第17話 [幻蒼焔とジェット]
生徒たちもすっかりいなくなり、教室の明かりも消えた不気味な校舎内。そんな中、第2物理室だけ明かりがついていた。
「時に零太郎よ、自分の霊術に名をつけたか?」
『え、名付け? してないが……』
「名と術を結びつけることによって、その術の威力が上がったり新たな能力が目覚めやすくなるらしいからね〜」
『ほぇ〜。じゃあ霹靂のその紅のイナズマの名前は?』
「私のは〝
『カッコよ〜』
俺もイカした名前をつけたいもんだ。
『琴音、どんなのがいいと思う?』
「んー……。なんとなくだけど三文字がいい気がするねぇ〜」
俺の霊術は炎による焼滅と創造。
千変万化……想像した物を現実にできる……蒼色……。
『幻想を作ったり、燃やす、蒼い焔――〝
「お〜! いーじゃんいーじゃん! なばなばネーミングセンスある〜☆」
二重箱にお褒めに預かったところで、もうお時間らしい。ガチャリと扉を開けると、外は暗闇に包まれていた。
「男子ペアと女子ペア、それぞれ別れて行動だ。それじゃ、気をつけてね」
先生からそう言われた後、真っ暗な校舎の中四人で立っていた。
『琴音。以来終わったら晩飯だ。俺ちゃん特製ハンバーグだぜ』
「はい、今私のやる気が天上をぶち抜きました〜」
『気張ってこうぜ』
「あったりまえよ」
右目を交換し、琴音とハイタッチしたあと、俺たちは背中を向けてそれぞれ歩き始めた。
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『……んで? 伏魔よ、俺たちはどこに行くんだ』
フヨフヨ浮きながら伏魔についていくこと数分、もう学校から出て、駐車場に到着していた。
「……とりあえず、オレのバイクのナンバープレートガッチリ掴んでおけ」
『へ〜! お前バイクの免許持ってんだな! いいぜ、掴んで何するんだ?』
言われた通り、ナンバープレートを両手でがっちり掴む。伏魔はヘルメットをつけ、バイクにまたがってハンドルを握っている。
「このまま向かう」
『は、え、ちょ待っ、イヤァアアアアアアアアアアアアアア――ッッ!!!』
驚くべきことに、伏魔はそのまま発進しやがったのだ!
『おいッ……テメェ! ざっけんじゃねぇ!! なんでこんな不遇扱いされなきゃならねぇんだよ!!!』
「オレの背中は何万と悪霊が取り憑いてるから危ない。だから距離を取ってもらってるまでだ」
『優し〜、とはならねぇ! 流石にもっとなんかあっただろうが!!』
「それで、今回依頼されたものだが」
『無視ってマ!?』
タイヤが磨耗する音を超至近距離で聴きながらも、伏魔の話に耳を傾ける。
「オレたちが依頼されたのは怪異度・準
『ジェット? ターボババアなら聞いたことあるが、ジェットババアはないぞ』
「ターボババアは怪異度・
『食うんだ……。こわー』
驚かせてはい終わり、みたいな感じだと思ってたが、ちゃんと怪異だった。
今現在、バイクに引き摺られている俺も慣れてきたことも怪異的だろう。
「ジェットババアは文字通り、ジェット機のような速さで移動する。だからオレたちは無理だ」
『やる前から諦めんのか? とんだ腰抜け野郎――ウバサッ!!!』
「赤信号だ」
急ブレーキをして、オレの顔面はタイヤにめり込む。霊体だったため顔面は削れていないが、恐怖と怒りはあった。
『お前ガチで……お前……食う……』
「オレは食べても美味くない」
『悪霊になりそうなんだがぁあああ!』
「掴んどけ、置いてくぞ」
『零虐はもぉおやめましょうよぉおお!!』
エンジンをふかし、再び発進する。
「諦める、じゃなくてオレたちの実力じゃ勝てないんだよ」
『やってみなきゃわかんないだろうが』
「……はぁ、やれやれだ。だったら現実見せてやる」
さっきから身勝手なやつだ。俺も伏魔から見たら言うこと聞かない嫌なやつなのだろうか?
まあなんにせよ、俺のバディは
「そろそろ現れるぞ」
高速道路を走ること数分、後ろからドドドドドッという音が聞こえてきた。
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