第16話 急に出演が増える子は、あっという間に消える。焦ることは無いさ

 エステのバイトも楽しく続いている。ホノカとしゃべりながらせっせとタオルたたみや掃除をし、夕方の休憩時間には勉強会に参加させてもらってメイクや肌のお手入れを教えてもらったり、マッサージの真似事というか練習をさせてもらっている。私とホノカのどちらかがする側とされる側になり、正社員のエステティシャンの指導の下、全裸のされる側にオイルを塗って痩身エステ等の練習をするのだ。真面目なホノカはエステの方でも私より上達が早く、腕を上げていった。

 「エリカ、彼氏できたでしょ?」閉店したお店の中でタオルをたたみながらホノカが聞いてくる。

 「な、何よ急に。」

 「否定しないんだ。…エリカは美人だし、恥ずかしがること無いって。」

 「なんで分かったのよ。」まだクラブ関係の人にしか言っていない。ユリエさんがホノカに言ったのかな。

 「マッサージの時にエリカの裸を見るけど、腰のくびれがはっきりしてきて、体つきが綺麗になったなぁと思って。」

 「うそ~、そうかな?」自分ではあまり変わった気がしない。

 「あと…、最近エリカの胸が柔らかくなったな~と思って。ははははは。」ホノカは少し溜めた後、笑いながら言った。

 「ちょっと、変な事言わないでよ。」急に恥ずかしくなった。

 「えー、でも彼氏に揉んでもらってるんでしょ?いいじゃん、ずっと胸の事を気にしてたんだしさ。このまま続けてたら大きくなるかもよ。」ホノカの笑いが止まらない。私に彼氏ができたのは間違いないが、体に変化が出ているとすれば近江さんのおかげだ。若狭君とは手を握って歩くことさえしていない。

 「もー、笑いすぎだって。」

 「ゴメンゴメン。でも、ホント良かった。エリカって男嫌いっていうか、避けてるようなとこがあったからさ、彼氏できたっぽくて安心した。」

 「そりゃどうも。あー、恥ずかしい。」

 「そうかな。私も彼氏に触られたり、吸われたりするよ。」ホノカの大笑いは収まったが、男が女の胸を触るのは当たり前だと言わんばかりにニッコリ笑ってた。ホノカも彼氏とセックスをしているのだと改めて思う。ホノカの裸を思い出し、どんな風に男と絡み合っているのかと想像する。ホノカは私よりも少しだけ背が低いがバランスがいいスタイルをしている。出るところが出て、へこむところがへこんでいるのだ。しかも演技やお芝居の練習をしているので、表情や声色を変えるのは朝飯前だ。きっと普段とは違う夜のホノカは、彼氏を魅了して“虜”にしているに違いない。


 「ホテル春山荘東京」の朝。客室でシャワーを浴び終わって、鏡に映る自分の裸を改めて意識的に見ると、確かにくびれがくっきりしている様な気がする。胸は小さいままだが、触れば柔らかいと言えば柔らかい。自分では「元々こんな感じだったじゃん」と思うが、ホノカが彼氏に揉まれていると勘違いするくらい変化があったようだ。

 今朝もついさっきまで近江さんとセックスをしていた。「名器」を持つ私は特別な事をしなくても近江さんを満足させているようだが、近江さんは私に色々と恥ずかしい事を教えてくれる。胸や首筋を舐めてもらうと気持ち良いし、最近では指で触られると既に濡れている。ディープキスで近江さんの舌を吸い込むのも「様になってきた」らしい。私自身、行為に至るまでのこのやり取りが気持ち良くて興奮している自覚がある。


 今朝は初めて騎乗位を経験させてもらった。近江さんはいつも通り正常位で入れてきて、体が馴染むまで数度出し入れされた後、私を両手で抱き起して、ベッドの上に座ったまま向かい合って“おんぶ”してもらっているような形になった。

 「今日は動かないんですか?」ペニスを股間に感じながら近江さんの耳元で囁く。

 「ずいぶん積極的になってきたじゃないか。嬉しいよ。」近江さんは私の腰に左手を回したまま頬にキスした後、右手で優しく髪を撫でてくれた。大きく鼻から息を吐いた後「今回は自分で動いてごらん」と言うと近江さんは自分の体を横たえた。私は近江さんの腰の上でペニスが入ったままぺたんこ座りしている様な態勢で残される。

 「え、どうしたら良いですか?」少し前屈みになり、どうしたら良いか分からない自分の手を近江さんの胸に置く。

 「マミコさんが気持ち良いように腰を動かしてごらん。」

 「どうやって?」

 「こうやってさ。」と両手で私の腰を掴み前後に動かすようにしてきた。

 「はい。」良く分からないが前に着いた手で重心を取りながら、ゆっくり腰を前後に動かそうとする。しかし、動かしにくい。

 「あれ、…どうしよう。動きません。」グダグダの私に近江さんは目を閉じて微笑んだままだ。

 「大丈夫だよ。色々試してごらん。」もっと前屈みになりベッドに膝をついたまま腰を浮かせてみると、上に上げ過ぎたのだろうスルッとペニスが抜けてしまった。

 「え?うそ、…すいません。」

 「自分でもう一度入れるんだ。」

 「はい。」日光で明るい部屋で近江さんの大きくなったペニスがお腹の上に倒れているのが分かる。親指と人差し指でペニスを摘まむと、私の体液か近江さんの体液か分からないがヌメヌメして、「キャ」っと思わず一度指を離してしまった。ペニスを汚い物扱いしているみたいで怒られるかと思い、急ぎ謝った。

 「失礼しました。」

 「大丈夫、気にしてないよ。それより、早くしてくれないと縮んじゃうんだけど。」

 「はい。」ヌメリがあり、硬く温かいペニスを再度指で摘み、自分で股を覗き込みながら穴に当てがう。「何でこんな恥ずかしい事をしているのだ?」と思いながら指でペニスが動かないよう支えて、ゆっくり体重をかけていく。一度穴から滑って逸れてしまい焦ったが、二度目で再度入れることに成功した。でも、まだスタート地点に戻っただけだ。体重の載せ方や手を着く位置を変えるなど色々試したが、寝かしていた膝を起こしてつま先立ちで近江さんの上に座るようすると腰を動かしやすくなった。小さく前後に動かしてみたが、さっきよりも可動域が大きくなり、バランスも取りやすい。この体勢で前後に動かしてみる。

 「どうですか?これで…。」

 「ふふふ。マミコさんも気持ち良い所をさがしてごらん。」すぐにはピンと来なかったが、近江さんが指で私をイカせてくれる敏感な所は分かる。ペニスの付け根に私の敏感な部分を擦りつけるように動くと確かに気持ち良い。私が腰を小さくリズムよく動かしていると、

 「マミコさん、いいよ。俺も気持ち良い。」どうやらこれが正解のようだ。近江さんは無言になり、次第に我慢している様な表情になって、イった。私が腰を浮かせて抜くと、私の股間から大きな精液の塊が近江さんの太腿の上に落ちた。近江さんの身体の上から降りると、ベッドの上に二人並んで寝そべり、少し休憩する。近江さんはいつも私を抱き寄せて髪や背中を撫でながら「ありがとう、気持ち良かったよ」と労ってくれるのだ。

 多分、行為自体をしている時間は初めの頃も今も大きく変わってないと思うが、痛くなくなってからは時間が短く感じるようになった。数分とは言わないが、もともと15分とかかっていなかったのだろう。私は早くお終わってくれた方がありがたい。特に今回は寝転がって我慢するだけではなく、私の方が動くという恥ずかしい行為をさせられたから少しでも早く終わってほしかった。私も何か主体的に動くことで近江さんの満足度が上がり、早く終わるなら、そうしたい。時間がある時にミナさんへ相談してみよう。


 「東通塾」のお仕事の後はまた予定が空白だ。仕事はおろかオーディションの予定も無い。ユリエさんからは「急に出演が増える子は、あっという間に消える。エリカはまだ若いし、むしろこれからの子だから焦ることは無いさ。」と励ましてもらった。そうは言ってもレッスンを真面目に続け、汗をかき、クタクタに疲れて家へ帰ると心が折れそうになる事もある。誰かに頑張っている事を認めて欲しい。悩みや愚痴を聞いてほしい。私はそんな心の弱さもあって若狭君の告白にOKしたのかもしれない。友達の一人と思っていた男から急に伝えられた好意。家族にさえ見放されている私でも彼なら甘えさせてくれそうな気がした。

 明日は何度も日時調整をして、やっと二人の都合が合ったデートだ。主に私の予定のせいでリスケになっている。若狭君には会えない時の口実を全てエステでのバイトと言っているが、さすがに少し無理がある。私がモデルを目指してレッスンを受けている事を話した方が良いだろう。

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