第20話 物語の最果ては海にあり
「――さて。着いたか」
無事Eランクの昇格試験も終わり、一息ついたところで……二人は当初の目的であるミオネ海岸へ向かっていた。
「着いたって……あ? ここ、なにもねぇぞ?」
アルダードは辺りを見回すが、見えるのは砂浜と海のみ。海の先は白い霧がかかっているが……それ以外は魔王城らしきものなんて、見当たらない。
「いや、ここであってるよ。アル、変身するぞ」
「なんで?」
「いいからいいから」
「……ちっ。しょうがねぇな」
いまいちショウの意図が理解できないまま、アルダードは言われるがままにコアへ変わる。
『スライム!』
「「変身!」」
と。
「――お、いたいた」
変身したショウが空を見回し、目につけたのは……グリフォン。
「【キャプチャー】!」
グリフォンに向かって手をかざし、キャプチャー完了。コアへ変える。
『グリフォン!』
「さて……アル、もっかい海見てみ?」
「……あ?」
グリフォンスタイルへとスタイルチェンジしたアルダートは、ショウに促されて今一度霧のかかった海を見てみた。
……と。
――霧の奥に、何か……シルエットみたいのが見える?
ぼんやりとしか見えないが。
「――!!」
それはまるで――漆黒の城のようなシルエットが。
「――ショウ!」
「わかってる」
両手を広げると背中から翼が顕現する。
そして一気に飛び上がると、黒いシルエットへと向かった。
やはり城だ。霧の奥に漆黒の巨城が確かにある。
――あそこに魔王が!
近づく度にどんどんと濃くなっていく霧。それに構わず真っ直ぐ突っ込んでいく。
が……途端に霧が晴れた。
「なっ……!?」
アルダートは思わず絶句してしまう。
何故ならば――霧が晴れた先にあったのは水平線まで続く海。目の前から城が消えたのだ。
慌てて後ろを振り返ると……霧の先に見える魔王城。
「……結界が張られているんだ」
混乱するアルダートにショウが説明する。
「これでわかっただろ。秘宝が必要な理由が」
秘宝は全部で四つ。全てを揃えることができないと……魔王城への結界を打ち破ることは不可能という設定なのだ。
「……ちっ。じゃあ来ただけ損かよ」
「いや――そうでもないさ」
「?」
目的を失い、軽く舌打ちをするアルダートだが……ショウにも目的はある。
海から突き出ている岩場へ着陸すると、コアを抜き取った。
「協力ありがとな。次は……お前だ」
グリフォンを解放し――次に狙いをつけたのは。
「【キャプチャー】!」
『ホーンジュゴン!』
今度は角が二本あるジュゴンへスタイルチェンジし……向かうのは空から海へ。
「……海に潜って、なにがあるんだよ?」
「なにって、そりゃ――」
二人が潜って数分。やがて見えてくるのは――。
「海底神殿――とかかな」
海底に沈んだ遺跡が目の前に現れた。
海底神殿。本来なら、海を割るか大地を無理矢理隆起させるかの方法でしかたどり着けない場所だが……ショウが選んだ選択肢はもっと単純。潜水できるモンスターの力を借り、探索する。
「ここに海の秘宝、『真実の水晶』がある」
「ほう……? ならよぉ、それを今ここで手に入れれば――!」
「あぁ、一つ目は俺たちのものだ」
声を弾ませるアルダートに、ショウもニヤリと笑う。
「道案内は任せろ。どこに何があるか、全部頭の中に入ってる」
「おう、頼むぜ」
意気揚々と地下神殿で探索を開始する二人。
……だったが。
「………………あれ?」
ない。
何処を探しても――秘宝がないのだ。
「おい、やっぱり道間違えたんじゃないのか?」
「いや……そんなことはない。ここだ。絶対ここにあるはずなんだ」
だが……ないのが現実。
彼の中で今現状で予測できることは――たった一つ。
「誰かが先に秘宝を持っていった……?」
予期せぬ出来事に――ショウの知っているストーリーとはだんだんとズレが生じてきていた。
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