新たな仲間。

俺が冒険者登録をして、数日が経った頃、俺とヨミは壁にぶち当たっていた。

「俺たち何回か討伐クエストに行ったけど、一回も達成出来てないよな。」

「ゼロは魔法覚えたけど、支援っぽい魔法ばっかだもんね。あんまり魔法が効かないモンスターに歯がたたないし、どうしようか。」

やばいよな、俺たち。

そもそも、こいつのなんちゃって火魔法なだけでも頭が痛いのに。

「あー、他の人達はいいね。ちゃんと、しっかりとしたパーティーになってて、私たちなんてどっちも後衛よ。」

俺たちは後衛?

そうか、俺たちは後衛なんだよな。

だったら前衛を探せばいいじゃないか。

「おい、ヨミ。仲間を探すぞ。前衛をな。」

「そうよね、仲間ね。その発想はなかったわ。いっつも独りだったから。ゼロが初めてだったから、考えもしなかったわ。」

コイツ結構長く冒険者していたはずなのに、俺が初めてなのかよ。

「気にすんなよ。」

「何を気にするの?なんでゼロは可哀想な奴を見る目で見るのよ!」

哀れなヤツめ。

「じゃあメンバー募集を出すか。えっと、まず前衛で、物理的な攻撃を得意にしている人。こんなもんかな。」

「いいんじゃない。別にゼロも弱っちいから、実力はどんなんでもいいし。」

コイツ、自分の火魔法の威力分かってんのかよ。

「まー、このパーティーにはなんちゃって火魔法使いもいるし、誰でもいいだろう。」

「誰がなんちゃってだって。」

「お前だよ。」

俺たちが言い争っていると、

『ガシャン、ガシャン。』

これは、鎧の擦れる大きな音が近づいてような。

「すいません。ちょっと尋ねたいのですが。」

俺とヨミが顔を向けると、そこには全身鎧で、顔も見えない人がいた。

「すいません。」

「あっ、すいません。なんか用ですか。」

こんなゴツそうなやつが俺たちになんのようなのだろうか。

「あなた達はさっき物理攻撃が得意なメンバーを募集すると言っていたようだが、間違いないか。」

「はい、そうですが。」

「そうだとも。」

なんでヨミは得意気なんだよ。

「突然だが、私をあなたのパーティーに入れてくれないだろうか。」

これは本当に突然だな。この人は男か女かもわからないし、入れるにしろ、拒むにしろ情報が足りなさすぎすな。

「なぜ私たちのパーティーに入りたいのだ?」

ナイスだ、ヨミ。

「私も駆け出しの冒険者で、そろそろソロではキツいくなってきていたんだ。」

確かに、遠くに行こうとするとモンスターの数も多くなるしな。

「そうか。見たところ、物理攻撃専門って感じだよな?」

「うむ、私は防御力とパワーには自信がある。」

正に俺らが求めていた人材じゃないか。

だが本当に都合よく俺たちの目の前に現れるものなのだろうか。

なにか、引っかかる。

「ゼロ、我はこれ以上ない人材と思うんだが。」

「俺もそう思うんだけど、なにか引っかかんるだよな。あと、もうそろそろ、その口調やめろ。」

んー分からん、まー高そうな鎧も着てるし大丈夫だろう。

「分かった。これからよろしく。」

「うむ。よろしく。」

「よろしくね。」

「そういえば、まだ名前を聞いてなかったな。」

「私の名前はイクエスだ。」

「よろしく、イクエス。」

「よろしくね。イクエス。」

そして、俺たちは飯を一緒に食って次の日にさっそく3人でクエストを受けることに決めてから解散した。

 次の日、俺たちは街の門のところで待ち合わせをしていた。

「あいつら、おっせーな。いつまで待たせているんだよ。」

すると、街を出るために門を通る2人組が言った。

「朝のやつ見たか、変な口調のエルフがギルドの中で魔法ぶっ放してたの。」

「見た、見た。なんか他の冒険者に話しかけられたと思ったら、いきなりドカンだぜ。からかったあいつらが悪いのかもしれねぇけど、何も関係ねぇおれらにいい迷惑だぜ。」

「ホントだよな。おかげでギルド内がシッチャカメッチャカだぜ。」

うん、俺にも口調が変なエルフの知り合いがいるけど、きっとそうそいつではない。

そうじゃないよね。

「すいません、ちょっと聞きたいことがあるんすけど。」

「なんだい、兄ちゃん。」

「何でも聞いてくれよ。」

「その話に出てきたエルフって、風魔法使いですか?」

頼む、俺の思い過ごしであってくれ。

「あーそうだよ、風魔法使いだよ。」

「兄ちゃんなんか知ってんのか?」

うんうん、風魔法使いのエルフ、そして口調がおかしい、まだ確定していないよな。

もしかしたら、通りすがりのやつかもしれないし。

「いやいや、もしかしたら知り合いかもしれないってぐらいですよ。ちなみに、目を隠してたりはしないですよね?」

「いや、なんか隠してたな。封印されし左目がどーちゃら、こうちゃらって。」

「あと、闇をなんとかしてるとか。」

詰みやん、そんなん確定やん。 

ごめんなさい、そいつ俺の仲間です。

「どうしたんだい、兄ちゃん。いきなり頭なんか下げちゃて。」

「お前は何もしてねーだろ。」

ごめんなさい、めっちゃ関係あります。

「いや、無性に頭を下げたくなって。」

「変わってんな、兄ちゃん。」

「よー分からんけど、頑張れよ兄ちゃん。」

ごめんなさい、本当にごめんなさい。

 それから、ちょっと間を空いてヨミが来る。

「ちょっとヨミ聞いてよ。」

『パン。』

「ちょっと、いきなりビンタって何してんのよ。」

「なんか心当たりないか?」

「全くないわよ。」

こいつ抜け抜けと。

「俺はさっき冒険者から、ギルドで揉め事があったって聞いたんだけど。」

「そうなのよ、ゼロ。前に色々言ってきた奴らがまた言って来たのよ。」

「まー、お前が言われて怒るのは分かる。」

「そーなのよ。怒ったの。」

「で、その後何した?」

「カーっとなって、魔法をぶっ放したの。」

「そいつらがやっつけたのは分かった。周りはどーなった?」

「それは、ぐちゃぐちゃよ。」

「なんも、怒られるようなこと本当にやってないか?」

「あっ。」

それから、しばらく俺はヨミに説教をした。

 その後少ししてイクエスが来た。

「すまない、遅れてしまって。」

「いいよ、全然。なんか事情があったんだろ。さぁ、行こうぜ。」

「行きたいのは、山々何だか、えっとそのー。」

「ヒッ、ヒッ、ズルズル。ごめんなさい、もうしません。」

「分かったから、もう離せって。」

「許してくれる?」

「許すから。」

正直面倒くさい。どうでもよくなってきた。

「ホントに、ホント?」

「マジだって。」

「そう、ズビー。さすが我が理解者。懐が大きい。」

「おい、今俺のズボンで鼻咬んだだろ!」

きったねぇ。マジであいつぶっ殺すぞ。

「どーやら、落ち着いたようだな。」

「さぁ、ゼロ、イクエス、行くわよ。」

あいつがなんで仕切ってんだよ。

顔面、鼻水だらけで、目が赤いけど。

「なぁ、ヨミは何をしたんだ?」

「気にすんな、イクエス。」

「そーいわれてもな。」

と、色々あったがとりあえずモンスターがでるポイントに向かうことになった。

「るん、るん、るーん。」

ヨミが楽しそうに鼻歌を歌う。

「しかし、あいつはさっきまで泣きじゃくってたくせによくもまぁ、あんな楽しそうにできるな。」

いい風に言うと、ポジティブ、悪い方で言うとただのバカだな。

「確かに、あの前向きさは見習わないとな。」

「お前まで、ああなったら、このパーティーら終わりだな。」

少し考えただけでも身震いが止まらない。

「ねぇ、ゼロ、イクエス遅い。早く行こう。」

「分かったよ。」

「うむ。」

イクエスまで、変なやつだったらという考えが頭によぎったが、それを振り払い俺は二人を追いつくため、駆け足で向かった。

 俺たちはそれから20分ほど歩いて、そのポイントに着いていた。

 その場所は、周りに長めの草が茂っていて、モンスターが隠れていそうな場所があちらこちらにあった。

「ゼロ、気をつけて、どこからモンスターが来るか分からないわ。魔法をいきなりぶっ放すなんてバカなことしないでよね。」

どの口が言ってんだ。

「なんで俺が、お前に注意されてるんだよ。どっちかっていうと、お前のほうがやるだろ。」

「なにをいってるのよ、仮に私が魔法を打っても、夜を統べる私にしてみればこんな所にいるモンスターなんてイチコロだもの。でもゼロはそうじゃないでしょ。だってクソ雑魚だもんね。」

こいつ俺にケンカ売ってのか。

「なにを言ってるんだ、なんちゃって魔法使い。お前の魔法はあれだろ、火種ぐらいにしか役に立たないやつだろうが!」

「まぁまぁ、ゼロもヨミも落ち着いて。」

イクエスはそういうが、ちょっとあいつには身の程を分からせないとな。

すると、みるみるヨミの顔が赤くなった。

「分かったわ、ゼロ。じゃあ私がなんちゃってかを確かめさせてあげる。」

ヨミが、瞼を閉じ、集中し始める。

すると、どんどん風がヨミの手のひらに収束していく。

なんか、悪い予感がする。

「ヨミ、分かった。お前はなんちゃってじゃなくて、魔法使いだもんな。」

「そうだぞ、お前はすごい魔法使いだ。」

とりあえず、落ち着かせよう。

「そうなの。私はなんちゃってじゃないない。すごい魔法使いなの。」

「すまんかった。お前はすごいよ。」

これでひとまず安心かな。

しかし、ヨミは更に集中を高めていく。

「なんで、まだやってるんだよ!」

「この際だから、ゼロに私の凄さを教えようと思って。」

どんどんとヨミの手のひらの渦が大きくなっていく。

「ヨミ、やめろって!」

「ふーん、びびってるんだゼロは。」

「ビビってねぇわ!それが危なすぎるだけだわ。」

ヨミの手のひらの渦は当たったら死にそうなくらいまでなっていた。

「仕方ないわね。そろそろ、やめようかな。」

良かった、これで一安心だ。

「あれ?待って!ちょっと、やばいかも。」

「どうしたんだ?早く魔法解除しろよ。」

ヨミが、今までにないくらいテンパっている。

「ゼロ、イクエス、ごめん。もう解除できないっぽい。」

悪い予感的中だよ。

「だから言ったじゃないかよ!解除ってことはぶっ放すしかないってことだよな?」

「それはかなりまずいことだな。」

「やばい、もう爆発しそう!」

こいつ、言わんこっちゃない。

「どこでもいいからぶっ放せ!」

「ヨミ、頑張れ!」

すると、俺たちが来た方向と真逆側にヨミは立った。

「ウィンドバン!」

ヨミの魔法は一直線に2キロ先くらいの岩に当たって爆発した。

『どっかーん。』

その音と共にものすごい地響きがなった。

「ふー助かったわね、感謝してね。」

「お前のせいで、こんなことになったんだろうが!」

こいつは本当に、

「ゼロ、ヨミ、なにかどんどんと近づいて来ているのだが。」

イクエスがおずおずと俺たちに向かって言ってきた。

 俺は、その何かをよーく見てみると、ゴリラみたいな感じのやつがこっちに来ている。

 「なー、イクエスが言ってたやつなんか、ゴリラみたいな、感じなんだか。」

 すると、ヨミは顔を青ざめ、イクエスはなぜか帰る支度を始めた。

 「ゼロ、それはマテンゴリラよ。ただでさえ、腕っぷしが強くて大変なのに、表面は猛毒なモンスターなのよ!」

「おいおい、マジかよ!そんなのやばいじゃないか。イクエス早く逃げる準備をするぞ。」

と、俺は後ろを振り返るとイクエスはなぜかもう逃げていた。

「イクエスのやつ、やりやがったな。もし、生きて帰ったら、とっちめてやる。」

と、俺が恨み言を言っていると、

「ゼロ、大変だわ!」

「今度はお前か、ヨミ早く逃げるぞ。」

「そうしたいんだけど、腰が抜けて動けないのよ。」

「そうか、残念だよ。達者でな。」

と、俺がかっこいい感じで去ろうしたが、

「待ってよ、置いて行かないで!」

という感じで、また泣き出して俺を離そうしてないので仕方なく俺はこいつを背負って走り出した。

「おい、ヨミ。あいつらとの距離はどれくらいだ?」

「どんどん近づいてる!ゼロ、もっと早く。」

こいつ、乗せてもらっておいてなんて言い草だ。

「もういい、お前を置いていく。」

「ごめんなさいー。もう行かないで。」

本当にこいつは。

俺たちがしょうもないケンカをしている間にも少しずつあいつらは近づいてきている。

「ヨミどうにか魔法で出来ないか?」

「無理ね、さっきのやつで魔力が残ってないわ。

「やっぱり、使えねー。」

「やっぱりって何よ!」

やっべ、声にでてた。

「ヨミそんなことどうでもいいから、あとどのくらいだ?」

「やばい、あいつらすぐそこにいる!やばい、毛が飛んでくる!」

これは、本当に時間がないようだ。

「あまり、使いたくなかったが、俺の魔法を使う。」

「なんだ、手があるんじゃない最初から言いなさいよ。」

「お前、あとで文句言うなよ?」

「言わないわよ。さー早く。」

「よしわかった。」

俺も覚悟を決め、呪文を唱える。

「アクセル。」

この呪文を唱えた瞬間俺たちはみるみる加速し、モンスターたちの姿も遠のいていった。

「ゼロ、やるじゃない。見直したわ。さすが私の理解者ね。」

「ふん、喜んどけ。」

こいつは、なんにも分かってない。

「どうしたのよ。素直に喜びなさいよ。ねー、ねーってば。」

俺はヨミのうざい言葉を無視した。

「もーいいわ。それより、そろそろ止まりましょう。さすがに速すぎて怖いわ。止まって、歩いて街まで帰りましょう。」

「それは、できない相談だ。」

「どうしてよ!」

やっと、この呪文の真実を告げる時が来たようだ。

「だってこれ、俺止まりかた知らないもん。」

俺は満面の笑みで言い放った。

ヨミは少しの間、固まっていた。そして、理解して青ざめていった。

「どういうことよ、そんな冗談やめてよ。」

「冗談じゃないよー。」

俺はまた満面の笑みで言い放った。

「ちょっと待ってよ。もうすぐ、街に着くんだけど。」

「それは、良かったな。」

「本当に止まれないの?」

「止まれない。」

ヨミは、俺の言葉を聞くと、おれと同じように笑うようになった。

「よし、あとはどこに突っ込むかだけだ。石壁以外なことを祈るだけだな。」

「そうね」

そこから、数分が立ったころ、牧場が見えてきた。

「ヨミ、牧場が見えてきたぞ。」

「本当に?もしかしたらあそこに突っ込めば、助かるわね!」

冷静に考えると、突っ込む場所で一喜一憂するのもおかしな話だが、俺たちには死活問題なため仕方ない。

「よし、直線上に木造の建物があるから、そこに突っ込むぞ。」

「分かったわ。」

そして、数十秒後に俺たちはめでたく石壁以外の建物中にある藁に頭から突っ込むことができた。

その後、近くの牧場で、頭から藁に突き刺さった、気を失った男女が発見されたというニュースが街中で話題になったことは俺たちには知る由もない。

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俺、神なんですけど さわい おくる @pitcher16033

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