第27話 [オラオラオラオラ]

『琴音、今日は何するんだ? 暇だが』


 俺の作った朝食をガツガツと口にかき込む琴音にそう質問した。


「ん〜。今日は家でダラダラ! といきたいけど、食材やら御札おふだ作るための墨汁もきれたし、買い出しかなぁ」

『あれ自作だったのか……。すごいな』

「にひひ! まぁねぇ〜。逆にそれしかできないかったからねぇ……」

『なんかごめん』


 飯を食べ終えた後は少し家でダラダラし、早速出かけることにした。


「さ〜て、行きますか!」

『いざ行かん!』


 行き先は駅直結のショッピングモール。

 ただ買い物しに行くだけでなく、色々と見て回りたいとのことだ。


 休日のショッピングモールゆえに、人が多い。なので幽霊が見えるものもいるだろうということで、俺は琴音の中に隠れて移動している。

 いざという時には俺が幽○紋ス○ンドのように出るつもりだ。


「混んでるなぁ……」

『だな。人がゴミのようだぜ』


 電車内はおしくらまんじゅう状態とは言わないが、そこそこ混んでいた。

 目的地のショッピングモールも混んでいて、人の間を縫うように通らなければいけないような状況だった。


「まずはクレープだよねぇ!!」

『早速道草食ってんじゃねぇか』


 ショッピングモール内は混んでいるので、琴音がまあまあな声量で独り言をつ言っていても気に止める人などごく少数だ。


「ノンノン。これは元々する予定だったから違いんだよねぇ〜。早速レッツゴーだよ!」

『はいはい。ん? 何か床に……』


 床に何か、一枚の紙のようなものが落ちていた。


「零太郎〜? どうかしたの?」

『ああ、いや。なんでもない。行くか』


 琴音から出てそれを拾おうとしたのだが、見える人に見られてしまったら何か言われそうなので、ここはやめておいた。

 何か……嫌な気配がするな。


 軽い足取りでクレープ屋まで向かい、一人で三つの種類のクレープを頼んでいた。

 俺が作った朝ごはんを食べてからまだそんなに経っていないというのにこんなに食べるのか。流石に少し引いている。


「というかさぁ、零太郎は料理を食べることできないの?」

『どうやらできないみたいだ。一回試そうとしたが、体をすり抜けて終わった』

「うわぁ……美味しい料理を食べれないなんて可哀想……。私だったら暴走してるねぇ」

『想像できるのがなんかなぁ……』


 飢餓状態になって暴走する琴音。初めて出会った時ならば想像できなかったが、あの暴飲暴食ガールを見てできるようになってしまった。

 クレープを美味しそうに頬張る琴音を見ていたが、なんとなく視線を床に落とした時だだった。


『……? またなんか落ちてる。琴音、床になんかあるぞ』

「え? どこ? 何もなくない?」

『え?』


 琴音は床を舐め回すように見渡すが、すぐそこにある紙に気づいていなかった。と、言うことは……。


、か?』

「零太郎、目貸して」

『任せろ』


 琴音の右目はすーっと変色し、蒼に染まる。


「わっ、本当だ。……うっわぁ……」


 ひょいと拾い上げてそれを確認する。その紙を見ると、琴音は心底軽蔑するような表情を浮かべていた。

 俺もそれを見たが、それは女性のふくらはぎの写真だった。


『うわぁ……霊になってまで盗撮か? 気色が悪い』

「だろうねぇ。でも撮影系の霊術を使う悪霊は少なくないんだよ。特に男性が多いね。全く、やれやれだよ」

『同じ男性として心底嫌だな。軽蔑しちゃうぜ』


 そんな霊、どうせ彼女の一人もできなかったDTの人間が未練タラタラで死んだんだろうな。

 ……ま、俺も彼女いたことないけど。


『これから捜索するのか?』

「色々と回りながら捜索するとしよう。放っておくにもいけないからね。女子の敵を祓うのだ〜っ!」

『おーっ』


 クレープを食べ終えたらその場を後にし、色々と用事を済ませるためにショッピングモール内を回る。

 ショッピングモール内には写真があちらこちらに落ちていて、どれも盗撮された写真だった。


 俺たちは見つけ出すことはできなかった……が、あっちから来てくれたみたいだ。


『琴音、後ろから来てるぞ』

「おっけー。人気ひとけない場所に移そっか」


 小走りをして、人がいない場所まで移動をした。後ろを振り向くとそこには、黒い靄を纏っている、足のない霊の姿があった。


「さて……。君が、盗撮犯か」

『オ前見エテンノカヨ……』

「最低最悪な能力を使用する悪霊だねぇ。撮影系の霊術使い」

『ギャハハ! ソウダ! コノ能力デオレハ最高ニエロイ写真ヲ撮ルンダ!! テメエが見エンナラ触レル! オマエハモウオレノモノダゼェエエ!!!』


 琴音に飛びかかる悪霊。


「やれやれだねぇ。君がやっていることは犯罪だけど見えないから罪に問われない。のならば……ッ!」


 ビシッと指を指し、琴音はこう叫んだ。


「〝レイタローサファイア〟!!」

『ナ、ナニィ!?!?』

『オラァアア!!!』


 俺が琴音から飛び出して、悪霊の顔面を蒼炎を纏った拳で殴り、顔が変形していた。

 だがそんなのは御構い無しに、俺は両手を使ってラッシュを食らわせた。


『オラララオラオラオラ!!!』

「裁くのは……私の相棒だッーー!!」

『グアアアアア!!!!』


 悪霊は砂みたいに小さい魂核を残し、灰になって消えていった。

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