第31話 [迫る破滅]
「弁当を食べる予定があるから俺はもう行かなきゃいけないが……また話すか?」
「じゃあ放課後、また生徒会室にきてくれるかな。そこで詳しく話させてくれ。……人は、連れてこないで欲しいな。あとこのことは口外しないで欲しい」
「……ああ、任せろ」
そう言い残し、俺は生徒会室の外に出た。
ふぅ、と息を吐いて、凍て刺すような空気を吐き出して暖かい空気を取り入れた。
そして俺は、口を開けて喉を震わす。
「――で、盗み聞きするテメェは一体誰だ。人間じゃないだろ」
人差し指と親指を立て中のような形にし、指先から蒼炎を纏わせ、居座る者に向けた。
「『人間じゃない』……それはお互い様じゃないの? 逝き損ない幽霊」
「可愛い顔してなかなか辛辣なこと言うじゃねぇか。うっかり祓っちゃいそうだぜ」
この高校の制服にパーカーを羽織り、ヘッドフォンを首にかけてスマホを手に持つ少女。ロングの黒髪に赤い目で、気だるそうな感じる。
「この部屋にいる女、もうすぐ死ぬ……はずだった。お前なら救えるけど、救いたいの?」
「質問を質問で返すか……。ま、救いたいさ」
「理由は」
「救いたいと思ったから」
「そんな単純な理由で? そんなんでいいと思ってんの?」
「単純で何が悪い。偽善者で何が悪い。救いたくても動かないやつのほうがよっぽど悪だろうが」
ギロッと殺意を込めて睨むが、ピクリと動くだけであまり動じた様子はなかった。
「まぁいいや。クソみたいな返答がなくてよかった。ん」
「あ? なんだこれ」
渡されたのは二つの透明な玉だった。
ジェットババアやら盗撮悪霊から出た魂核と似ているような気がするが、どこか違う気がする。
「いざという時使ったらいい。今度はちゃんと救いなよ、零にぃ」
「は……!? おいお前!! どこでもその呼び方を――」
「精々頑張ってね、わたしの親友のお兄さんっ」
ゆらゆらと飛びそうに移動して、女子トイレに消えていった。
あいつ……俺たちの過去を知ってる。俺の妹の友達だったのか? でもあいつは人間じゃなかっただろう。じゃあ……妹は見えていた?
『零にぃ、わたしは側にいるからね――』
「あぁ……くそったれ。幻聴が聞こえてくる」
嫌でも離れない記憶だ。
俺はぐちゃぐちゃにされた心を押し込め、自分の教室に戻った。
「やぁ零太郎、ずいぶん長〜いおトイレだったねぇ」
「流石に私たちを待たせすぎだと思うぞ」
ニマニマと笑っている琴音と、腕を組んでガンを飛ばす
「いや、トイレに行ったんだがそのあと色々あってな」
「何かあったの?」
「悪い、他言無用になっちまったんだ」
「そっかぁ。ま、食べよ〜!」
「そうだなー」
弁当を持っていつもの屋上に向かおうとすると、霹靂が声を大きくして俺たちにこう言ってきた。
「ちょ、ちょっと待て二人。琴音は気にならないのか? 仮にもお前たちは相棒なのであろう?」
「相棒だから、かな。私は信頼してるからねぇ、零太郎のこと」
「俺も信頼されてるから、絶対に裏切るような真似はしないさ」
「そういうものなのか……」
あまり納得していなさそうな霹靂を連れ、俺たちは屋上で弁当を食べに行った。
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「あり? どないなっとるん? 昼あたりにクロエん力が暴走するはずやったのに」
神里高等学校を近くのビルの屋上から眺めるあの白衣姿のカウンセラー。
眉をひそめて爪を齧り、イライラしている様子だった。
「チッ……邪魔されたっちゅうことやな。ま、ええわ。なんせ――」
懐から何かを取り出し、それを太陽にかざした。
「魂核はラスト一つあるしな。西洋の古くから伝わる伝説の魔物。それん依り代になってもらうさかい。今宵は終焉のパーリーナイトやで〜」
クロエ・ウィンターズの暴走は、刻一刻と迫っていた。
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