第2話 転移
唐突に訪れた異常事態の中で唯一幸運なことがあったとするならば転移?してきた人の中に教師の姿があったこと。
それも男性教師と女性教師が1人ずつの2人。不幸中の幸いというやつかな...不幸には変わらないけれど。
10歳を超えて2年、自意識が確立され精神が成熟しつつある成長期とはいえ僕たちはまだまだ人生のひよっ子で心身ともに未成熟な子供であることに変わりはない。大人がいることによる安心感というものは案外馬鹿にならなかったりする。
実際、教師二人が統率を図ってくれたおかげもあってか今は全員その場に座って教師二人が代表してこの場の責任者?っぽい綺麗な女性と話をしていた。
話し声は、座っている位置が前方から離れているということもあって聞き取れないけれど少し焦った様子の二人を見るにあまりよくない状況なのかもしれない。
教師以外の全員が座ったことで部屋の様子が分かりやすくなる。日光を多く取り入れるために壁の上部のほとんどを覆う窓からは明るい光が差し込んでいる。
このことから外は昼間であると推測される。また周囲には壁に沿うようにして中世の騎士が着ていそうな鎧を纏った人たちがいた。
ただ、不思議なことに兜は被っておらず晒されている顔が全員女性だった。こういう力仕事って男の仕事じゃないの?と暫く疑問のままに一人の騎士の方を見ていると目が合う。...なんだか視線に言い知れぬ圧力を感じるが無視するのは感じが悪いかなと思い、取り敢えず会釈だけしておく。
かっと見開かれた眼差しにビビってそれ以降その人の方を見ることが出来なくなってしまった。
周囲の級友たちにも多少は心の余裕が生まれたのかそこかしこの会話の声量が少しずつ大きくなってきた頃、話がまとまったようで教師と話をしていた綺麗な女性が座った一団に向けて一歩踏み出すとこう告げた。
「皆さま、はじめまして。私はレフィナド=E=ドゥラーク。ハイマート皇国の皇帝の一人としてこの国を導く者です」
こういうのを鈴を鳴らしとような声音というのだろうか、その第一声は広い室内においても透き通るように響き、聞いた者に安心感を与える効果があるように思えた。
「誠に勝手なことではありますが、この度は我が国の窮地を救っていただくために皆様をこの国にお呼びしました。まずは私の話を聞いていただきたいと思います。その後で皆様にどうするかを決めて欲しいのです。...まずは我が国を襲う窮地について」
ごくり、と誰かが喉を鳴らす音が耳に入る。室内を緊張感が満たす頃、たっぷりと間を取ったドゥラーク皇帝陛下が口を開く。
「男日照りです」
は?
その場の空気が凍った気がした。
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