第29話 [クラスメイトの一員として]

「ふわぁあぁ……あさかぁ〜」


 小さく開いた瞼からは金色の瞳が覗き、口を大きく開けて欠伸をする。朝日に照らされてきらめく銀髪を手ぐしていた。


「おーい、朝飯できてんぞー!」

「ふぁ〜い」


 俺は起きて来た琴音を椅子に座らせる。今さっきできた料理を机に運び、俺も椅子に座る。

 そして机の下で、


「にひひ、今日から男子高校生・零太郎の始動ですかっ!」

「ああ。でもまだ実体になれるのは色々と制限があるけどな。もっと亡骸とやらを集めなきゃいけないぜ」


 日曜日に先生からその亡骸の一部とやらを受け取り、見事に俺と融合して一時的に人間の姿になれるようになった。

 霊力が三分の二以下になったり、ある程度のダメージを受けると霊体に戻ってしまうらしい。


「んじゃ、久々の飯をいただくとするか」


 自分の作った料理を口に運ぶ。

 美味さが口の中に広がって、体に染み渡る感覚がした。


「確か食べ物とかを摂取したら霊力に変換されるんだっけ?」

「らしいな。ま、味覚が戻っただけでも最高だぜ。うんめ〜!」

「食事こそが正義なんだよねぇ!」


 まあでも、なぜか頭の右側から吹き出る蒼炎は変わらないままだった。まあ普通の人にはこの炎は見られないし、大丈夫だろ。


 時間が経ち、そろそろ投稿する時間となった。制服を先生からもらったので俺と琴音は制服に着替える。流石に別の部屋でな。


「んじゃ行きますか!」

「そうだな」


 ここが俺の、高校生活のスタート地点だ。



###



「いや〜よくきたナバタメくん! 君大変だったんだね……」

「はい、まあそうですね」


 学校に着いたらまず俺は職員室に向かい、担任の先生と話をしていた。

 色々な事情は星乃先生が誤魔化して伝えてくれたらしい。


「でもな、ナバタメくん。あんなにひどいことがあったとて、ぬたうなぎで人を殴ったらダメだぞ」

「??? え? んー……スミマセンッ☆」


 星乃先生は一体どうやってごまかしたんだ。どうしてぬたうなぎが出てきやがる。

 話を合わせるためにとりあえず謝っておいたが、星乃先生は後で問い詰めるとしよう。


 一通り話がついたら、俺も教室に向かった。ガラガラと扉を開けると、全視線が俺に集まった。

 俺……みんなに見られてるっ! 無視されるなんてことはもうないんだッ!!


「みんなおはよー! 俺、青天目零太郎! 今日からよろし――」


 俺が簡単な自己紹介と挨拶をしようとしたのだが、クラスメイトたちがそれを遮ってまで俺に質問を投げかけてきた。


「シシバさんの言ってたこと本当なのか!?」

「説明求むぞレータローとやら!」

「ってクソほどイケメンじゃない!」

「こ〜れ本当説濃厚や」


 一体なんのことを言っているんだろうか。

 とりあえず琴音が関わっていることは確かだな。


「えーっと、なんだ? 俺がなんだって?」

「にっひひ、今日から学校に来る零太郎は私の相棒パートナーって言ったんだぁ〜」

「あー、それ言ったのか」

「「「「「本当だった!!!」」」」」


 でも一緒に除霊活動をしているってことを言ってよかったのか? いや、ただ相棒と言っておくだけみたいな感じかな。

 そんなことを思ったりしていると、クラスメイトの一人からこんな質問をされた。


「じゃ、じゃあよォ……パートナーになる際になんか、そういう関係になろう的なこと言ったり言われたのか?」


 クラスがシーンとなり、唾をゴクリと飲み込む音さえ聞こえてきた。

 そんなに気になるのか?


「まあ、言われたな。『零太郎を幸せにしたげるっ』って言われたな」


 俺がそう言うや否や、男女はたちまち阿鼻叫喚しだした。


「んぐぁあああああ!!!」

「絶世の美少女はすでに陥落済み……」

「遅れてやってきたイケメンも既に」

「脳が! 脳が破壊され……いや待て、逆に推せる」

「確かに」


 と思ったら、急に冷静になり始めていた。

 今思ったが、俺のクラスメイトの情緒は大丈夫か?


「れ、零太郎! ばかっ!!」

「え?」


 琴音にいきなり罵倒をされた。目を向けると、顔を真っ赤にして目をぐるぐるさせている琴音の姿があった。


「は、恥ずかしいから人前で言わないでよっ!」

「あー、ごめんごめん。ついつい!」

「むぅ、反省してないねぇ! 君だって『お前を一生かけて守るよ』って言ったよねぇ!?」

「なッ!!?」


 その言葉を暴露された途端、俺の顔に熱が一気に集まる感覚がした。

 なぜ言うんだという気持ちがあったが、さっき俺も暴露してたなぁという気持ちがすぐにやってきた。


「痴話喧嘩」

「てぇてぇだ」

「俺たちは何を見せられているんだ」

「まあいいか、よろしくなァ!」


 クラスメイトは気さくでいい奴らっぽいから、馴染めそうだなと思った学校生活スタート編だった。

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