第10話 [蒼炎vs紅雷-甲]

 本気を出されたら結構キツイかもしれないと思わせられるほど、アイツからは強い気配がする。


(あのイケてるヒーロー着地の時のや弾丸の紅い雷。確かに普通の雷と同じように痺れるんだが、なんか他にもあるんだろ)


 極力出力は抑えながらその正体を暴く。暴いたら即作戦を練って行動に移せばいい。

 ……だが、あのビルの屋上から飛び降りてけろっとしているし、身体能力も高そうだ。


「まずは、小手調べ!」


 足に力を込め、地を蹴り距離を詰めようとする。しかし、カミトキは俺と同時に引っ張られたように後方に飛ぶ。

 そして一丁の拳銃から三発ずつ、合計六発の弾丸が放たれるが、俺は全て蒼炎を纏った刀で切り捨てる。


「本当に馬鹿げた反応速度だ! ならばこちらもギアを上げさせてもらう!」


 全身からバチバチと紅い稲妻が漏れ出す状態になる。


「うわっ! 何だそれかっこいい!」


 アニメ好きの俺にはたまらない状態だった。これを見れてい琴音もおそらくテンションが上がっていることであろう。


「ふん、笑っていられるのも今のうちだっ!!」

「なッ!?」


 俺はこの一瞬の間に、カミトキがの頭がおかしくなったのかと思った。

 なぜならば、俺が向けている刀身に思い切り蹴りを炸裂させようとしているからだ。


 俺が作り出した刀は決してなまくらなんかではない。石でも切れるくらいの切れ味だ。

 それを生身で受けようものなら……。


(やべぇ……間に合わない!)


 スピードが格段に上がったカミトキの蹴りを受けることしかできない。たが予想外の音が響く。


 ――ガキィィン!!


「え……」


 スパッと切れると思ったら足は、俺の刀を受け止めるどころか、弾き返した。


「お前の足どうなってんだ!?」

「ふっ、私は先祖返りをしていて、〝鬼神きじん〟の特徴を持っているからな」


 鬼神だと? じゃあそのツノや、足がバカみたいに硬いこととかもそれなのか。じゃあそれって……


「その頭のツノ、コスプレじゃないのか!?」

「失敬な! これは本物のツノだぞ!!」

「おお、おお……!」

「き、貴様、なぜ嬉しそうなんだ。琴音の顔で不気味な笑みを浮かべるな!」


 軍服鬼っ娘的なものかと思っていたが、どうやら本物の鬼らしい。ではあの服も制服的なものなのだろうな。

 ちょっとテンションが上がる。


 近距離まで持ち込んで戦おうとしていたが、遠近どっちもいけるタイプ。それに雷による身体能力向上。そして未だに未知な雷の能力。

 こいつと戦う前に琴音は運動をしていて体温が下がりきっていないから、熱暴走オーバーヒートするのも近い。


(キツイな……)

「こないならば、私から行かせてもらうぞ!」

「やるしかないか!」


 互いに距離を詰め、鋼鉄な足と刀をぶつけて火花を散らす。弾丸を避けたり弾いたりするのが手一杯な近接戦。

 かすり傷は互いにつくが、憑霊状態の俺たちは自然と治癒力が格段に向上している。相手も普通にすぐ治っている。


 だが何か違和感を感じる。銃弾を避けるということ自体、普通の人間ならおかしいことなのだが、ような気がする。


「さて、試させてもらおう!!」


 カミトキがそう言い放つと、もう一段階ギアが上がったようで、一瞬にして懐に入られる。そしてわき腹に銃を突きつけられ、放たれる。


「ゔっ! いってェェ!!」


 貫通はしていないものの、全身がビリビリと痺れる。


「剥がれろ」

「え、うわぁあああ!!?』

「れ、零太郎!?」


 パチンッ、と指を鳴らされるや否や、俺は琴音の体から引きずり出され、後ろに引っ張られて壁に張り付く。

 この壁は確か、さっきカミトキが銃弾を何発か打ち込んでいた場所だ。


(これがあの雷の能力か……? 引き寄せる能力な感じか。仮にそれだとしたら、銃などに込めて放てば力が最大限引き出せれるな。何はともあれ大ピンチだ!)


 琴音は息も切れているし、俺が体から離れたことで傷の再生が瞬時にできずに血が流れていいる。

 体から蒸気が出るほど上がった体温を堪えながら、琴音はなんとかカミトキの猛撃に耐えている。


『ふん! んぐぐぐぐヴォオオオオオ!!!』


 かなり霊力を使ってしまったようだが、なんとか雷の拘束から脱出した。そして、一目散に琴音の元へ駆けつけて応戦する。


『大事な相棒なんだよ……。いじめないでくれよな……!』


 さて、この大ピンチな状況、打開するには取り敢えず一手打つしかないな。

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