お前、中二病だろ!

神生最初の失恋をしたあと、俺は三日泣き続け、俺は当分の目標を天界に戻るための手段である、魔王城に置いた連絡装置を目指すことに決め、そのためにとりあえず街を目指すことにした。

 確かこの世界は、ニホンという異世界の創作物を参考に作ったんだったな。魔法、スキル、称号、ステータスなどがあって、それらを駆使して、モンスターと戦ってたはずだ。

 一時間ほど街を目指し歩いたところで、冒険者らしき女の子がスライムと戦っていた。

彼女はエルフだった。髪は金髪で、耳はスラリと長く左目に眼帯していて、マントを背につけていた。

「我の名前は、ヨミ。夜を統べるものである。お前との戦いを待ち望んで左目が、うず、ひゃあ!」

スライムが彼女に飛びつく。

「ちょっと取れない!取れない!ヌメヌメして気持ち悪い。服も溶けて来てるし。誰か助けて!」

何やってんだよあいつ。冒険者じゃないのかよ。あんなやつもいるんだな。街へ行こうとするが、

「そこのカッコいいお兄さん、私を助けて!」

めんどくさい。こういうのに絡むとろくでもないことになるって、ニホンの本には書いていたし、触らぬ神に祟りなしってやつだな。俺神だけど。

「ちょっと、見捨てないで。お願いします。何でもしますから。」

彼女はガチ泣きしながら、俺を見つめている。

「分かった。分かったからそんな顔をすんな。」

子供じゃないはずなのにあいつ。

俺はスライムへパンチを食らわせるが、倒れない。

「ちょっと、マジメにやってよ。」

「分かってる、ちゃんとやってる。」

彼女の服がどんどん溶ける。

「ひゃあ、見るな!」

彼女の真っ白なきれいな肌が、露わになる。

ずっと俺はスライムを殴り続けるが、やはり全くダメージが効いていないっぽい。

あっ、分かった。俺、下界に降りるときに、種族を人間にして降りたから、レベル1だわ。やばい、俺スライムにも負けるわ。

突然、彼女からスライムは離れ、俺に体当たりした。

やばい、スライムに体当たりされただけなのにクラクラする。意識が、飛びそうだ。その時、

「やった!スライムがいなくなった!」

意識が朦朧としている中彼女が喜んでいるようなのが分かったが、俺は意識が飛んだ。


眩しい。俺は死んでなかったのか。

 「おーい。生きてますか?まだ起きてないようだね。じゃあ、ククク、夜を統べるものである、私の前で無防備に寝ているとは、バカな奴め。うぅ、左目がうずく。」

生きていたのは良かったが、まだいたのかこいつ。

「あー、ちょっとすいません。」

「起きたの!良かった、死んでなかったのね。」

「おかげさまで、どんくらい意識失ってた俺?」

「あー、1時間ぐらいかな。一応治癒魔法かけたけど、まだ動かないほうがいいよ。」

確かに体がだるい。

「そうだ、ちゃんとした自己紹介まだだったよね。ククク、我の名前は、ヨミ。夜を統べるものだ。」

まだそのキャラ続けるんだ。

「俺の名前は、ゼロ。この世界の創世神だ。」

すると、彼女は顔がパァッと明るくなる。

「お前も俺と一緒か。ククク、まさか同胞がいるとは。我は嬉しい。」

あっこいつ俺のこと神って信じてないな。俺を神って自称してるやつって思ってんのか。確かに称号そうだけど。確か称号は、特別なやつには、ちょっとした付与がかかるんだったかな。

「おい!お前と一緒にすんな。俺はマジモンの神だ。」

「なかなか設定を作り込んでいるのだな。その拘りには感心するよ。」

クソ、信じてもらえないか。こいつの言動なんか、見覚えがあるんだよな。

「あっ、お前中二病だろ。」

「なんだチュウニビョウとは、よくわからないがカッコいいな。」

やっぱり、共鳴するんだな。

「お前の喋り方鬱陶しいから、やめてくれよ。」

「鬱陶しいって、ひどい。分かったわよ。」

「ところであなた、スライムに負けるって弱すぎない?」

「色々あんだよ、俺にも。」

「あっごめんね。隠したいことは誰にでもあるよね。」

なんか気が狂うな。

「ところでお前は、なんか仕事の最中だったのか?」

「そう!クエストの最中だったんだよね。でも私が一番苦手なスライムに会って、それで。」

なるほど、そういうことだったのか。

「あなたは、どこかに向かっているの?」

「そうだ。ここから一番近い街に向かってる。」 

「それじゃあ、私が街まで連れてってあげるよ。あなた弱いし。」

「弱い言うな。確かにありがたいけど、お前はいいのか?」

「いいのよ。私話相手欲しかったし。街では頭のおかしいやつ扱いされて、誰とも話せないもの。」

確かにあの言動じゃあ仕方ない。

「あとお前っていうのはやめてね。これから一緒に行く仲間なんだから、ヨミって呼んで。」

「分かったよ、ヨミ。俺のこともゼロって呼んでくれ。」

「分かったわ、ゼロ。これからよろしく。」

彼女は笑顔でそういった。

だが俺はこいつのダメさにこれから気づき、こいつと一緒に行くことを後悔するのを知らなかった。

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