第25話 [テンションぶち上がりねこーのと結果]

 先に第2物理室に帰ったいた零太郎おれは先程まで教室内をウロウロして不安で埋め尽くされていた。

 なんせ、琴音たちが戦っている相手は超強い悪霊だったと先生から聞いたからだ。


 だが、無事に美紅が合流して悪霊は去ったと聞いたので、安堵してソファに座り込んだ。


『よかった〜。どーなるかとおもったぜ』

「ああ、やっぱりあの鬼神は強いんだな」

『あいつはつよいよ。たいかいでもてかげんされてたしなぁ』


 隣に座っている慧一にそう返した。

 まだ霊力は回復していないので、ショタモードのままで滑舌があまり回らない。


『そっちのふたえばこさんはつよいのか?』

「ああ、強いぞ。……って、そうだ……あいつが来る前に! おい零太郎、お前だけ先に帰ってろ!」

『はぁ? なんで。ことねもここにくるだろ? まつよ』


 二重箱さんのことを聞いた途端、何かを思い出したかのようにおれを家に返そうとしている。

 琴音と一緒に結果を聞きたいし、一人で帰るわけにもいかないだろう。


「帰れ!」

『やだ!』

「二人とも危ないよー」


 教室内で追いかけっこが始まり、先生は微笑ましい光景でもみているかのようにニッコリと笑みを浮かべていた。

 そんなことをしている最中、ガチャっと扉の開く音がした。


『お! かえってきたか! おかえりことね!!』

「ただいま零太ろ――ってなにその姿!!?」

「これはまた、面白可笑しい姿になったものだな零太郎」


 琴音と霹靂かみときは俺のこの姿に反応していたが、二重箱さんはなぜかプルプルと震え出していた。


「か……かっ……可愛いィイイイイイッッ!!!!」

「「『!?』」」

「あー、やれやれ……」


 俺と琴音と霹靂は突然大声を出した二重箱さんに驚き、慧一はため息を吐いて手を頭においていた。

 そして、二重箱さんは荒い呼吸をしながらジリジリと俺に近づいてきていた。


「ね、ねぇぼく、どこから来たのかな? こんな夜中に危ないよ〜。よかったら今日お姉ちゃんの家に泊まってく? ねぇどうかな? 何もしないからさ! 本当本当……ジュルリ……」

『ひ、ひぃ!!」


 目が狂ってやがるし、よだれもちょっと出てる。

 正直言って、さっき戦ったジェットババアより断然こっちの方が怖い。


「うへ、うへへへ、どうかなぁ……?」

『あばばばばば……』


 だんだん距離が縮められ、もうダメかと思ったが、救世主が現れた。


「零太郎は私の相棒! 二重箱ちゃんには渡さないから……」

『ことねぇ!』


 琴音が俺を抱き寄せ、キッと睨んだ。

 安心感があった。


「むむむぅ……。ナバナバだったんだ。ま、しーちゃんから取るほどあたしもやなやつじゃないからね〜。でも残念……」


 なんとか危機を免れたようだ。


「わかると思うが、猫野はショタコンだ。こんなやつだが、どうか仲良くしてやってくれ」

「何その言い方ー! あたしが好きなものはなんだっていいでしょー!?」


 ということは、俺が霊力が尽きて小さくなる度に熱い視線が送られるということか。……ちょっと嫌だな。

 ジトーッという視線を二重箱さんに送ってみた。


「ぴゃーーっ!! 可愛い視線送らないでぇええ!!!」

『えぇ……』


 この件についてはさておき、先生から結果を伝えてもらうことにした。


「えー、ではまず、みんなお疲れ様。琴音ちゃんと猫野ちゃんはごめんね……。僕がミスをしてしまったから。

 ……さて、結果についたはまぁ……もうわかってるよね」

「っ……」

『……?』


 先生の言葉で、琴音の表情は少し暗くなり、唇を噛んでいた。

 俺は大体予想ができた。なので、行動に移す。


『せんせい。おれたちはぜったいつかえます。だから……その、おねがいします……』

「零太郎……」


 腰を90度直角に曲げ、先生に向けて頭を向けた。


「先生、私からもお願いします。琴音は充分強いうえ、これから更に伸びるはずです」

「しーちゃんめっちゃ強いんだから! お願い先生!」

「俺は居合わせてないし出会って間もないからよくわかんないが……将来有望そうな除霊師を失うのは惜しい。俺からも、おねがいします」

「みんな……。っ、お願いします!!」


 みんなして顔を下げて先生にお願いをした。


「ちょ、ちょっと待ってよみんな。琴音ちゃんも零太郎くんも、どっちも合格だよ……?」

「「「「『え?』」」」」

「僕が血も涙もない先生だと思ってたのかい?」


 えーっと……。俺の勘違いだったみたいだな。


『あー……。かんちがいしてた。みんなごめん』

「まあなんにせよ、二人とも合格御目出度う」

「ナバナバくん全然いいよ〜♪ ドジショタいいね〜……」

「やれやれ、頭の下げ損だ。ま、よかったな」


 許してくれたみたいでよかったよかった。


「零太郎、本当にありがと。やっぱ君は最高の相棒だよ……」


 ギュッと抱きしめられて顔に熱が集まる感覚がしたが、邪な感情は抱かず、俺も琴音を抱きしめ返した。

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