第16話 [二人の除霊師]
――キーンコーンカーンコーン
「授業全部終わった〜〜!!」
『うとうとしていたのを俺は見逃していない』
六時間目の授業も終わり、琴音はぐいーっと両手を天井に掲げて伸びをしている。
授業は簡単で欠伸が出てしまったが、琴音は別の意味で欠伸が出ていたようだった。
「二人とも、向かうとしよう」
「そだね〜」
『うぃー』
除霊を行うのは生徒たちが全員下校した後だが、もう二人との顔合わせということで早めに集まるらしい。
そして再び部屋の前まで来たのだが、中から嫌な気配がプンプンする。
『すんげー入りたくなくなる気配がするんだが……』
「案ずるな零太郎。中にいる者の気配こそ特殊だが、きちんと受け答えできるからな」
『霹靂のお墨付き、か。だったらいいけど……』
ガラガラと音を立てながら扉を開けるとそこに二つの影があった。
「……あんたらが例の憑霊師か」
「こんちゃ〜☆ よろしくぅ!」
一人は黒髪黒目で片目を隠しているちょっと暗そうな男。だがそいつの後ろに一瞬、何万という悪霊の姿が見えた気がした。こいつが気配の正体だろう。
もう一人は灰色の髪に翡翠色の瞳のギャルっぽい女の子だ。サイドポニーテールの髪型で、両腕に黒色のゴム手袋をはめていた。
「さて、揃ったみたいだね。じゃあ早速だけど自己紹介してもらおうかな」
ニコニコとした笑みを浮かべながら、俺たちに語りかけて来た星乃先生。
「神々廻琴音でーす。最強の除霊師目指してやってます!」
『青天目零太郎〜。つい最近死んだ男子高校霊だぜ!』
俺たちは超軽い自己紹介をした。
流石にもっと何か言っといといた方がいいかとも思ったが、長々と言うのもそれはそれでどうなのかと思ったのでまあいいか。
「
この男、俺たちよりふざけた自己紹介だぜ。
「あたしは
『ナバナバって俺?』
「しーちゃんって私?」
「ンもちのろん!」
ウィンクにピースをしながら自己紹介をして来た女子。俺含め、周りには変わった苗字の人しかいないみたいだな。
『……えーっと、伏魔? についてよく聞きたいんだが。それ、大丈夫なのか? めちゃくちゃ取り憑かれてるみたいなんだけど……』
「大丈夫じゃない。でも大丈夫だ」
『なんだコイツゥー』
「それよりあんた、どこかで会ったことないか?」
伏魔は真剣な眼差しで俺を見つめている。
そうは言われても、俺に身に覚えがないからなぁ。
『悪ぃ、覚えてねぇな』
「……そうか。じゃあ人違いか……」
伏魔のような異質な雰囲気を纏ったやつなんか早々に忘れないと思うな。記憶抹消装置的なものにでもかけられない限り。
「ふっち〜? もう一人も挨拶させとこーよ!」
「うわッ……! は、離せ猫野……!!」
二重箱さんが伏魔の背後に回り、両目を隠していた。
『おっ、てぇてぇ』
「助かる〜」
俺たち二人はニコニコしながら眺めている。だが、大体5秒経ったくらいで手を離すと、不思議な現象が起きた。
「わはははははは!! オメー幽霊!? 食っていいのか!?」
「『ん!?』」
先程までクール系なキャラだったはずの伏魔が、急にアホっぽい面になり、喋り方すら変わっていたのだ。
「彼は変わった体質をしていてね、5秒間目を瞑ると人格が交代するんだ」
先生からそう説明を聞かされた。
「じゃあお湯をかけたら性別も変わる……!?」
『俺も思ったが、多分それはないんじゃないか、琴音。まあよろしくな!』
すっ、と人格が交代した伏魔に手を差し伸べた。すると、
――バクッ
『ギャアアアアアア!! 何すんだテメェエエ!!!』
「わははははは!! ウメェウメェ!!!」
『無自覚悪なカニバリズマー!』
いきなり手を食われた。
「こら〜! なばなばは仲間になるんだから食べちゃダメな霊なんだよ〜?」
「えー、食っちゃいけねーのかよー。まあいっか。オレ
『怖いぃ……』
こんなやつと一緒に依頼をこなせられるだろうか……。
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