私は笑顔で応えた。


「所で殿下は……王立学院は今、夏休み休暇中か何かで来られるのですか?」



 ふと、気になってお父様に聞いてみた。


「殿下は家庭教師を付けていて、学院には通っておられない」



 へー。 流石王族。


「なるほど、ともかくメニューを決めたり、食材を集めたり、作り置きも致しましょう。

何しろ殿下とお付きの人達とか急に人が増えます」


「ああ、とにかく最低限、失礼のないように」


 お父様が手紙のお返事の用意をしながら言った。


 これにて緊急家族会議一旦終了。

 私も用意しないと。他に冒険用の服とかも。

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