第12話 [蒼炎vs紅雷-丙]
場所は普通のビル内に比べれば少し天井が低いエントランスホール。少々狭いが、これがいいのだ。
「さて……そろそろ来る頃かな」
琴音に乗り移っている状態で待機すること数分、どうやらノコノコと自ら罠にかかってきてくれたようだ。
「なぜこの場所がわかったか、是非とも教えてもらいたいんだが?」
「ふっ、それは企業秘密だ。貴様も生前何をしていたのか聞きたいものだな」
「こっちも秘密だな。誰にも話したくないんだよ、悪いな」
「期待はしていないから問題ない」
スチャッと両手に拳銃を持ち、雷を纏う。刀を炎で創造した後、親指と人差し指を立て、銃のような形にしてカミトキに向ける。
「負けるつもりはない。私が勝たせてもらい、琴音には除霊師をやめてもらう」
「大した自身だなぁ! その高らかな自身をマリアナ海溝まで沈み落とさせたいぜ。ま、受け取ってくれよな、俺らの下剋上をな」
「っ!!」
俺の人差し指が蒼く煌き、蒼炎の弾が勢いよく飛び出る。それを軽やかに避けると同時に足で蹴り飛ばす。
だが俺はもう次の一手を打っている。
「成る程。狭い部屋で炎の海とすれば、確かに霊氣術などをすぐに無力化できる。……だが、それは万全の場合、であろう?」
「まあ……そうだな。だかお前を倒すには十分だろ」
「それは誠か? 狭い室内で有利なのは貴様だけではないぞ」
懐から取り出したのは、手榴弾。それに雷を流して宙に投げると、爆発して小さいBB弾のようなものが散らばり、壁に埋まる。
時々バチッと雷がそこから走る。
「私の雷が消えていないということは、もはや霊氣術を無効化する程の力が無い。若しくは優先されないということか」
「…………」
よ〜くわかってやがる。相当戦闘経験が豊富みたいだな。
「そして……さっきから妙に焦げ臭いぞ。身体の限界がきているのではないのか?」
「どうだかね。だが、判断を間違えれば身を滅ぼすだろうな。お互いに」
「ならば死ぬ前にさっさと終わらせてやろう」
銃口から弾丸が四発放たれるが、それはまるで赤いトンボのようにヒュンヒュンと部屋を飛び回る。
「壁やらに埋め込まれた球を遠距離から発動させて引き寄せてるってわけか!? 緻密操作Aかよ!」
斬り、飛び、捻り、色々なものを駆使してなんとか避けようとするが、数発被弾してしまう。なるべく姿勢を低くして避けなければならないから、避けるのが難しい。
雷を全て無効化したいところなのだが、これ以上出力を上げると動けなくなる。
「いってぇ……!」
なんとかさばききれた。が、そう頭で考えて後悔した。
なぜあいつは、俺が攻撃をさばいている間にトドメを刺そうとしなかったのか。それは準備。
「今、溜まった」
前を向くと、しまってあった狙撃銃を手に持っており、銃口をこちらに向けていた。内から漏れ出る程の雷。
放たれたら溜まったものじゃないが、遅い。
「終わりだ。丸焦げになるがいい。〝
俺を丸々包み込むほど膨大な雷の球。
なるべくキープしておきたかったが……背に腹は変えられねぇ!
ドンッ、と音を立てて足を地面につけ、大地と一体化するが如く不動の構えになる。刀を天に向け、振り下ろす。
「
そう叫んで袈裟斬りをすると、雷の球は真っ二つに割れ、炎で消滅した。
「あれを叩き斬るとは……! だが、貴様の体はもう限界のようだな」
「〜〜ッ!!!」
声にならない叫び声が溢れ出し、今度は地面に膝をつける。足がガクガクしてるし、体が燃え尽きそうなくらいに熱い。
炎で何かを作り出すにしても、朦朧とする意識の中ではまともなものは作れないだろう。
万事休す……と、思っている阿呆は何処にいるんだろうか?
「そういう、お前こそ……そろそろ効いてしたんじゃあねぇのか〜……?」
「? 何を――」
風に揺れる草のように、ふらっとしてその場に俺と同じように座り込む。
「っ……! き、さま……何をしたんだ……!」
「はっ、教えねぇよ……。お互いフィールドは同じみたいだし、本当に終わりにしようぜ」
刀を地面に刺して立ち上がり、背後で燃え盛る蒼炎の中に入り姿を消す。
(なんなんだ……っ! 急に私の視界がぐらついて前がまともに見れない。頭も痛い……)
隙をついて、俺はカミトキに飛びかかる。
「だが……甘い!」
頭を撃ち抜かれる。が、問題ない。
「また幻影!? くっ、しのぎを削る戦いだな……」
(今姿を消されたら厄介だが……私には探知能力があるから大丈夫だ)
目を閉じて、集中する。何体もの分身に体を斬られるが、全て傷になっていない。もはや斬る威力すらない。
分身を見破り、そして
「そこだっ!!」
金属音が響き渡る。
カミトキは刀を足で受け止めて、銃口を銀色の髪に向ける。
「一手、私の方が上だったようだな」
「……にひひ」
「? 何を笑っている」
「いやいや、見事に騙された君の姿、実に面白いなと思ってねぇ。美紅ぅ〜?」
「なっ!? 貴様……琴音か!」
左目だけか琥珀色に戻っていたのだ。
カミトキが気づいたようだが、もう遅い。俺は背後に立ち、首に刀を近づけた。
『ちょっとでも撃とうとしてみろ。お前の首が血涙することになるぜ』
「……仮に私が琴音を撃ったとて、貴様がすぐに憑依すれば一命は取り留める、か。天晴だ」
銃をボトッと下に落とし両手を上に挙げる。
「私の負けだ」
激戦の末、なんとか俺たちで勝利を掴み取った。
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