第26話 [朝チュン!?]

 無事に合格ということで安心した。俺たちは続けて先生から説明を受けた。


「〝神々の残骸〟はね、実はまだ集まりきってないんだ。だから完全に生き返るわけじゃなくて、一時的にみんなに姿が見てる状態になるって感じだね」

『なるほど。でもめちゃくちゃありがたいです』

「君たち二人の目標は決まったね。琴音ちゃんは最強を目指してどんどん除霊活動を行なって経験を積む。零太郎くんはその除霊活動の際に、神々の残骸の一部を見つけ出す。

 君たちならできるよ。困ったらいつでも僕を頼ってね」

「『ありがとうございます!』」


 頼りになる先生だ。優しさが染み渡るぜ。

 一段落が済み、今日はもう解散することになった。


「さて、もうこんな時間だし生徒に帰らせるわけにはいかないね。みんな車に乗って。送ってくよ」


 先生にそう言われたので、お言葉に甘えて車に乗させてもらった。

 送ってもらう間に、俺はまた眠気がやってきてしまった。


「零太郎、眠いの?」

『れいりょくつかいすぎて、かいふくのため……かな……たぶん』

「体預けていいよ、零太郎」

『ん……』


 まともな思考ができていないので、なんとか意識が落ちないようにしながら俺は琴音に体重を預けた。


「あー! しーちゃん羨まし〜!!」

「おい静かにしろ猫野。零太郎は眠いって言ってんだろ」

「そうだけどさー……。ってかふっちー、ナバナバとなんか仲良しになってるね。名前で呼び合ってるし」

「まあな」


 なんか俺の話題が出ている気がするが、そっちに意識を向けることもままならない感じだ。

 そんな状態が続くこと数分、琴音の家に着いた。


「はい、到着。明日明後日は土日だからね、ゆっくりして疲れを取るんだよ。おやすみなさい」

「ありがとうございました。零太郎、行こっ」

『うぃす……。せんせぇあざした……』


 車から出て外の空気を感じる。

 相変わらず眠気は収まらず、フラフラとしている。


「ふわぁあ、私も眠いなぁ。ハンバーグは明日にしよ」

『んー』

「ほい、しっかり着いてくること」


 手を握られ、痛くない程度に引っ張られて家まで向かう。

 琴音にソファに座らされたら、俺はそのまま横になってさらに意識が微睡み始めた。ほぼ目が開いていない。


 幽霊になってからは全く眠気がなく、完徹続きでいつも屋根で夜景を眺めていたので、家の中で転がるのは珍しい感覚に思えた。


「零太郎、寝ちゃったの?」


 もはや言葉を返す余裕もないくらいだった。


「零太郎。君には本当に感謝してる。君に出会ってから世界に色がついたみたいに楽しいし、一緒にいて幸せだよ。――ありがとね」


 その言葉を聞いて安心したのだろうか。俺は眠りについた。



###



 ……と、そのまま幸せな気分で目覚めたかったのだが、なぜこんな状況になっているのだ!


「すー……すー……」


 琴音がスヤスヤと俺の横で眠っていた。

 なぜ自分のベッドで寝ずにここで寝ているというのだ。


(な、何もなかったはずだよな……? ずっと寝てたはず……!)


 髪色とか体も元どおりになっているが、この状況だけは全く理解ができなかった。


「ん、うーん……?」

『うわぁああ!?!?』


 琴音が唸って目をゆっくり開けたことに驚き、俺は天井に潜って顔だけ出した。


「ふわぁあ……。あれ? 天井から零太郎が生えてる……」

『お、おはよう琴音……。俺、家に帰ってからあまり記憶がないんだが……』

「んぁー、昨日はねぇ……。はっ!? ち、違うの! 疲れて私もそのまま寝ちゃっただけで、故意に一緒にお休みしたわけじゃないから!!!」

『お、おう。そういうことか』


 とりあえず何もなかったことがわかってよかったよかった。安堵の溜息を吐いて天井から降りた。


 ――グゥルルルルル……


『ん? なんか鳴いた?』


 突然部屋にに響く謎のうめき声。俺はその声の主を探したが、すぐ近くにいたみたいだった。


「私のお腹です……」


 琴音が顔を赤くし、片頬をぷくっと膨らませていた。


『ぷっ、ははっ、そういや昨日晩飯食ってなかったな』

「もぉ〜! 笑うなー!!」

『はいはい、怒りなさんな。朝飯作るから待ってろ』

「ぃやった〜〜!!」

『飯のことになれば機嫌す〜ぐ直る』


 俺はキッチンに向かい、料理を振舞ってやるのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る