第24話 5歳の誕生日と精霊の加護の儀式

 春になった。庭の庭園も華やいで来て美しい。


 でも朝はまだ寒いし、羽毛の敷き布団はふわふわで、ベッドに設置したら良い感じ。


 良い感じなのでお父様とお母様に添い寝を頼んだ時は私の部屋に来ていただき、このふわふわを体感して貰った。


 この羽毛敷き布団とお母様のたわわの柔らかさ、どちらもそれぞれ素晴らしい。

 お父様の腕の中もぬくぬくしてて素晴らしい。


 ちなみに私の羽毛敷き布団は魔物の羽を使ってる。


 魔物の羽根で布団作るとか変わった子だなと両親に言われたけど、鑑定鏡を使ったアシェルさんが呪いも毒も無いから大丈夫だって言うし、気に入ってる。


 お父様も実際に使ってみて、「悪くない、いや、かなり良い」と言っていたし、

 お母様は「私の分も作れるかしら?」と言っていた。

 アシェルさんが狩りをして羽毛がまた貯まったらくれるらしい。

 お母様にも作ろう。


 4月末には私の5歳の誕生日が来て、5月5日には精霊の加護の儀式がある、貴族が5歳で、

平民は7歳で儀式があるらしい。


 精霊の加護付きはほぼ魔力の多い貴族にしかいないから分けられているとの事。


 王都に行かずとも地元ライリーの神殿で高位の神官か巫女が居れば儀式は出来るから、地元でやる事に。

 良かった、王都で他の高位貴族と会いたくない。怖いもん。


 地元の貴族の5歳なら私と騎士の家の子くらい。


 この世界の騎士は下級貴族に相当するらしい。

 騎士の血が流れていたら今日ここに来れる。

 貴族の血が混じっていない養子は無理で、平民と同じ7歳まで待つことになる。


 このライリーには国境と魔の森が有り、王国より騎士家には

 助成金が出ている、自国防衛の為である。



 4月の某日。


 私の誕生日当日。


 身長が多少伸びてた。良かった、育ってる。

 確か、4、5歳の時の栄養は特に大事だって前世で見た気がする。


 パーティーは私から料理のレシピを習った料理人達が腕を奮ってくれた。

 両親からのプレゼントは新しい淡い黄色のドレスと靴と、万年筆。

 中にインクが入ってるやつ! ずっと欲しかったの!


 嬉しい!入荷したら即完売の入手困難の物らしいのに頑張ってくれたみたい。


 アシェルさんは紫のスイートピーの鉢植えと綺麗な魔石をくれた。


 アシェルさんもお母様と同じく紫が好きなの?と聞いたら、

「紫のスイートピーの花言葉が永遠の喜びだったから」

 だそうな。


 ロ、ロマンチストかな?…ありがとう。やや照れる。



 花や野菜を一生懸命育てたり、石鹸を作ったり、色々してる間に5月5日の精霊の加護の儀式の日が来た。


 空は青く澄んでいる。晴れて良かった。


 誕生日に貰った新しいドレスと靴をおろして着て行く。

 シャーベットカラーの黄色いドレス。

 白い花のレースも付いてて爽やかで綺麗。


 馬車を走らせ、なかなかに豪華な神殿に到着。

 あれ?周囲に瑞々しい緑が、植物が有る。


 お父様に聞くと神殿とその敷地内も結界に守られて瘴気にやられていないそうな。

 流石、神様を祀る所だわ。

 

 騎士の子供も親と一緒に7人くらい先に来ていた。

 遠目で見つけた呼び交わす騎士達にちょっと見惚れる。良い光景だわ。


 領主一家の我々が来ると見るや、一斉に礼を取る。

 領主が声をかける。


 正装をしたお父様とお母様がめちゃくちゃ素敵。


 ──程なくして、厳かな儀式が始まる。


 扉の手前には中央の絨毯の道の両脇に白い天使の像が並んでいて、

 その間を我々が、巫女や神官の後を附いて進む。


 重厚な扉を開くとお香のような香りがふわりと広がる。


 奥には五柱の神様の像が祀られていた。


 戦神 水の神 太陽神 月の女神 大地の女神 


 という順番で横に並んでいる。 


 私の作った祭壇と偶然?同じ並び。中央はやはり最高神の太陽神。


 整列した青い衣装の巫女さんが歌を歌う。 美しい歌声が神殿に響く。


 天井は高く、ステンドグラスの窓から入る光が乱舞するように輝いている。


 次に祭典に奉仕する神官が神様に奏上する言葉、祝詞を唱える。


 先に騎士達の子の加護の儀式が始まる。

 私がトリを務めるって事か。


 葉の付いた枝を持つ白い衣装の巫女が騎士の子供の前に立つ。 

 本日、白を纏っているのが最高位の巫女だ。


 保護者の騎士が側で見守っている。

 巫女の祈りの後に子に何の精霊加護を賜ったか知らされる。


 風、水、炎、地、地、風、水。

 

 騎士の子7人はそれぞれ一種ずつの精霊の加護を賜った。

 …氷も光も居ないな。

 本当にレアらしい。


 いよいよ私の番。ドキドキする。 新しいドレスと靴で巫女の前に立つ。


 巫女が手に持つ枝を五芒星を描くように動かした。


「天におわす神々よ、永遠なりし、無垢なる光よ、導き照らし、その神威を持って我等に心眼をひと時、貸し与えたまえ…」


 一瞬、ざわりと鳥肌が立った。



「──告げる。まず、大地の色が見えます… …大地の精霊の加護がお有りです」



 野菜作りに向いてる!



「次に……緑色、植物の精霊の加護が有るようです」



 ……やはり植物育てるのに特化してない!?…とりあえず良かったわ。



「……プラチナの光、光の精霊の加護が有ります」


 !! 治癒魔法つかえる!?


 おお〜!! と、儀式を見守る皆さんの歓声が響く。

 やはりレアなんだね。

 両親も満足そうに頷いた。


「他にも何か……変わった気配を感じますが、……何かは分かりません」


 何それ。

 ちょっと巫女さん、私が変人だって気が付いたって事!?


「邪竜に呪われた事があるのだが、まさかその影響が?」



 お父様が心配して聞いている。


「いいえ、そんな邪悪な気配ではありません。悪い物ではないのは断言出来ます」


 まあ、なら、いいかな。


「そうか、それなら良い」


 お父様も私と同じ意見だった。


「三種も加護を賜るとは、流石、辺境伯令嬢でございますね」と、巫女さんが微笑んで言った。


「セレスティアナ様は大地と植物の属性の精霊の気配が現時点で既にかなり強いです。

……植物を育てていませんでしたか?」


 巫女さんが鋭いツッコミをして来た。


「そ、そう言えば、魔法、呪文等はまだ習ってないので知りませんが、庭の植物に歌を聞かせていました。

植物は歌を聞かせるとよく育つと聞いたので」


 野菜育てて土いじりしてたとは言えない。


「なるほど」


 巫女さんは納得したように微笑んだ。

 あはは! セーフ!


「ありがとう」 


 とりあえず礼を言っておく。


 うーん、亜空間収納の時魔法は無理かな。

 ちょっと残念だけど、光魔法があれば治癒魔法は使えるようになりそうよね。


「大地、植物、光魔法の初級魔法の冊子が一冊につき銀貨1枚で購入いただけます」


 神官が私や両親に向かってそう言った。


 本人の持ってる属性用を一冊ずつ買えるらしい。


「買います」


 私はお父様の袖をひいて言った。


 魔法の本は貴重だもの。初級用であっても。


「分かった」


 お父様がそう言うと、本日供をしている執事が財布を出して支払った。


 神殿を出る時にはゴーンゴーンと鐘の音が高く遠く響いた。

 儀式の終わりを告げたのだろうか?


 この後は、ライリーの城の庭園で加護の儀式に参加した騎士達家族を招いてパーティーがある。

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