終わりゆく世界の存在証明~突如始まった世界の危機をどんな手段を使ってでも生き延びてやる~

矛盾ピエロ

序章 生き残る道はただ一つ。他の全てを捨てることだ

第1話 理不尽な始まり

『こんにちは人類』


 それが始まりの言葉だった。日が傾き月が顔を出し始めた時間帯だったと思う。地獄みたいな日常に疲れた僕に与えられたのは救いではなくさらなる地獄だった。


#####


 雑踏を行く人々の視界に突如テレビの画面のような光の粒子で構成されたビジョンが無数に空中に浮いていた。当然のことながらそのような奇天烈な技術は誰にとっても身近なものじゃなくて...


頭の上にクエスチョンマークを浮かべて戸惑う人々


 続けざまその画面?に映った者達を見て人々の混乱はピークを迎える。

そこに映っていた者達には通常では考えられない特異な器官をその身に宿していたから。


 神々しく輝く翼を持つ者。禍々しさすら感じる歪な角を持つ者。下半身が蛇のような鱗に覆われた者もいる。

それら12の者達の中から神々しい翼をもつ少女のような外見の者が画面に向けて一歩踏み出すと口を開いた。


『こんにちは人類』


 どこか見下すような、こちらを弄ぶような雰囲気を思わせる声音で語りだした少女はこちらの調子など気にした様子もなく一方的に語りだした。


『突然のことだけど、今日、今、この瞬間から君たちには滅んでもらうことになりました~♪ぱちぱちぱち~♪はい、皆も拍手拍手ー』


 パチパチ、とわざとらしい拍手がその様子を見ていた幾人かの怒りを煽った。徐々に混乱から立ち直りつつあった人々の中には画面に向けて罵声を発する人もいたがどうやらこちらの声が届いている様子はなかった。

さらに少女が続ける。


『って急に言われても困ると思うからね。皆で話し合って一つゲームをすることになりました♪』


 皆、とは恐らく画面に映る他の11人の事だろう。他のメンバーは我関せずといった感じで少女に反論するつもりはなさそうな感じがした。


『これから君たち人類には滅んでもらうんだけど、とある条件をクリアした人間たちには滅びを逃れるチャンスを与えます』


 とある条件とは何だろうか?誰もがそう疑問に思っただろう。それを察したかのように翼の生えた少女は間髪入れずに説明を続ける。


『えーまずこの世界を12に区分けします。そしてそれぞれの区を私たちが一つずつ管理します。誰がどこを管理するかは追々自然と分かっていくでしょう。もちろん引越しをしても大丈夫。まぁ、出来たらの話だけど。』


 そう言って嗤う少女の様子はその“引っ越し”とやら簡単ではないことを表していた。


『そしてそれぞれの管理者が担当する区に課す“試練”をクリアしていくことで生き残った人間に救いを与えてあげる』


 混乱から回復した人々の喧騒はいつの間にか静まっていた。周囲に目をやるとほとんどの人間が2種類に分類できるようになっていた。

一つは画面にくぎ付けになって少女の話を真剣に受け止めている者。もう一つは与太話と切り捨ててそれぞれの日常に戻っていく者。後者の方が圧倒的に多いが...


『あ、そうそう“試練”とは別にこの世界自体に課せられた・・・・・・・・・・・・“実験”も幾つかあるから。実験から生き延びつつ、試練に挑んでね~♪それじゃ後はそれぞれで担当するとして、最後通牒はこれで終わり!それじゃせいぜい終末を足掻いて魅せてね♪』


 そう言うと、空中に浮かんでいた画面?は霞のように消えてしまった。そしてそれと同時、大きな、とても大きな揺れが世界全土を襲った。

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