第48話 [喰獣vs氷竜]
「な、なんで……なんで、計画は完璧で、ワタシの能力は最強なのに……ッ!!」
ボロボロと涙を床に流しながら呻く
琴音や封美もなぜ勝てたのかと疑問が顔に出ていたので、一から説明することにした。
『まず、俺と琴音が二手に分かれて攻撃を仕掛けた時だ。その時俺は失敗したが、ナイフを投げた。お前はそれを所有化したが、投げることがなかった。そん時にお前の能力について大体わかった』
俺はナイフを創造し、指でくるくる回しながら話を進める。
『お前の能力は、物を所有化する。それを最大限発揮して使用できる……が、本来の使い方以外は使用できない。ナイフは果物などを切る物。投げるものじゃあない。
俺が〝槍〟と言っ投げた〝モリ〟も、俺を狙うことなく、本来の目的の〝魚を突く〟ということを遂行してくれた』
「ん、じゃあ最後に奪われてた銃ってもしかして……」
『そのもしかしてだ、
「!!?」
大太は目を丸くして驚き、銃に目を向けた。
ま、銃を作るのはだいぶ精神力とか使われるから、連続して作れないから助かったぜ。
「なるほどねぇ。でもさぁ、なんで私たちを『4階に行っておいて』って言ったんだい? 零太郎から渡されたコレには、『3階廊下消化器に隠れてくれ』って書いてある」
琴音はポケットから一枚の紙切れを取り出し、そんなことが書いてある紙を見せてくる。
『それはだな、最初に二手に分かれる攻撃の時、こいつは俺の動きがわかってたよな。その時、能力で聞いていたんじゃないかなと思ってな、紙で渡させてもらった』
「さすが零太郎! 私に考えられないことを平然とやってのけるッ! そこに痺れる、憧れるぅ〜っ!!」
『あ、そうそう。ちなみに銃が解除できないって言ってたよな、アレは嘘だ』
パチンッと指を鳴らすと、銃は蒼炎となって消え失せる。
「ぅ、ううぅううう!!!」
大太の悔しがる様子からして、俺の考察は全て当たっていたらしいな。
一息ついていると、大太は鳴き声から笑い声へと変わっていってた。
「あーあ! ワタシはもう知らないぞ!!」
『何がだ? ジ○ジョ一部のモブキャラ知らないのか?』
「チガァウ!! ワタシは弍番目と契約したんだ! 契約が解除された時、弍番目の今ある力を全て解き放つってなァ!!」
『……思ったよりやばそうだ』
「零太郎、急いで行こう!!」
俺たちは、急いでクロエの元へ向かった。
###
――零太郎たちが黒幕を倒す少し前のこと。
「さてと、僕も頑張りますか」
僕が近づくと、獣は距離をとってジッとこちらを睨んでいた。
『ガヴゥウウ……!!!』
僕を警戒しているのか、一気に大人しくなっていた。
「お、おいアンタ! 零太郎はどうした」
「ナバナバに求む〜っ!!」
片目を隠している黒髪黒目の男の子と、灰色髪に翡翠色の目をした女の子が今の今まで戦っていたようだ。
僕は二人の前に出て、獣を見上げる。
「僕がそのレータローの代わりに来たのさ。あとはまぁ……任せてよ。巻き込んだら嫌だから、離れて見ておいてくれ」
「そ〜れは流石に……あたしは――」
「猫野、零太郎が信じて送ってきた人物だ。オレたちも信じよう」
「む……彗一がそー言うなら……」
「ありがとね、二人とも」
二人が安全な場所まで避難したあと僕はふーっ、と息を吐いて目を閉じる。
除霊師とか、そういうのはまだ全くわからない。力の使い方も自分を信じるしかない。でも、僕を信じてくれている人がいる。
だから……期待に応えたいんだ!!
そして、目を思い切り開眼させる。
『グヴゥ……』
僕の体からは氷が放出され、巨大で、細長い球状もとい卵状の氷の塊が出来上がった。
そしてその氷はピシッピシッと音を立てて亀裂が走る。一気に氷が割れると、そこからはドラゴンの姿になった僕が出てくる。
『よ、よし! うまくできた』
『ガヴゥゥゥウ……!!!』
『悪いけど、キミは倒させてもらうよ』
ジリジリと睨み合いながら、僕と獣は円の弧を描くようにゆっくりと回っている。
僕が出てきた時に生成した氷がガシャンとバランスを崩して倒れて音を立てた瞬間、こちらに襲いかかってくる。
『ガヴアァァアアアーーッッ!!!』
耳を穿つような咆哮をしながら飛びついてくるが、僕は軽やかに避けると同時に、地面を少し凍らす。
それをあと二回くらい繰り返した後、僕は地面の氷を使って氷柱を作る。
『グァヴッ! ガヴ!!』
『えぇ〜〜!?』
氷柱をバリバリと、アイスキャンディーでも食べるように口に含んでいた。
僕は翼を羽ばたかせて、空に逃げる。
『ガァァアアアアア!!!!』
『……! しつこいよキミ!!』
空にまで飛んできた獣を、僕は前足を使って叩き落とす。だが、体勢ガクッと崩れる。
よく見ると、獣の長い尻尾が僕の尻尾に絡みついていて、そのまあ地面に叩き落とされてしまった。
『いてて……』
『ア゛ァァ……!!!』
口を大きく開けていて、その中は混沌色に輝いている。避けようとしても、後ろは校舎。僕がなんとかするしかない。
僕も肺あたり(?)に力を込め、一気に口から放出する。
混沌色と紫色の光線が、獣と僕の距離のちょうど真ん中で鬩ぎ合い、爆発して砂煙が舞う。
『なんとか耐えたみたいだね……』
『グルルルァアアア!!!』
『しまっ――』
砂煙から現れた巨大な口に気づかず、避けるのが遅れて前脚の一本が食べられてしまう。
少し歯をくいしばり、僕は尻尾を槍のようにして獣に反撃をする。グサッと体を貫通するが、獣は構わず僕に襲いかかってきた。
『ガァァアヴアアア!!!!』
「ね、ねぇあれやばいんじゃない!!? 助けに行かないと!!!」
「待て猫野。大丈夫だ」
バリバリと体を簡単に食べているが……僕はそれを、上から見下ろしていた。
「どうせ食べてもらうなら僕は……彼がいいんでね」
『グ……ヴァアガヴア……!!?』
傷跡がどんどんと凍り始める獣。体に突き刺した時、中に仕込んでおいたのだ。内側から凍っていく代物だ。
背中にある翼を羽ばたかせながら見下ろしていたが、一気に急降下して獣の額に手をつけてこう言い放った。
「もう――〝動くな〟」
獣は紫色の氷漬けになって、ピクリとも動かなくなった。
「……ふぅ。なんとか、キミの期待には応えられたかな。ふふっ、褒めて欲しいね」
間一髪で、僕は黒い獣に勝利したのであった。
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