第14話 [頂点に立つ男]
「いや〜、朝から疲れたねぇ……」
『まあでも、階級一つ上がったんだし良かったじゃん』
大会も無事終了し、結果発表がされた。堂々の一位をとった俺たちは、賞品と階級がワンランク上がった。
傷ついた体は全部元どおりになったので、今現在は学校に向かっている。
「そうだけどさぁ、もっとこう……優雅な朝がいいよね。コーヒーをすすって朝日を眺めるとか?」
『気持ちはすごいわかるが、朝から白米4杯食った奴が何言ってやがる』
「むぅ……! 学校では絶対言うんじゃないよ!?」
『言っても幽霊の存在わかるやつしか聞こえないし大丈夫だろ』
あの
そんなことを思いながら学校に行ったのだが……。
「昨日は急用で学校に来れなかった霹靂美紅だ。以後よろしく頼む」
俺のクラスの黒板の前で自己紹介をする霹靂。まさか同じ高校で同じクラスだったとは思いもしなかった。
『……ってか、アイデンティティの一つであるツノはどこにいったんだ?』
――彼女も私の付けてる髪みたいに道具を使って隠してるんだ。
サラサラとノートの隅に文字を書いて筆談する琴音。
『えー……。ぶっちゃけ、ツノあった方が良くね?』
――ほんとそう。しかも見てよあのポニーテール。うなじがエッチだねぇ……。
『うなじ
親指を立ててサムズアップする俺たち。
邪な視線を送り続けているせいか、霹靂にギロッと睨まれた。
知らぬふりをしつつ、そのまま朝のHR《ホームルーム》が終わり、琴音や霹靂の周りに人だかりができる。
あのチャラついた陽キャ男とは打って変わり、ちゃんと受け答えできている。過去に何かあったのだろうか。
そんなことを考えていた時、一人のクラスメイトと一瞬だけ目があったような気がした。
「あれ? 気のせいかな……。なんか琴音さんの後ろに変な青い靄みたいなのが見えた気が……」
「えっ!? き、気のせいじゃないかな〜」
『ゔおおおん! 俺はここにいるぞォオオオ!!』
俺の声は虚しく、そのクラスメイトに届くことはなかった。少し霊感がある人、ということだろうか。
クラスの集合写真に俺が入ったら、心霊写真になっちまうなぁ。
「はい〜、みんな座ってね。授業始めるよ」
「……あれが、か」
『ん? どうした?』
琴音は、教室に入ってきた先生を見るや否や、少し苦笑いを浮かべていた。
その先生は焦げ茶色の髪に、丸メガネの向こうに琴音と同じ琥珀色の目。右耳に星のイヤリングをつけている男の先生だった。
「えー、僕は数学担当の
おっとりとしている爽やかイケメンだ。クラスメイトの女子からはほんのり黄色い悲鳴が聞こえてくる。
「今日初授業だしね、みんな僕に質問があったらしていいよ。無かったらみんなで簡単なゲームでもしよっか」
「せんせー! せんせーは彼女いるんですかー?」
「んー、彼女はもういないね。ほら」
そう言って左手の薬指の付け根に光る物を見せつけてくる。
自慢か? 自慢だな。ヘイトが上がったぜ。
「特技とかあるんすか〜?」
「特技ね、特技かわからないけど、僕は普通の人に見えないものとか見える……ね」
『なッ!?』
目線を俺に向け、ニコッと微笑む先生の姿で、俺は寝耳に水の思いだった。
『な、なあ琴音! あの先生俺を見たぞ!? あの先生も幽霊見えるらしいぜ!』
「ああ、そりゃそうだろうねぇ。なんせ彼、〝世界最強の除霊師〟として有名だから。私が所属している組織のトップでもあるんだ」
『えぇ!? あ、あれが……。ってか先生してていいのか!?』
「副業……というわけではないだよね。ま、いずれ分かるさ」
あれが、あの男が、トップに立つ男。琴音が夢見る〝最強〟の称号を得ている人物か。
一体どんな力を持っているのだろうか……。
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