第35話 なにって……ただのキャプチャーだが?

「――ここから先が、ジャハダ洞窟だ」


 プライ森林を抜け、四人は巨大な洞窟の入り口に差し掛かっていた。


「へぇ……ここが。確かに面白そうな匂いがするな」


 ちなみに……今、デュアルの動きや言動はアルダートの自由にしている。正体がショウだとバレたくないからだ。


「ここから先、何も見えなくなるぐらいに暗い洞窟だ。単独行動はしない方がいい」

「えぇ」

「わ、わかりました!」

「……いや? 俺には関係ねぇな」

「お、おい!」


スカイの警告を無視し、アルダートは洞窟の中に入り込む……と。


「【キャプチャー】!」


 近くにいたナイトキャットをコアに変換させる。


「……は?」

『ナイトキャット!』

「よし、これで暗闇でも見れるな」

「……な、な、な」

「あ?」

「な、なんだその力は……!? テイマーでもモンスターと融合するやつなんて、見たことないぞ……!?」


 デュアルの力にわなわなと震えるスカイに、アルダートはキョトンとして答える。


「え? ……ただのキャプチャーなんだけど。それがどうした?」


 ――あぁ、アルやめてぇ……そんななろう系主人公みたいに、『そんなに凄いことなのか』みたいな無自覚主人公ばりの言い回し、やめてぇ……!


 さも当然のように答えるアルダートに心の中でショウが悶えていた。


「んなくだらねえこと気にしてないでよぉ、さっさと進もうぜ?」

「あ、あぁ……」


 戸惑う三人の姿を見て、ショウは静かに願う。


 ――どうか。どうかこれ以上、アルが大人しくしてますように……。



***



 ――いや、こいつが大人しくするわけがないよねー!


 ショウの願いはあっさりと打ち破られた。


 攻略開始から一時間経過。


「ハハハハハッ! Dランクモンスターばかりで退屈かと思っていたがよぉ! こうも群がられると、面白くなるなぁ!?」


 迫り来るリザードマンたちにアルダートは鋭利な爪で引き裂いていく。


「おらっ!」


 一閃。


「おらっ!」


 一閃。


「――おらおらおらおらおらっ!」


 一閃。一閃。一閃。一閃。一閃――!


 リザードマンは単体ではDランクモンスター。大した脅威ではないのだが……集団で行動すると、難易度はBランクモンスター並みに引き上がる。そのトップにハイリザードマンがいれば尚更だ。


 ……だというのに。


「おら、どうしたぁっ!? この前の、魔人の方がぁっ! まだ歯ごたえあったぜぇっ!?」


 ハイリザードマンがいようが……関係なし。

 複数相手にたった一人で捌ききっていた。


「……なあ、アル」

「ほらほらっ! もっと俺と遊べ!」

「おい、アル」

「おいおい、てめぇがボスなんだろ!? もっと気合いいれろやぁ!」

「アルってば」

「んだよ、うっせぇなあ。こっちはせっかく楽しんでるって時によぉ」


 ショウの問いかけにアルダートは忌まわし気な返答をし、ようやく動きを止める。


「お前、スカイと合流しないの?」

「……はぁ?」


 そう、アルダートは今単独行動中。「俺は俺で勝手にリザードキング探すから」と返答を聞かずに洞窟内を探索している最中なのだ。


「俺の目的は敵を倒すことだっつってんだろ。あいつらと仲良しごっこする気なんざねぇぞ」

「いや、それはわかってんだけどさ。多分スカイといた方がリザードキングに遭遇しやすいぞ?」

「……なんでそんなことがわかるんだ?」

「うーん……、としか言いようがないなぁ……」


 正確には――そういう運命フラグだから。


 これはスカイが勇者の盾を手に入れるためのイベントだ。どんなシナリオになるかはわからないが……スカイたちがリザードキングと遭遇するのはほぼ確定だと断言してもいいだろう。


「うーん……ショウがそこまで言うなら合流してやらんでもないか。もっと下に面白そうな気配があったんだがなぁ……」

「あぁ、それはフリズドウルフだな。リザードキングじゃない」

「そいつとも戦いてぇ」

「リザードキング、スカイたちに倒されてもいいの?」

「んなわけあるか」

「じゃあ我慢しろ。フリズドウルフはジャハダ洞窟にちゃんと生息しているモンスターなんだから」

「ちっ……わかったよ」


 ショウの忠告にアルダートは渋々従う。


「えぇと、あいつらは……上の階を攻略してたな」

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