第47話 なんで撮影前日に
交代で私もシャワーを浴びてバスローブ姿でベッドルームの入口に立っていると、幾地さんが待っていましたとばかりにベッドから立ち上がり、私をひょいっとお姫様だっこをしてベッドの上に下ろしてくれた。ベッドの上でぺたんこ座りして幾地さんを見上げていると、幾地さんは自分のバスローブをサッと脱いだ。灯りを点けたままの部屋の中で幾地さんの逞しい身体が露わになり、筋肉で腕も足も、首回りも胸回りも太いことが分かる。私がキョトンとしていると幾地さんから「脱げ」とだけ言われて、「でも灯りが…」と答えると、幾地さんはベッドに上がって来て私のバスローブの襟を左右に乱暴に開けた後、押し倒した。幾地さんは私の小さな胸を揉みしだきながら薄ら笑いを浮かべている。
「エリカちゃん、フリだから安心して。俺、こんな感じで女に言う事を聞かせて征服するプレイが好きなんだ。嫌な事を強要したりしないから遠慮なく言ってね。」と解説を聞いて少し安心した。なるほど五ツ星会員が乱暴なはずがない。
「私も何かした方がいいですか?」
「うーん、そうだな~。普通の女子大生っぽく恥ずかしがったり、ちょっと嫌がったりしてもらおうかな。」
「分かりました。」クラブネームすら使うことなく正体を明かして一晩を過ごすのにわざわざ普通の女子大生の演技をするのはバカバカしい気がするが、こちらはお金をもらう身だ。遊びに付き合ってあげよう。幾地さんは、近江さんの様に紳士的でもなく、因埜さんの様に淡泊でもない高圧的なプレイを楽しむ。例えば、私の太腿を押し広げて股間の匂いを嗅ぎ、私が恥ずかしがって「止めてください。」というと「綺麗な顔してションベン臭い股だな」と笑い、私の口の中に舌をねじ込んできて、顔を背けて「気持ち悪い」と嫌がるのを「柔らかくて美味しい唇だな」と舌なめずりして面白がっていた。その後も私が腕をクロスして胸を隠しても、力強い手でいとも簡単に解かれ、体を丸めて俯せになっても軽々と持ち上げて仰向けに戻される。私の嫌がるフリも中々サマになっていたのだろう、幾地さんは楽しそうにプレイに没頭していた。
ただ1つお互いに誤算があった。フェラだ。私がクイーンサイズのベッドの上を這いながら逃げ回り、距離を取って上半身を起こすと、幾地さんは私の目の前で仁王立ちになり、「舐めろ」と命じてきた。
「嫌です。」私には最初何を舐めろと言われているのか分からなかった。
「命令だ舐めろ。ほら。」幾地さんが腰を突き出してペニスを私の顔に近づけてくる。なるほどペニスを舐めろと言われていたのだ。
「ですから、嫌です。…やめて、汚い。」
「だから面白いんじゃないか。舐めろよ。」
「幾地さん、本当に嫌です。」と真顔で言うと、
「エリカちゃんはフェラNGなの?」と幾地さんは不思議そうな顔をした。
「NGというか、やったこと無いですし、やりたくないです。」
「ええ!クラブでもプライベートでもやったこと無いの。」
「はい。まあ…」そんなに驚かれる事なのだろうか。
「本当に?無いなら無いで俺が一番目になりたいんだけど、シャワーでもう一度洗った後でもダメ?」
「ダメです。」フェラと言う行為は女性が男性器を舐めたり口に咥えたりする事というのは、高校時代に女友達の会話で聞いたことがある。村野さん曰く「少し臭いけど彼氏がすごく喜ぶ」らしいし、「フェラでも彼氏をイカせることができる」と口でも男を射精させた事を自慢げに語っていた。しかし私は、コウジはもちろん因埜さんにもフェラを求められたことは無く、色々と仕込まれた近江さんでさえ幸いにもフェラを命じられる事は無かった。たぶんだが、私の場合、セックスをして私の中のイった方が気持ち良いからだろう。名器や膣トレは伊達じゃない。
「残念だけど仕方ないな。」幾地さんは物凄く残念そうにベッドに座り込んだ。可哀想に思えて一度試してみるか?と一瞬頭をよぎったが、臭いらしいし汚いという先入観があるのと、もしやってあげるとすればパパではなく彼氏であるコウジだろうという風に思い直した。お金に困っていたからとは言え処女をパパに売った事を後悔しているのだから、フェラを初めてしてあげるならコウジであるべきだ。
「幾地さん、ガッカリさせて申し訳ありませんが、続きをしましょ。」ニコッと笑って先を促した。
「そうだな、ヤルか。」幾地さんが一旦ベッドから降りてどこからともなくコンドームを箱ごと持ってきた。
「俺、自分で言うのも何だけど、デカいし、相性が悪いと時間がかかるから痛かったら言ってくれ。」とわざわざ私に見えるようにゴムを着けた。
「ちょっと怖いですが、わかりました。」と大きいのに驚くフリをしたものの、コウジのと大差はなさそうだ。
「すげぇ、何だこれ。」しばらく無言で腰を振っていた幾地さんから出てきた言葉で、この後5~6分正常位が続いて幾地さんは果てた。
「ルックスとスタイルだけでも五ツ星の価値があるけど、これがずっと『独占』で囲いたくなる理由かぁ。」
「そんなに気持ち良かったですか?」満足してもらえる自信はあったが、白々しく聞いてみた。
「ああ、こんなに気持ち良いのは初めてだよ。」と言いながら後始末をしていたが、もちろんこの1回で終わるはずがない。
「なあ、まだ出来るよな。」
「はい。」私は俯き小声で答えた。
「これだけセックスが気持ち良いなら、無理やりフェラをさせる必要がないのも納得だぜ。」と言いながら30分位私の身体を弄んだ後、硬さが戻ったのか幾地さんは再び正常位の体勢で入って来た。
「ふ~、やっぱりだ。良いね~。……なあ、生はダメだよな。」
「ダメです。つい最近彼氏としましたから、生だと病気になるかもしれませんよ。」
「そっか~。シーズン前とは言え性病で練習休むのはダサ過ぎるし、諦めるか。」幾地さんは私の体内を堪能しながら気持ちよさそうに腰を振り続けている。途中、私を対面で入れたまま抱っこして、そのまま立ち上がって下から突き上げてきたのには驚いた。不安定で下に落とされないか怖いだけで、行為に集中できず、気持ち良くも無い。私が「こわ、い、です」と途切れ途切れに伝えて、やっと幾地さんは「奥まで刺さって気持ち良かっただろう」と満足そうに笑いながらベッドに戻してくれた。このまま幾地さんの自由にさせていたら何をされるか分からない。さっさとイってもらうために「私、正常位がいいです。」と恥ずかしそうに嘘を伝え、気持ち良くもない行為で感じている演技をしながら“締め”て、幾地さんをイカせた。早く終わらせたかっただけなのに、不本意ながら幾地さんを余計に喜ばせる結果になった。
私達はシャワーを交代で浴び直してベッドに二人で寝る。
「すごく気持ち良かったよ。エリカちゃん。」
「ありがとうございます。幾地さんも長時間のセックスで疲れたんじゃないですか?」
「エリカちゃん、つれないな~。俺は延長12回で逆転ホームラン打ったくらい爽快だよ。」幾地さんはこう言うが私はいつも以上に疲れた。コウジよりもイクのに時間がかかる長時間セックスだった上に、マミコという別人格ではなく朽木エリカとして他の男に抱かれた精神的ダメージが大きい。諦めと妥協の末、嫌々パパ活をする別人格マミコではなく、今回は自分も相手も初めからエリカだと認識してセックスをして、今までに感じたことが無い罪悪感と後悔がのしかかり、身勝手な言い分だが犯されたような気持ちさえ湧いてくる。私の気持ちの整理がつかない間も幾地さんは私に気を遣ってか、労いのつもりなのか、理由は判然としないが楽しそうに話しかけてくる。でも、私には適当な生返事しかできなかった。
「エリカちゃんも気持ち良かっただろ?俺とのセックスって、結構、喜んでもらえるんだぜ。「気持ちいい」とか「大きい」とか、大袈裟なのになると「初めて本物の“男”とセックスできた」とかって喜ぶ子もいてさ~。普段どんなショボいチンポとセックスしてるかの知らねえけどさ……。」
「前にクラブ会員の女子アナとヤった時なんか、女子アナちゃんの方から俺のゴムを取り上げて生で欲しがったんだぜ。まぁ、ありゃあ年下男とのセックスが久しぶりだったのもあるけど、俺の子種を欲しがっていたみたいなんだよな。俺の子を妊娠して、俺と結婚して、人生一発逆転したかったらしい。まあ俺、スター選手だからさ……」
「エリカちゃんも、今まで相手をしたパパはおじさんばっかりだったろうから、今晩楽しめたんじゃない?あ、でも彼氏がいるんだっけ。週刊誌に書かれていたよな。俺も読んだよ、共演NGされているとか枕営業しているとか。俺もさ~、八百長とかドーピングとか適当な事を書かれて困っているんだよなぁ……。」
今晩は普通に眠れそうにない。明日は撮影なのに朝には目が腫れて充血もしているかもしれない。ユリエさんに何て弁解しよう。「なんで撮影前日にわざわざ変わった事をするのよ。」って怒られるんだろうな。ミナさんに勝手に新しいパパをマッチングされただけなのに。
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