第11話 [蒼炎vs紅雷-乙]
「ごめ……私はもう……まともな考えできなさそうだから……零太郎に任すよ……」
熱がだいぶ上がっているようだ。
琴音に乗り移ると、バットで頭を殴られたような頭痛と目眩、マグマに浸かっているような熱さがし、ぐらっと体がぐらつく。
「貴様らはもう限界のようだが、降参しないのか?」
「はっ! 降参ねぇ……。生憎俺たちは負けず嫌いなんだよ。だから今は……負けないための一手を打つ! 卑怯とは言うまいなッ!!」
「っ!」
蒼炎で壁を作り、その中から俺が飛び出して刀を振るう。その攻撃はあっさりと見切られ、渾身の蹴りを食らった。
……というのは無く、俺の姿は陽炎のように歪み、そして消え去った。そう、俺が作り出した幻だ。
「危ねー……。初めて自分の像を作り出したけど、うまくいったか」
咄嗟にグラップルガンを創造し、立体機動を行い、かなり離れた場所の建物に姿を隠した。
琴音から出ると、ぐらっと倒れそうになったので、体を支える。
『大丈夫……ではないよな。すぐ冷たいもの持ってくるからちょっと待ってろ!』
「ん……あぃがと……」
琴音を床にそっと寝かし、俺は冷たい水が入ったペットボトルを何本か用意した。
この大会中、結界内にある物資などは自由に使っていいらしいので、遠慮なく使わせてもらう。
『ほい、二本は脇に挟んで、一本飲む用だ。濡らしたタオルはデコに当てとけ』
「んぅ〜。至れ尽くせりだねぇ……」
『……ごめんな。俺が無理したから、お前に無理させちまった』
琴音の横に座り、そう言葉をこぼした。タオルを目元まで当てて、こちらは見ていない。
俺のせいだな……。
『多分、時期にこの場所もバレるだろうからすぐに移動したほうがいい。この地域はよく知ってるから、逃げ回るには丁度……』
その時、琴音が俺の腕をガシッと掴みゆっくりと起き上がってきた。
「美紅は、昔から私の何十歩先を行く子だった……。私の憧れだったんだ。けど今は、君がいる……から、負けたくない。諦めたくない……!」
俺の目をまっすぐと見つめ、力強い目つきで、こう言い放つ。
「君と、勝ちたいんだよ……!!」
俺は、ハッと目を覚ましたような感覚が走った。
『! ……そう、か。本当にごめん。さっき俺が言ったことは全部忘れてくれ。勝つ以外の選択肢はねぇな!』
けど、真正面からやりあっても勝てる見込みは少ないな。作戦を考えなければならない。
『取り敢えず相手を詳しく紐解いて行こう。あいつは鬼神の先祖返りらしく、足は俺の刀で切れないほど硬く、身体能力抜群。
使ってる技の雷は、どうやら二つの雷を引き寄せあうことができるみたいな感じだと思う』
「へぇ……。某人物の奇妙な冒険で出てきそうな能力だねぇ……」
『それは俺も思った』
少しは熱が下がったようで、焦点も合ってきている。
「……私が気を引いておいて、昨日幽霊を倒した君の剣術みたいなもので倒すのはどうだい?」
『いいや、それは無理だ。俺の剣術……もとい、
「ん〜……。じゃあもっかい私の体を使って刀技を発動させる?」
『疲労状態で足を酷使し続けたら使い物にならなくなる可能性もある。戦闘中に動けなくなったら一瞬でお陀仏だぜ?』
「うむむむぅ……。確かに」
『まあ後一回くらいなら使っても問題ないと思うが……』
俺は顎に手を当て、少し考える。
『琴音、あいつの使っている雷はどんなものなんだ? 俺と同じ霊術ってやつか?』
「いいや。彼女など、命あるものは霊術ではなく、
まあでも、霊が使うか人が使うかって問題だから、そんなに変わりはないよ」
『ふぅん……』
しかし、電撃ね。いい作戦を思いついたぜ。
『琴音、場所を移そう』
「最終決戦場ってわけかな?」
『ああ。俺の考察が当たれば、あいつは場所を特定する力もある。その他諸々、相手の力を全部利用して勝ってやる』
「いいねぇ……。私も下剋上は大好きだ」
俺たちで勝つんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます