第35話 [零纏]

 除霊師の救助班とやらが残っていた民間人を救助して脱出。話によるとここいら一帯には人がいないらしい。

 だから、存分に暴れることができる!


「もう一回飛ぶぞ。あの竜は確かに人間の気配がまだするが……再生能力などが馬鹿げている。手加減しすぎたら死ぬから気をつけろ」

「わかってるよ。んじゃあ行くぞっ!」


 俺は飛び出た鉄骨などに飛び移りながら上に行き、美紅は銃弾を一発打ち込んで一直線に上昇する。

 ドラゴンが前脚を出してはたき落とそうとするが、美紅がそれを蹴って弾き返した。


「あいつ、とんでもない力だな……! 俺も続くか」


 一気にドラゴンの眼前まで飛び、口元に目を向けた。するとやはり口を閉じたので玉は投げず、刀で前脚の関節を斬りつける。

 やはり関節なので硬い鱗はなく、スパッと斬れて一瞬倒れそうになっていた。


『グヴヴ……グァアアアアアアア!!!』


 美紅の銃では鱗を貫くことができていないし、俺が斬り落とした翼も再生してきている。長期戦では勝率が下がるな。

 美紅と二人で牽制し合い、ドラゴンを斬りつけたり雷で瓦礫をぶつけたりしているが隙があまり生まれない。


「…………」

「ん? おい美紅!? 起きろ!!!」

「はっ!」


 動きが鈍くなり、その場で静止して虚ろな瞳をしている美紅の姿があったので、俺は大声を上げて意識を取り戻させる。

 襲いかかろうとした氷柱をかろうじて避け、俺の元に駆けつけた。


「大丈夫か美紅」

「あぁ……すまない。少し頭がぼーっとしてな。私は一応一般人よりは操られにくいらしいのだが、威力が更に増して遠距離でも意識が……」

「何か手をうたねぇとな……」


 凍りかけている服などを幻蒼焔で燃やして考えていると、俺はあることを思いついた。


「時間がないからすぐ決めてくれ美紅。――!」

「! ふっ、成る程。それは勿論――」

『グギャァアアアアア!!!!』


 瓦礫を巻き込みながら尻尾をこちらに横薙ぎしてくるが、ひょいっとジャンプをして軽々と避ける。

 だが、ドラゴンは口を大きく開け、吹雪を放出しようとしていた。


「零太郎、来い」

「了解だぜセカンドバディ。きっちりガードしてやるよ』

『ガァァアアアアアアーーッッ!!!!』


 一面が紫色に染まる一瞬、俺は霊体に戻って美紅の外套に潜り込んだ。

 美紅はもろに吹雪を受け、ドラゴンが口を閉じるまで冷気に当てられ続けた。


『グルァァア……』


 だが紫色の吹雪が弱まると同時に、内側から蒼色が強まっていっていた。


「ふむ、確かにこれで支障ないな!」


 外套は青い炎の柄が輝いていて、口元を隠すほどの蒼炎がマフラーのように巻きついて守っている。

 周囲のある紫氷は溶けており、寒さを一切感じさせていなかった。


『一応見えてるから俺もサポートは徹底するぜ』

「承知した。ここからは……私の独壇場であるぞ、竜よ。勝負は地に堕ちるまでに決める!!」


 懐から取り出したのは片手に持ってボタンを押せば遠距離から爆発できる起爆スイッチだった。

 それを親指で押した瞬間、遥か下から轟音が聞こえ、高層マンションがぐらついて瓦礫などが宙に浮き始める。


『グァ……ガァァアアアアア!!!』

「たとえ翼があったとて、この瓦礫の雨の中では飛べないだろう!」


 落下する瓦礫にあらかじめ打ち込んでいた雷を纏った銃弾を使いながらヒュンヒュンと飛び回る美紅。

 それだけでなく、ドラゴンに銃を撃ち込んで周りの瓦礫をぶつけて攻撃をしていた。


 ドラゴンも負けじと氷柱を飛ばしてくるが、それは俺が霊術を発動させ、マフラーのような部分から炎を放出して溶かす。


「零太郎、銃は作れるか? を」

『作れるが……あー、そういうことな! 了解した!』

「さて、私ももう一踏ん張りだな……」

『ギギ……ガァァア!!!』

「味わって喰らうがいい――〝豪雷ごうらい〟!!』


 大きく口を開けたドラゴンの口に、巨大な雷の球体をぶち込んでいた。

 俺は創造した青白い拳銃を彼女に渡した。


「確実性を上げる為、貴様が雷で痺れている間、歯に撃ち込ませてもらったぞ。さぁ……その口を開けろ!!!」

『グガ……!? グガガガァア……!!!』


 ドラゴンの歯からは雷がバチバチと走り、口がだんだんと開き始めていた。

 最初の巨大な雷の玉で油断と感覚を鈍らせた後、歯に銃弾を撃ち込んで反発させた……という感じだろうな。


「――王手だ」


 拳銃を両手で持ち、口の中心に銃口を向け、引き金を引く。そこならは透明の玉が飛び出し、ドラゴンの口に吸い込まれていった。


 ――ッドォォオオオンッ!!!


 ドラゴンは地面に墜落し、俺たちはスタッと着地をした。


「ふぅ。ナイス機転だったぜ美紅」

「やれやれ。零太郎こそ見事だった」


 俺たちは拳を合わせ、勝利を噛み締めた。

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