第31話陽葵ちゃんの生胸を見てしまって俺は悶絶する

似合う、似合わないという話なら、陽葵ちゃんは何着ても似合うと思う。だって、手足長いし、スタイルいいし、顔も可愛いし。あえて一番似合うものがあると言うならば、多分、生まれたまんまの姿が一番綺麗だと思う、エロい気持ちなしで、真面目にそう思う。


だけど陽葵ちゃんの意地悪なこの表情は俺に水着姿を見せつけて恥ずかしがる俺をからかう気だ。多分先日の祝賀会で神絵師の美玖さんにデレデレしたことへの罰だ。


でも……陽葵ちゃんの水着はご褒美にしかなってない!


俺はからかわれることを承知で試着室の前で待った。


男があまりいないこの空間に陽葵ちゃんがいない状況で待つのはかなりの胆力が必要とされる。


なんか場違いな、所在なげな感じが恥ずかしい。


時間の経過速度がきっと重力の異常でおかしくなっていると確信した時、突然陽葵ちゃんが話しかけて来た。


「せんぱーい、着替え終わった。見て、感想聞かしぇてくれん♪」


すっとカーテンが開く。


そこには天使がいた。意地悪な笑みを浮かべた天使だけど。


水着は小さなハンカチだけで作ったみたいに面積が小さい布を結び合わせただけの心元ないものだった。風が吹いただけで飛ばされそうにしか見えない。 


恥ずかしそうに、少しはにかみながら後ろに腕を組む水着姿の陽葵ちゃん。


俺は思わず陽葵ちゃんを上から下までガン見してしまった。


か、可愛い。それにエロい。これ、下着と大して変わらんというか、むしろもっとエロくないか?


俺の視線に気がついて。


「もう、先輩はほんなこつ駄目やなあ。後輩ん水着姿ばそげんじっくりとなめるように眺めて、ふふッ。どげん? 似合うとーと?」


「に、に、に似合ってる! もう、天使がいるとしか思えない!」


「ぷっ♪ そりゃ言い過ぎばい。それに目がうちん胸んところで泳ぎよーばい。ほんなこつ駄目な先輩やなあ、後輩ん胸見てエッチな気持ちでいっぱいなんやなあ♪」


しょうがないだろ? 絶対わざと俺の気持ち引っ張ってるでしょ?


だって腕で胸を挟んで……胸が強調されて普段より大きく見えるようにするとか!


どこでそんな技を覚えてきたの?


その後、陽葵ちゃんは次々と水着を試着していった。俺は何種類もの陽葵ちゃんという天使の水着姿をたっぷり堪能、いや、悩殺されてHPがほぼ-10000だ。もう、魔力ももたない。多分MP-10000だ。


これもう陽葵ちゃんがどんな水着を着ても海辺で悶え死ぬ奴が増える未来しかない。


陽葵ちゃんは俺に水着姿を見せつけるたびに散々俺のことをからかった。


俺がタジタジなのを楽しんでる。


「しぇ、先輩に食い入るように見らるーと、エッチな気分になってしもうう♪」


楽しげに言う陽葵ちゃんの顔は意地悪な顔だ。


陽葵ちゃんがエッチなこと言う度に俺の顔は真っ赤になってると思う。


「いや陽葵ちゃん? 俺見たいけど、だいぶ我慢してるよ!」


「嘘ですよー♪ 陽葵ん恥ずかしか裸同然の姿見て、って、え? 鼻血出とー」


いや、俺の不甲斐ない鼻血は大変なことになってるのは間違いないけど、それ指摘しないで!


「へへッ♪ 先輩、後輩でこげんなって駄目な人やなあー♪」


完全に陽葵ちゃんに馬鹿にされる俺。


余程祝賀会で美玖さんにデレデレしたことが不愉快だったらしい。


すいません。彼氏として失格です。


……でも……これ、罰になってないよな? むしろご褒美のような気がする。


だって、陽葵ちゃんめちゃめちゃ可愛い上……凄いスタイルいいもん! その水着姿だぞ?


俺が陽葵ちゃんの水着を見て、ちょっとだけエッチな気持ちになっても不可抗力だよな?


「__もう、そげん__陽葵んこと視姦プレイで見てみたかねんて__うち、断れんよー♪」


「断れぇー!!」


そんなこと言っている陽葵ちゃんの顔は楽しそうでもあり、意地悪な笑みも浮かべていた。


陽葵ちゃんの意地悪。1日10回は言っている可愛いていう言葉を半分にしてやる。


だけど___。俺のささやかな反撃の決意より重大なことが……起きてしまった。


「せんぱーい、次ん試着終わったっちゃん♪」


元気な声が聞こえてHP-10000の俺の前のカーテンが開く。


「は?」


俺は思わず素っ頓狂な声が出た。


そして俺の視線は陽葵ちゃんの胸に集中してしまった。


だって……陽葵ちゃん……トップの方を……身につけてないだもん。そういう水着?


「もう、せんぱーい! そげん胸ばガン見されたらさすがに恥ずかしかばい♪ ほんと先輩はエッチで駄目な人やなあ♪」


「え? い、いや、陽葵ちゃん! つけてないから!」


「へ? 何ば言いよーんと?」


陽葵ちゃんが理解できずに俺を凝視する。


「ひ、陽葵ちゃん……回れ右して鏡見て!」


「え? ん? どう言うことと?」


とは言うものの、俺に言われた通り鏡の方を向く陽葵ちゃん。


鏡を見た陽葵ちゃんは固まった。たっぷり時間にして1分。


これは脳のブレーカーが飛んだな。


次は悲鳴があがるかな。と、そう思っていると陽葵ちゃんは再びこちらを向く。


シャ。


カーテンを今更慌てて引いて閉じる。


「ひぃやあああああああああああ!」


やっぱり悲鳴が上がった。そしてしばらく……。


試着室からは陽葵ちゃんの声がブツブツと聞こえる。


「な、なんでうちゃトップ着とらんかったと? うちってバカ? そういえば一回着たばってん、先輩んあわあわする顔ば思い出し笑いして……着とらんのば忘れとった。こ、こりゃ先輩がいけんのよー!」


俺悪くないだろ?


「先輩、次んなどげん?」


唐突に陽葵ちゃんは何事もなかったかのような顔で次の水着に着替えてカーテンを開ける。


まさかの続行?


それにさっきのはなかったことにしたの?


「ねえ、先輩♪ デザインはこん二つが気に入ったと……先輩はこれとこれどっちがよか?」


そう言って、ピンクのフリルがついた三角ビキニとやっぱり可愛いけどきわどい白いビキニを俺に見せる。


陽葵ちゃんがぐいぐいと2つの水着を突き出してくる。


とにかく俺に決めさせるの? そんな責任重大な事、俺に聞くの?


もう知らんぞ! 海辺で陽葵ちゃんの可愛さにあてられて悶えてキュンキュンする犠牲者増えても!


俺は無責任にも自分の好みを言った。


「そうだね___こっちの白の可愛い水着かな!」


多分、この白い水着を来た陽葵ちゃんはレベル999だと思う、うん、何の比較かわかんない人は多いと思うけど、俺もわからん。それ位最強だという事だ。


陽葵ちゃんは結局一番際どい白のビキニを買った。


白は清楚感あってすごく陽葵ちゃんに似合っているけど、エロさも1000倍位になると思う。


陽葵ちゃんは俺の選んだ白の際どい水着を買って、俺のそばに来た。


そして……。


「せ、責任とってね……せ、せんぱい」


消え入りそうな小さな声で俺の可愛い後輩は恥じらいながらそう言った。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る