第11話 秋の頃

 秋


 涼やかな風が庭園に吹き渡る秋晴れの中で

 庭園のりんごを収穫する。

 アップルパイとか作ろうか?。実りの季節って素敵ね。


 結果的にポンプとひき肉器のおかげで大金が入った。

 ポンプ便利だものね、王宮の井戸にも付きましたよ。


 みんな頑張ったね。

 この資金で石鹸を量産してシャンプーとリンスも開発しましょ。


 文官も二人雇いました。

 城の守りに騎士も城内に五人勤めて貰いました。

 まだ少ないけど、こちらは徐々に増やして行く。


 更にお父様とお母様の新しい他所行きお洋服やドレスも

 デザインだけこちらで描いてお針子に仕立てて貰う。


 それとアズマニチリン商会にお手紙を書いて、ワカメや昆布、アオサなどの乾物が手に入らないか聞いてみる。

 お味噌汁に使いたい。


 秋になったら紅葉を見に行きたいなって思ってたら、お父様が王都の紅葉スポットのカエデの並木道を見に連れってってくれるらしい。


 やった──っ!

 イケメンエルフは新任の五人の騎士のまとめ役に

 城の守りでお留守番になる。

 ごめんなさい、ありがとう。



 お母様は私と日にちをずらしてお父様と紅葉デートに行く。

 他領のお茶会に招かれているからそちらで紅葉を見る。

 新しいドレスで社交できる。


 上品で深い緑色のドレス。お父様の瞳の色も深い緑なの。

 ふふ。


 お父様の服も高貴な騎士っぽい黒地に銀糸入りのかっこいい服を仕立てる。


 ちなみにお茶会は商品の宣伝も兼ねている。

 合理的。


 私はお父様との紅葉デートの為に渋めの赤でシンプルなワンピースを作る。

 ワインレッドの生地を取り寄せた。

 未だ自分用はどうせすぐにサイズアウトするので経費削減で

 自分で縫う。


 平民擬態変装デートだ。豪華である必要は無い。


 お父様との紅葉デートに王都のカエデの並木道。

 今日も私は亜麻色の髪と茶色い瞳に見えるように魔道具を借りている。


 うーん、カップルが手を繋いで歩いてますね。

 微笑ましい。


 私はパパ抱っこ。縦に片腕で抱っこされるあれで紅葉した並木道を

 移動している。


「わ──! 可愛い〜〜!」

「見て、あの子すごく可愛い」


 と道ゆく人達が私を見て褒めてくれる。


 お父様はフードを被ってやや顔を隠してる。

 仮面は不審者とか言われかねないから今回は無し。


 大きい男の人が小さい女の子を抱っこしてるのってめちゃ可愛いの知ってる。

 私も客観視したい。


 道に落ちた葉っぱを少し貰って行く。記念に。


 並木道の近くの公園にはオシャレなカフェっぽい店が有る。流石王都。

 カヌレと紅茶を注文した。美味しい。


 まったりしてから店内でお母様へのお土産に新しい紅茶や

 ハーブティーの茶葉とカヌレを買って帰る事にする。


 帰りがけに公園でどんぐりまで拾う。可愛い。帽子付きも見つけた。

 ふふ、帰ったらお母様に見せよう。

 思い出したように幼女っぽい行動をする私。


 お父様は優しげな眼差しですぐ側にいて見守ってくれている。


 お父様の目付きは基本的にキリっとシャープなんですが、

 笑うと想像以上に優しげになって萌えなんですよ──!


 * * *


 秋の食材。


 きのことチーズとベーコンのフォカッチャを作る。 

 フォカッチャはイタリアの平ぺったいパンで、真ん中に窪みを作って

 具材を置く。

 秋にぴったりの料理。


 ガーリックも効かせちゃうぞ。

 りんごジュースも匂い消しに添える。


「美味しい」

「秋らしくて良いわね」

「うん、エルフの私も満足」


 両親とエルフにも高評価。


 * * *


 両親がお茶会の社交兼、紅葉旅行に行く前にお母様にも添い寝をお願いしてみた。

 夏終わって秋だし、涼しくなったから良いかなって。


 許可を得たので日課のお祈りを自室で済ませてから

 今夜はお母様の寝室へ突入。


 新しい香りの良い石鹸も使い、お風呂にも入って来た。

 お母様も胸元が大きく開いたネグリジェを着て寝る準備は出来ている。


 お母様のベッドは薄い紫色の天蓋付きベッドだ。エレガントだ。

 

「出来れば上、仰向けではなく、私が寝付くまで横向いて寝て下さい」

「横…ティアと向かい合えば良いのね?」

「はい!」


 ひし! っとお母様に抱きつく私。

 顔は胸の谷間に埋もれる。


 な……成し遂げた!


 たわわに顔を埋めて寝るのが前世から夢だった!


 男に転生して夜の商売の人に頼まないといけないかと思ってた。

 今の私は幼女で実の娘だし、何も問題ない!


「あらあら、甘えん坊さんね」

「お母様いい香り…」


 すりすりと頬擦り追加。


「ふふ、そんなに動くとくすぐったいわよ」


 お母様は小さく笑ってる。

 きっと母性愛が炸裂してる。

 

 ……とっても満足。 ……至福。柔らかい。

 私は柔らかくて感触さえ良ければだいたいなんでも好き。

 ……猫のプニプニの肉球も大好き。


 ……おやすみなさい。 今夜は良い夢が見られそう。



 後日


 パンプキンパイとりんごのパイとミートパイの三種を作り置きする。

 お父様とお母様が他領に行く旅の道中も美味しいものが食べられるように。

 お父様の亜空間収納に入れておくから焼き立てが食べられる。

 

 ──ところで、この世の何処かにさつまいもと栗は無いかしら?

 これも秋の味覚だから食べたかったなあ。

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