第23話 兵装 1号

青白い顔を見ながら俺は固まった。

そんな俺を見たエリーは

「いいのよ。やりましょう!私の頑張りでみんなが助かるならいいのよ。」

そう言いながら俺の手を取る。

俺は多分、恐れていたと思う。

エリーを失う事を…。


二人のやり取りをみていた御姉様は

「私の貞操で妹が助かるなら喜んで捧げるわよ。」

そう言いながら二人の手のうえから両手を重ねる。

そんな御姉様を見ながらエリーは

「ダメよ、お姉ちゃん。これは私の罪なんだもん。」

しかし御姉様は

「妹の罪はみんなで背負うは、私たちは家族ですよ。」

ニッコリ笑う御姉様。

俺は心で謝罪しながら御姉様を抱いた。

そして俺は涙を流した。

そんな俺を見たエリーは、

「何であなたが泣いているの?泣きたいのはお姉ちゃんなんだよ!」

そんな俺を見ていた御姉様は苦笑い。

痛いのに涙を相手が流している。

俺は

「いいか!俺は今、超高級料理を食べている。しかしこの超高級料理を味わう事無く、短時間で腹にいれないと命を失う強迫観念に囚われている!何故こんな愚行をしているかわからない。もっと感動的に味わいながら食べるべき物なんだ!」

ちなみに俺の両腕からも血が流れている。

俺の状態は


右手に御姉様は手を握り、

左手に矢を握り、

御姉様は頂きながら、

両手から血を流し、

魔力を御姉様に渡しながら、

右手の魔力を左手に受け流し、

左手の矢を込める。

御姉様を頂いた感動的なく、

両手の痛みに耐えながら、

矢を作る事に集中する。


そこには喜びは無く、ただ今は矢を作る事に集中する。

痛みを気合いで押さえ込み。

命を削りながら…。


ゆえにそこには虚無感しか無いだろう。


そんな事を考えていたがその時は来た。

俺は御姉様の頭を撫でながら離れ、

エリーのもとに行く。

矢を手渡ししながら、

「俺の…、俺たちの全てを込めた。

これでデスロードを倒してくれ。」

そう言ってキスをする。

エリーは

「受け取ったわ、これで…。

ところで名前は何て言うの?」

俺は

「疾風光矢(しっぷうこうや)。俺が初めて作った錬金兵装。

そして俺はこれからロマーンと名乗る。」

今までの出来事が思い浮かぶ。

異世界転移。

サバイバル開始。

臭くなる身体。

流れてくる桃尻。

ブラック企業な魔力水作り。

突然のボスバトル。

激しい痛みとやるせなさな武器作り。


あれ?なんだか涙が流れてきた。


俺って運がない?


そんな事を想いながらも半泣きになり、

「ロマーン式 錬金兵装1号 疾風光矢。頼んだぞエリー。」

エリーは

優しくも厳しい笑顔で頷く。

俺は

「エリーの御姉様、今回の件は無かった事にして再度やり直しを要求します。」

御姉様はニッコリ笑い。

エリーはその意味を噛み締めると、

「ゴディファ!」

俺にボディブローをかました。

漏れる俺の悲鳴。

エリーは「この変態が!」

御姉様は「私の名前はマリー、返答は考えておくわ。」


そして俺の意識は無くなった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る