第12話陽葵ちゃんと侍女との会話

陽葵ちゃんSide

放課後、陽葵は莉子ちゃんと会う約束をしていて、体育館裏で、待っていた。

しばらくすると。


「陽葵様ぁ!」ガシッ!


陽葵の侍女の莉子ちゃんが、通路の角から全力でダッシュして抱き着いてきた。


ていうか、陽葵の飼い犬かぁ!


「陽葵様ぁ! あたし心配したよー!!」


「い、いや、莉子ちゃんの方が怖いし! そげんに抱きつかないでよ!」


「ああ、この子犬のような感触と返しぃ!」


いや、まとわりつく子犬的存在はどちらかと言うと莉子ちゃんの方だから!


「莉子ちゃん、そげなことは彼氏として! 陽葵、身の危険ば感じる!」


莉子ちゃんは侍女として家に一緒に住んでいるし、仲良しだけど、最近の莉子ちゃんは女の子の親友以上の何かを感じる。


お巡りさんに早く逮捕してもらったほうがいいと思う。

「あん、莉子ちゃん、あの……本当に大丈夫と? そん、マジもんの百合?」


「だ、誰が百合よぉ!! 陽葵様からそんなことを言われるなんて! 心外よ!」


「でも、どこからどう見ても、ヤバかよ?」


「えぇぇ! 陽葵様ぁ! なんてこと言うの? あたし、ちゃんと彼氏いるんですよ!」


なんか彼氏いるとか、羨ましか。


莉子ちゃんの偽装疑惑もあるけど……。


莉子ちゃんには他校の先輩ん彼氏がおるて聞いとー。時々お惚気聞くけど……


それでも莉子ちゃんには百合疑惑がある……。彼氏見たことなか。


それに、何とか早う莉子ちゃんば引き離したか。暑苦しか


「陽葵様。それより、本当にアイツになんかされてないの? 裸の写真撮られたりして脅されたりとか……は、裸の写真……ゴクリ……ねえ、陽葵様、今度一緒にお風呂に入りましょう? いいですよね、いいよね? いいに決まってぇ! い、痛い!!」


ボカっちゅう音と共に、莉子ちゃんの頭に大きなたんこぶができとった。


思わず莉子ちゃんにゲンコツで頭ばくらわしてしもうた。


絶対盗撮する気やろう。なんか先輩と夜に二人きりでいるより莉子ちゃんと昼間一緒におる方が危険に思える。


陽葵に先輩ちゅう想い人ができて、侍女の莉子ちゃんとの距離もちょっと遠うなるかな? て思うとったけど、そうはならんやった。今はほんとどっか行って欲しか、マジで。


でも、先輩の無実ば晴らすためには頼りになる子や。


こん子、クノイチやけん。実は現代でもおると。


「ねえ、莉子ちゃん。樹先輩んことまだ信じられんと? 大和先輩ん推理も真実やて思わんと? 陽葵が信じとー人が信じられんと?」


「そ、それは、樹先輩は冤罪だと思うし、陽葵様は莉子の次位に樹先輩を信用しているとは思うけど……」


陽葵は先輩が未だに信用されきっていないことにいら立ちば覚えた。


「陽葵は先輩は信用しとーば、莉子ちゃんなんて信用できんよぉ! 一緒にお風呂なんて入ったら、ぜったい襲わるーて思う!!」


「そ、そんなぁ~。莉子、そんなに陽葵様の信用ないの?」


信用ある訳なかやろ! ちゅう突っ込みは誰しもが思うて思う。


「まあ、私が侍女として忠義すぎるから誤解があると思うけど、先輩の例の事件は確かに疑惑しか感じないです。少し調べたらおかしいことだらけでした」


「ほ、本当? 先輩んこと信じてくるーと? それに、あん事件んこと、何かわかったと?」


陽葵は莉子ちゃんの先輩ば信じてくれたっぽか言葉につい嬉しゅうなって、口調が弾んだ。


「……陽葵様のバーカ!」


「どうしてよ! なんで突然莉子ちゃんから馬鹿扱いされるの?」


「だって、莉子が先輩のこと信じたってこと言った途端、そんなに嬉しそうな顔するとか。完全にあの先輩のこと大好きなんじゃないですか?」


「あ、当たり前よ! 陽葵は先輩の未来ん嫁なんやけん!」


莉子ちゃん、私の嬉色の顔見て涙目でこっち見るの止めて、マジで怖い。


一応性別お互いん女の子よね?


「もうッ! そこまで言っちゃうんですね? わかりましたよ。先輩の無実を晴らせば……好きな人の幸せを考えることこそが真の愛だから」


いや、めっちゃ怖いから。女の子から真の愛告げられても嬉しゅうもなんともなか。


恐怖しか感じん。


「それより、莉子ちゃん。あん女……んこと何かわかったんやろ?」


「お任せください。こう見えても甲賀流忍法の師範にして日本一のクノイチの力信じてください」


いや、どっちかて言うと、そん力ば使うてなんかされそうで怖い。


盗撮とか……夜中にいつん間にかなんかされてそう。


でもそれば口に出すと、先輩の無実の罪を晴らすのに差し障りがるけん、ここは我慢。


「それで、どこまで調べたと? あん女んこと?」


「はい。配下の者に調べさせたところ、あの女の悪い噂がたくさん出てきました。おそらくあの女の悪い噂の方が真実だと思います」


「そっか、やっぱりあん女、先輩ば陥れたんや!」


陽葵は陽葵の信じると言う言葉に涙ば流した先輩ん姿ば思い出して、拳ばぎゅっと握る。


「もうッ!!……莉子の陽葵様にいいよる奴を助けるのはイヤだけど、他でもない葵陽様のためだし……ぴえん……」


「だから、もう! こん事件が終わったら、ギュッとしてよかけん!」


「マジで! マジですよ! ……よーし! かくなる上は伊賀流の忍者を総動員させて、一瞬であの女の正体をつかんでやるんだから! そして、陽葵様と……ぐふふ」


うち、早まったかな。莉子ちゃんは手遅れだと思う、あと甲賀流じゃなかったと?


……いや筋金入りん変態の侍女は警察ん結構な実力者の娘やったりする。警察ん裏ん力。甲賀流忍者か伊賀流かどっちかわかんないけど忍者たちの力ば使えば、簡単に尻尾ば捕まえるやろ。


しかし、代償に陽葵ん貞操がピンチになっとーような気がするとは気のせいだろうか?


だが、陽葵は自分の貞操ば危険に晒しても、絶対、先輩ん無実ば晴らす!


陽葵は決意ば胸にし、莉子ちゃん何されるかビビりながら調査結果ば待つことにした。

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