第18話 若い今しかできない貴重なお仕事よ。
久しぶりに「ゼタバースクラブ」へ来た。ミナさんへ相談するためである。電話で相談するつもりだったが、「時間があるなら久しぶりにおいでよ」と言ってもらったので、日時を合わせて訪問した。個室に通されて、二人で紅茶とクッキーを食べながらお話しした。
「時間を空けてもらってありがとうございます。」
「いいの、いいの、マミコさんは大事な三ツ星会員だし。」
「三ツ星会員って何ですか?」
「ああ、クラブではね年会費の額やマッチング実績とかによって会員を3ランクに仕分けしているの。例えば、一ツ星の女性会員なら一番低い年会費で男性会員の誰でも閲覧可能だけど、三ツ星女性には高い年会費を払った男性会員で、かつ、マッチング実績が多く、交際時の評判が良い限られた人しかアクセスできないってわけ。」
「へー。でも私、年会費払ってないですよ。」
「女性限定の初年度無料キャンペーンで入会してもらったし、マミコさんは近江さんの『独占』で、他の人がアクセスできないクローズ会員だから独占が続く限り年会費は必要ないわ。」
「なんか、ありがとうございます。」
「お礼なら近江さんに言いなさい。で、相談って何だったかしら?」
「はい。近江さんなんですが…、近江さんはどんな人で、どうやったらもっと喜んでもらえるかなぁって思って。」
「随分勉強熱心ね?」
「コンドームを着けてもらうようになって、万が一、近江さんの『独占』が切れたり、お手当が減ったら大学を続けられないし、レッスンも続けられなくなります。やっぱり彼氏とか止めた方がいいのかなって思って。」
「近江さんは彼氏に反対じゃなかったんでしょ?」
「はい。パパ活とプライベートは別だし、病気は嫌だからコンドームを着けるとも言ってくれました。でも、コンドームを着けるのが残念そうなんですよね。」
「なるほどね。だから生じゃなくなっても喜んでもらうように何か工夫して、今までどおりお手当を確保したいと。」
「はい。」
「OK。じゃあ近江さんのこれまでの実績だけど、ちょっと待ってね。」ミナさんがタブレットを操作して、何か調べている。
「うん。近江さんも三ツ星会員で、これまでのマッチング実績も多いし、女性会員からの人気も評判も高いわ。…あと、色んな子と遊ぶよりは、気に入った子と長く関係を持つのが好きみたいね。……ふふふ、この人「初もの」好きだわ。新規会員とか、男性経験が少なそうな子を選んでいる事が多いわね。」
「そんなことも分かるんですね。」
「各会員の今までの交際履歴や、コーディネーターがヒアリングした感想や意見、相談や苦情とかを記録しているの。近江さんの場合、紳士的とか、優しいとかのコメントを多くもらっているわね。…お、「初めてイケた」ってコメントもあるわよ。この人セックス上手なの?」ミナさんがクスクス笑ってる。
「わかりません。」
「そっか、マミコさん初めてだったもんね。マミコさんもイケた?」
「…はい。指で触ってもらって…。」ミナさんはタブレットを操作しながら、何でもないように聞いてくるが、私は恥ずかしい。
「セックスでは無いの?」
「はい。近江さんにも、私がセックスでイクようになると面白いんだけどって言われました。」自分が残念な子みたいで恥ずかしい。
「近江さんの方はセックスでイってる?」ミナさんが少し心配そうな表情だ。
「それは絶対に大丈夫です。毎回拭き取るのが大変なくらいですから。」
「あははははは。」ミナさんのツボにハマったようだ、大笑いである。
「あー、可笑しい。…でも男ってチョロいでしょ。女がどんな思いかも知らないで、ヘコヘコ一生懸命に腰を振って勝手に出しちゃうんだから。…でもまぁ、拭き取るのが大変なくらいいっぱい出しているなら、近江さん満足しているんじゃない?」大笑いの後、笑いを抑えながらゆっくり話してくれた。
「だと良いですけど。」
「ゴメン。笑いすぎた。えっと、男を喜ばせる方法だったわよね。…そうねー、マミコさんも、イカないまでも気持ちいい事ってあるでしょ?それを素直に伝えるの。例えば「さっきの気持ちいい」とか、「もっと続けて」とか。マミコさんが恥ずかしそうに言ってくれたら男はイチコロよ。」艶っぽい言い方で例をあげながらミナさんが教えてくれる。
「ホントですか?」
「私もよく使う手なの。…いい?恥ずかしいけど我慢できないって感じを出すのが大事よ。普段はこんな事言わないけど、あなたには言ってしまう。あなたは特別って感じでね。近江さんのような「初もの」好きはこういうの大好物なはずよ。」ミナさんが足を組み替えて前のめりになる。
「ミナさんもですか。…すごい、もっと他にコツがあれば教えてください。」スマホのメモアプリを起動する。
「よし。伊達に私も男をイカせまくって、コーディネーターまで上り詰めたわけじゃないからね。任せなさい。…あとマミコさんにもできそうなのは、…真似ね。男がしてくれたことを、たまにでいいから同じようにお返ししてあげるの。胸を舐めてくれたら、こっちも男の胸を舐めてあげるとか。男って意識的か無意識か、自分がしてほしい事を女にしていることがあるから、女から同じことをしてもらえると喜ぶわよ。」
「私も近江さんに「同じようにやってごらん」って、ディープキスを教えてもらいました。」
「そうでしょ!だから例えば、何かを真似して「近江さんも気持ちいいですか?」、「私も頑張ってみました」ってお返ししてあげるの。でも、あくまでたまによ。あんまり積極的にすると男慣れしてるって思われるから。マミコさんの清純キャラを守りつつ、尽くすと言うと大げさだけど、男の人のために頑張る姿勢を見せるの。こっちが何もしないで寝てるだけだと、いくら美人でもいずれ飽きられるしね。」
「加減が難しいですね。」
「…あとは、膣トレね。」
「なんですか、それ?」人生で初めて聞いた単語だ。
「道具を使って、膣が締まるようにトレーニングするの。…こういうやつ。」ミナさんがタブレットで検索して、その「インサートボール」なる鉄アレイの様な形をした道具を紹介しているオンラインショップのサイトを見せてくれた。数千円で売っている。
「これをアソコに入れて、力んだり緩めたりをして締める練習をするの。トレーニングだから時間がかかってすぐには効果が出ないけど、道具を全部入れて緩急つけれるようになったら、男を一瞬でイカせることが出来るようになるわよ。」
「一瞬、ですか…。」
「そう、こっちがその気になったら、男はすぐにイっちゃう。私はこのおかげで一晩に最高7回男をイカせたことがあるわよ。もちろん相手との相性やコンディションにもよるけどね。」ミナさんがドヤ顔になる。
「えー、そんなに何回もこっちも疲れるし、体がもたないですよ。」
「近江さんとはいつも何回してるの?」
「だいたい夜1回、朝1回です。」
「たぶん、倍は男をイカせられるし、逆に1回だけじゃこっちの方がイケなくて満足できない。まぁ、マミコさんはまだセックスでイってないみたいだけど。」
「トレーニングしたら、コンドームを着けていても男の人に満足してもらえますか?」
「もちろんよ。最高記録の時は生だったけど、着けてでも1回では終わらないわ。男の方が私を放してくれないの。ふふふ。」
「ミナさん綺麗な顔をしてスゴイ事しているんですね。」
「ふふ、私は元女優よ。マミコさんとは路線が違うけど、美貌と演技で男を満足させてきた。クラブでも色んな経験をさせてもらったけど、私でイケない男はいなかったわ。まあ、私も美味しい物を奢ってもらったり、気持ちいいセックスができたり、良い思いもたくさんできたけどね。」
「勉強になります。先輩。」
「じゃあ、あとは練習と実践ね。マミコさんも膣トレやってみる?」
「他の人には内緒にしてもらえますか?」
「いいわよ。私とマミコさんだけの秘密ね。ついでにコレ、私が買っておいてあげる。」
後日、私のマンションのポストに「速水ミナ様からのお届け物」の不在連絡票が入っていた。
事務所の月イチ面談。1つ良い話があった。
「例のポスターを見て「この子、誰?」って問い合わせが東通塾に入っているらしいわよ。まだ4~5件くらいらしいけど。」ユリエさんから淡々と教えてもらった。
「それが良い話なんですか?」
「いい話じゃない。興味を持ってもらえたんだから。」
「はぁ、ありがとうございます。」
「あんまり嬉しそうじゃないわね。塾の方は反響があって喜んでいるみたいなのに。」
「お役に立てて良かったです。」
「じゃあ…、東通塾さんが夏期講習のポスターにもエリカをモデルとして選んだ、って言ったらどうかしら?」
「え、本当ですか?」俄然食いつく。
「マネージャーの私が仕事の事で嘘を言ってどうするのよ。」
「やります!やらせてください。」
「ははは、エリカって本当に分かりやすい子ね。是非やらせてくださいって回答しておくわ。また女子高生のコスプレしてもらうけど、それもOKね。」
「はい。ブレザーでもセーラー服でも何でも着ます。」当然だ。
「若い今しかできない貴重なお仕事よ。よかったわね。」ユリエさんも私の新しいお仕事に微笑んでくれた。
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