第2話:異世界召喚
俺は八百万の神々と仏様のご配慮で修業する事ができた。
俗に仙界仙境と呼ばれる、時間が止まっている世界で修業できた。
2000年を超える時を鍛錬に使い、仙術を極めて真人となった。
★★★★★★
「「「「「おお、成功だ、勇者召喚に成功したぞ」」」」」
窓1つない、閉じ込められた大広間に大勢の言葉がとどろく。
でっぷりと肥えた国王らしき男も満足そうにほくそ笑んでいる。
本当は大失敗しているのに、愚かな事だ。
「なんだ、なんだ、なんだ!」
「キャアアアアア!」
「キィイイイイイ、なによ、なによ、なによ!」
「イヤアアアアア!」
こいつらにとっては、トレーラーに引き殺された直後だ。
何が何だか全く分からず恐ろしいのだろう。
虐めで追い詰めた同級生に自殺を強要したのだ、もっと恐怖して苦しめ!
「勇者殿、驚かれるのも無理はないが、落ち着いてくだされ。
貴方達は神に選ばれた勇者なのだ!
この世界を救うべく選ばれた勇者なのだ!」
ふん、何が勇者なモノか!
同級生を虐めに虐めて追い詰め、自殺を強要した極悪人の人殺しだ。
禁忌を破った犯罪者に同じ犯罪者を押しつけただけだ。
全ては八百万の神々と仏様が、条約を破ったこの世界の神を脅かした結果だ。
表向き勇者になっているが、実際にはとてつもないペナルティがついている。
「さっそく勇者様達のステータスを確認してくれ」
勇者召喚のために、禁忌を破り多くの捕虜を生贄にするような国王と大臣連中だ。
召喚した勇者が期待通りの人間か、できるだけ早く調べたいのだろう。
俺も同じように調べられるだろうが、偽装されているから大丈夫だ。
「おおおおお、勇者様だ、間違いなく勇者様だ!」
『ステータス』
赤居嵐羽(ラント・アカイ)
情報:ヒューマン・男・17歳
職業:勇者・Lv1
HP:11
MP:12
筋力:18
耐久:13
魔力:9
俊敏:8
器用:3
魅力:1
幸運:1
「職業」
勇者:レベル1
「アクティブスキル」
なし
「パッシブスキル」
なし
「魔法スキル」
なし
「ユニークスキル」
なし
「犯罪歴」経験値が100倍必要なペナルティ中
虐め自殺強要(殺人罪):神罰により犯罪歴とペナルティは非表示
念のために確認してみたが、確かに勇者と表示されている。
しかし、俺が教えられた平均的なステータスよりも低い。
しかも俺以外には見ないが、犯罪歴とペナルティがある。
「あ?!
この方は勇者ではなく農民となっております!」
「なに?!」
「失敗したのか?」
「いや、4人もの方々の職業が勇者なのだ、失敗という事はない」
「では何故この方の職業だけが農民なのだ?!」
何故だって、罪深いお前達を罰するために決まっているだろう!
強欲そうな国王が酷薄な表情を浮かべている。
5人中4人が勇者でも、損をした気になるのだろう。
「はぁ、農民、異世界召喚されて農民だと?!」
「きゃははははは!」
「外れスキルなんて無くなくない?!」
「えぇえええええ、実は能力者だったりする?」
勇者召喚された虐め4人衆の内、3人は完全に俺をバカにしているな。
1人は疑っているようだが、表情から見てほんの少しだけだな。
小説を読むようには見えないから、アニメからマンガの知識だろう。
「はん、どうせあの事故に巻き込まれたジジイだろうぜ!
俺達と違って勇者の資格がない、モブなんだろうぜ!」
虐めの主犯格、赤居嵐羽(ラント・アカイ)が蔑むように言いやがる。
本当に愚かで身勝手だな。
同級生に自殺を強要した極悪人が、勇者に選ばれた事に何の疑問を感じないのか!
「えええええ、だってアニメやマンガじゃ巻き込まれた奴の方が主人公?
そんなのが多かったんじゃない?!」
虐め抜いた同級生に自殺を強要した連中の内で主犯格の4人。
その中で多少でも疑う知識があるのは八鳥涼花(スズカ・ハットリ)だけだな。
「はん、俺様達のような選ばれた人間と、ちんけなサラリーマンは違うんだよ!
俺達は中学生なのに、他の人間ができない事をやったんだ!」
他の人間ができない事……同級生を虐め殺したのがそんなに偉いのか!
自殺を強要した事が、人に誇れるような事だと思っているのか!
いいだろう、これで何のためらいもなく予定通り生き地獄に叩き込んでやれる。
「国王!
俺様達が勇者だと言うのなら、命令に従え!
勇者召喚に潜り込んだ偽者を追放しろ!
それもただ追放するのでは勇者召喚に潜り込んだ罰にならない。
魔獣や魔人がいる危険な森に追放しろ!」
勇者と持ち上げられて、さっそく舞い上がって図に乗っている。
身勝手な国王の目が、酷薄な光を発している事も分かっていない。
騙され利用される未来も読めない愚か者だ。
「……勇者殿の願い通りにして差し上げろ。
勇者召喚に便乗した大罪人を魔の森に追放しろ!」
「「「「「はっ」」」」」
何かあった時のために、関係者以外に知られないようにした地下大広間。
床には細く掘られた六芒星に乾いた血痕が固まっている。
俺が我慢の限界を迎える前に放り出してくれたのはありがたい。
「さっさとこの馬車に乗れ!」
俺の乗れと言っている馬車は、ひと目見ただけで囚人護送用だと分かる。
俺を地下の大広間から引きずりだした騎士の1人が、槍の柄で殴りつけてきた。
腹が立つので、擬人式神の代わりにもらった使い魔を付けてやる。
俺は元の世界で仙術を極めて真人となっている。
だがこの世界には仙術や仙人の概念がない。
だからそれに匹敵する種族にされ、魔術を与えられる約束になっている。
その影響で、式神の代わりに使い魔とゴーレムを使えるようになっている。
普通に考えれば、式神術とゴーレム術で等価交換なのだが、違っていた。
八百万の神々と仏様がこの世界の神に圧力をかけて上位互換にさせたのだろう。
「うっ、いたたたたた!」
「おい、どうした?!」
「腹が、腹が痛い!
トイレに行かせてくれ!」
「おい、おい、おい、こいつの追放はどうする?
陛下に命じられた役目をさぼったら、ただでは済まないぞ?!」
「あとで、あとで行く、このままでは漏らしてしまう!」
俺を槍で叩いた罪が、うんこを漏らすだけですむと思うなよ。
内臓、直腸が肛門から出てくる病気もあるが、その程度では済まさない。
今回は全ての内臓が肛門から飛び出すくらいの呪いにしてやった。
激痛と屈辱、便まみれてトイレで死ぬがいい!
「しかたがないな、直ぐに追いついてこいよ。
俺の配下はついて来い!」
「「「「「はっ」」」」」
俺を連行する騎士には配下の歩兵がいるようだ。
便所に走って行った騎士にも配下がいるようだが、この場で待つようだ。
ご苦労さん、糞まみれで死ぬ騎士の後始末は任せたぞ。
「これに乗ればいいのですか?」
「ああ、そうだ、追放先まで送ってやるから、さっさと乗れ」
この騎士は無暗に暴力を振るうタイプではないようだ。
魔境と呼ばれる場所まで暴力を振るわなければ見逃してやろう。
俺だって無暗に人殺しがしたいわけではない。
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