第21話 [Head hunting gentleman]
「んー、持ち物確認ヨシ!」
「しーちゃん準備おけまる〜?」
「おけまるぅ〜」
学校を出て、夜道を二人で歩きながら話をする。
「今日祓うのはなんなんだい?」
「えーっと〜。確か……クリティカル☆シェイシェイみたいな語呂だった気がする!」
「えぇ……? なぁんか……嫌だなぁ」
そんなパリピ(?)みたいな悪霊と戦わなきゃいけないのか。私は悪ノリする陽キャと調子乗り陽キャが一番苦手だ。
薄暗い夜道を数分歩き、立ち入り禁止と規制線が張られた林の入り口まで来た。
「ここにそのパリピがいるの?」
「らしいよ〜! レッツゴゥッ!」
「あ、ちょっと待って!」
「ん〜? どしたん?」
「戦う前に、お互いできることを知っておこうよ。何ができるのか知っておかないとどうやって手助けしたらいいかもわからないしさぁ」
「確かに!! しーちゃん天才か!?」
不安だ。
どうやら私たちが戦うのは怪異度・
「えーっと、まず私は
「次あたし! 全力は使っちゃいけないって言われてるから……あたしができるのは霊術とか霊氣術を一時的に消すことができる能力です☆」
「一時的に消す……すごい能力だねぇ」
「えっへへ〜ん♪ あとこれ見て見て! たら〜ん☆」
二重箱ちゃんが腰につけてある何かを見せつけてきた。
「ヨーヨーでーす!」
「……ふざけてる?」
「ふざけてないよ! これ霊具なのー!!」
「あ、そういうことねぇ」
ヨーヨーは一旦置いておいて、彼女の霊氣術は一時的に消すだから、零太郎の霊術とはまた違ってくるのかな。
これから戦う悪霊の情報がわかれば対策もできるだろうけど、それはさせてくれないらしい。
「実力試し、ねぇ……」
「しーちゃん行こーよー」
「はいはい」
近くにある監視カメラに除霊師手帳を見せ、合法的に侵入する。林の中は街灯もないため薄暗い……はずだった。
不気味に、薄紫色に林の中が照らされているのだ。
「二重箱ちゃん、いるよ」
木がそこだけなく、月明かりに照らされる場所に白色のテーブルと椅子が置かれ、そこで優雅に何かを飲む者がいた。
『おや、またお話し相手が来てくださったのでしょうか』
タキシード服に黒いシルクハットと手袋。そしてペストマスクをつけている不気味な悪霊だった。
すぐ横には、威圧感を放つ大鎌が佇んでいる。おそらくこいつの武器だろう。
(怪異度・参級程度ならカタコトで喋るくらいかと思ってたけど、ちゃんと意思疎通ができてる……。本当に参級なのかなぁ?)
『ワタクシとて、お嬢様方を取って食べたりするほど野蛮ではないので、立ち去った方がよろしいかと……』
「私たちは食べなくても、他の人間は食べてるんだよねぇ? それはちょーっと許せないかな」
「そーだそーだ!」
『……それはあなた方も同じでは? 生き延びるために家畜を育て、殺し、食し……。ワタクシも同じなのですよ』
「…………」
手に持っていたワイングラスを
『……ワタクシを祓いますか? やるのならば、あなた方も狩らせていただきますよ』
すくっと立ち上がったので、私は御札を、二重箱ちゃんは先ほど言っていた霊具のヨーヨーを構える。
だがペストマスクは私たちに襲いかかることなく、姿勢を正して一礼。
『申し遅れました。ワタクシは〝Head hunting gentleman〟と呼ばれる者でございます。生前の名は置いてきました』
「ヘッドハンティング……」
『ニホンでは、〝首狩り紳士〟と訳すらしいですね』
首狩り紳士……くびぃかり、しぇんし……クリティカルシェイシェイ……。
「ねぇ二重箱ちゃん、クリティカル☆シェイシェイってなぁに? あの悪霊は首狩り紳士って言ってたけど」
「…………てへぺろっ☆」
『ふふふ、Critical謝謝。珍妙な名をつけられてしまいましたね』
悪霊に笑われていいのか二重箱ちゃん。
それにしても、なんか掴みにくい悪霊だ。私は最近霊が見えるようになったけれど、こんなに掴みどころがないのかな?
なんと言うか、紳士的で、自分の欲があまり垣間見得ないやつだ。
『さて、と。あなた方は自己紹介しなくても構いません。では、参りますよ』
大鎌を手に取り、戦いの火蓋が切って落とされる。
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