第43話 [七不思議の伍番目]
その後も放課中にクロエがやってきてはクラスを荒らしていったが、まあ俺は一応監視役だし、来てくれるのは丁度いいだろう。
……でも、監視役だけどなんも説明されてないんだよなぁ……。ざるじゃね?
「零太郎〜、帰ろ〜」
「あー……そうだな」
本当ならあの謎の少女を探したいと思っていたが、まあ毎日学校に来てればいつかは会えるだろうと思って、帰ることにした。
教科書をバッグに詰めて帰る準備万端になった時、クラスメイト声をかけられた。
「なぁ、中学生くらいに見えるちっこい美少女がお前のこと呼んでほしーっつってたぞ」
「え? ……まさか……」
俺を呼んでいる人の特徴が、今一番探し求めている人の特徴にいくつか当てはまっていた。
教室の外に出ると、俺の予想が的中したことが確かになる。
「ん、お兄さんお疲れ様」
「……あぁ、お陰様で救えたぜ」
片手をポケットに突っ込み、フードを被ったあの時の少女がそこに突っ立っていた。相変わらず半目で気だるそうな雰囲気を醸し出している。
でも、なんで普通の人にも見えてるんだ? まさか俺と同じ物を集めてるとか?
「零太郎……また女を引っ掛けてる……」
「レータローはたらしというものなのかい?」
ハイライトが消えた目をしている琴音と率直な疑問を俺にぶつけるクロエ。
俺が関わる人がみんな可愛い女の子だったんです。信じてください。
「……ここで話すのもアレだし、移動する。来てお兄さん。二人も来て」
袖口を掴んでグイグイと引っ張られながら謎話の少女についていくこと数分、やってきたのは旧校舎の一教室であった。
この高等学校にはとてもオンボロな旧校舎があるのだが、取り壊しは決まっていないらしい。
「お兄さん、殺気を隠すのが一流でも、漏れてる霊力から殺気が伝わるからダメだね」
「…………」
クロエを助けるのを手伝ってくれた人物。だが、まだこの少女を完全に信頼しきったわけじゃない。信頼しきれる要素がない上、信頼できない要素が多々ある。
だからいつでも殺せるようにしてたが、バレてしまったみたいだ。
「悪いな、そういう癖があるんで。治すように善処するよ」
「ん、許す。まだ信用できないみたいだし仕方なし。適当に座って」
「座ってって……座るどころかねぇ?」
琴音の言う通りだ。この教室、ボロすぎて床が軋み、今にも抜け落ちそうな感覚がするのだ。
とりあえず教壇にあぐらをかいて座っておいた。
「この子がレータローの手助けをしてくれた子なのかな? 一体何者なんだ?」
「まぁ、お兄さんたちになら言ってもいいや」
くるっと踵を返してこちらに振り向き、赤い瞳を向ける。
「神里高等学校の七不思議が伍番目――〝トイレの花子さん〟」
「ほぇえ、七不思議とかもいるんだな」
「トイレの花子さんは僕でも聞いたことがあるよ」
「えぇえええ!?!?」
琴音が一番大きい声を出して驚いていたが、そんなに驚くことなのだろうか?
まあ確かに、花子さん要素が少ないけどな。
「凄いことなのか?」
「すごいも何も! 七不思議相手に手助けしてもらったって! とんでもないよ零太郎……。なんせこの高校にいる七不思議は全員もれなく怪異度・壱級以上なんだよ!!?」
「えっ!? じゃ、じゃあお前も怪異度・壱級なのか!?」
「ん、序列とか知らないけど、わたしも多分壱級だよ」
トコトコとこちらに歩いてきて、ストンっと俺があぐらをかいているところに座ってスマホゲームをし始めた。
敵意は無さそうで、逆に懐かれているみたいでよかった。襲われたら致命傷じゃ済まなかったな。
……あれ? でも琴音、『怪異度・壱級以上』って言ったな。じゃあ壱級よりも上があるってことなのか?
「……あ、そこ右から行った方がいいぞ」
「ん? おー。お兄さん知ってるんだ」
チラッと手元のゲーム画面が見え、ついつい口を出してしまう。ちょっと前にやっていたスマホゲームだったからついついやってしまった。
でもなんかなぁ……。前もこんなようなかなとがあった気がする。
「……お兄さん、楽しい記憶も封印しちゃったんだ……」
「え? ゲームの楽しみ方? 口出ししてごめん」
「ううん、ちがう。わたし、お兄さんの家行って一緒にゲームしたことあるんだよ」
「マジで!? わ、悪い……全然思い出せないっ、てかちょっと……気分悪いかも」
「ん、無理して思い出さないでいい」
一緒にゲーム……確か親が家にいない時、妹が連れてきたんだよな。あー、頭が痛くなってくる気がする。……やめておこう。
「それで? 花子ちゃんは一体、なぜ僕たちをここに連れてきたの? 何か理由があったんだろう」
クロエが花子さんにそう言った。
「ん、この高校に今いる除霊師でなんとかしてほしいことある。特にお兄さんの力が必須」
「何か、起きるのか?」
「最近、不自然な動きをする生徒がいた。すり替わったみたいな。その人は今日、オカルト研究部で〝こっくりさん〟をやるらしい」
「こっくりさんねぇ……。言わずと知れた有名な降霊術。それを零太郎に止めてもらおうと? でもそれくらいなら自分でできるんじゃあなあのかい?」
花子さんの話を聞いた後、琴音が眉をひそめながらそう言い出した。
怪異度・壱級程度ならばそれくらいのことは確かにできそうな気がするけどな。
「むり。七不思議は自分の大切な
「止めたいならその場所まで連れてこないといけないってことか」
「そゆこと。でも、抜け道がある。自分の魂をかけてまで契約した相手……その人は己のテリトリーという判定になる」
「……成る程、そういうことか」
ハッと、彼女が何を考えているのか気づいた。
「お兄さん――わたしと契約してほしい。大事な親友の兄妹をどっちもなんて、失いたくない」
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