第14話 ついでに、三つ編みツインテールとかもやってみる?

 近江さんには色々なホテルに連れて行ってもらっているが、気に入って何度も使っているホテルもある。グランドハイマウントホテルはその1つだ。近江さんから電話をいただいて日時や場所を調整する時に、私からグランドハイマウントをリクエストしてみると快諾してくれた。そして、私から「相談があります」とも伝えておいた。

 いつも通り、まずお食事に連れて行ってくださる。中華料理「チャイナホーム」の個室を予約してくれていた。

 「この前は、バレンタインのチョコレート、美味しかったよ。ありがとう。」

 「いえいえ、事務所で大量に作ったチョコの残りですから、お礼を言われるような物ではありません。」

 「で、相談って何かな?」料理が個室に運ばれてくる。以前の私なら気になって口を閉じるところだが、私も慣れた。確かに誰も何も言わず、外に漏れない。

 「私、同じ大学の学生から告白されて、彼氏ができそうです。その人とお付き合いしてもいいでしょうか?」

 「もちろんだよ。マミコさんは美人で賢い子だから、いずれ彼氏ができるだろうと思っていたよ。」

 「『独占』までして私を大事にしてくださっているのに、すいません。」

 「ははは、それはクラブでの話で、プライベートは別だよ。クラブの事は彼に内緒にして、続けるんだろ?」

 「はい。続けます。どちらか止めなきゃいけないなら、彼氏との関係を止めます。」私にはまだ付き合うという実感が無い。

 「それを聞いて安心したよ。…俺もだけど、バレないように会うのは結構大変だぞ~。」冗談っぽく笑っている。

 「私も絶対にバレないようにして、ご迷惑をおかけしないようにします。」

 「日にちを合わせるのも少し大変になるかもしれないね。」

 「彼はデパートでバイトしていて、週末や休日の方が忙しいらしいから、今までのように金曜日とかなら合わせやすいと思います。それに、彼とはお昼でも、大学でも会えるし。」

 「そう。じゃあ、大丈夫かな。」

 「あと、……。」さすがに店員さんがいる時には憚られるので、扉が閉まっている事を確認した。

 「私のコーディネーターさんにも相談した時、関係が深くなったら、ちゃんとコンドームを着けてもらうようにと言われました。」少し恥ずかしい。

 「ああ、確かにそうだね。その彼が二股や不特定多数の女性と遊ぶ人ではないと思いたいけど、そうしてもらえるかな。お互いに病気はゴメンだ。」

 「わかりました。」

 「これで相談は終わりかな?安心してくれたかな?」

 「はい。ありがとうございます。」笑顔で返した。


 近江さんと客室へ上がる。部屋は違うが同じタイプの間取りだ。まず近江さんがシャワーを浴びて、私も入れ替わりで浴びる。余りある広さのベッドなのに私は近江さんの腕枕の上にいる。

 「この際、聞いてみるんですが、私って何がいいですか?近江さんはどうすればもっと喜んでもらえますか?」

 「急にどうしたの?」

 「交際を始めてすぐの頃、コーディネーターさんに「お手当に相応しい女になりなさい。」、「相手の男性に喜んでもらえる女になりなさい。」って言われたんです。」

 「へえ、そうだったんだ。でも、自然体で少しずつセックスを楽しんでもらえたらいいよ。」

 「その、…コンドーム着けるのは嫌ですか?」近江さんの胸に頭を移してより密着し、甘えてみる。近江さんは腕で私の肩を抱いてくれた。

 「生で出来なくなるのは残念だけど、むしろ今までが恵まれていたと思っている。マミコさんとのセックスは吸い付くように中で絞められて、すごく気持ち良いんだ。俺も出会ったのは初めてだから確信が無いけど、「名器」ってやつなんだと思う。」

 「私って変わってるんですね。」胸から顔を見上げてみる。

 「前にも言ったけど、褒めてるんだよ。それにマミコさんが恥じらう様子が可愛くて面白い。」近江さんが天井を向いたまま小さく笑った。

 「今でも恥ずかしいです。特に朝は。」

 「俺は朝の方が好きだな。白い肌が綺麗に映える。」

 「私、寝転がってるだけですが、このままでいいんですか?」

 「そうだね。敢えて言えば、マミコさんもイクようになるともっと楽しいんだけどね。“自分でする”のもやってないだろ?」

 「はい。せっかく教えてもらったのにすいません。時間があまり無いのと、なんか抵抗があって……。イカない女はつまらないですか?」

 「そんな事は無いよ。最近は指でイってるし、その内セックスでもイケるようになるさ。慌てる必要はない。」

 「はい。これからも色々教えてください。」

 「はは、分かった。じゃあ始めようか。」優しいキスから今晩も始まる。2~3度軽くチュチュとした後、近江さんの舌が私に入って来た。この前教えてもらったように私も舌を伸ばして動かすと舌と舌が絡まり、しばらくすると近江さんが私の舌を口に含み吸い上げる。濃厚なディープキスをした後、近江さんは私の首筋、鎖骨、乳房、脇腹、二の腕、お臍、腰骨と円を描く様に舐めながら下半身の方へ降りていく。腰まで降りた後は私の両乳首を舌と指で遊んだ。仰向けの私の上半身のいたるところを舐めたり撫でたりしてくれて、すごく気持ちいい。乳首はもちろんだが、首筋や乳房と脇腹も感じる。近江さんに舐められている間、ずっと「ん…」、「はぁ」と声とも溜息ともつかない音が私の口から出ていた。近江さんも興奮が高まってきたのか、硬くなったペニスが私のお腹や太ももに度々当たっている。近江さんの指が一度私の股間に降りてきたが、「もう濡れているね」と私の耳元で囁いた後、一旦体を起こして正常位で入れてきた。私の肩を下から抱えるように掴み、ペニスを押し付けてくる。速度が上がるのと比例して近江さんの呼吸も乱れ、最後は最も深く挿し込んだところで動きが止まり、射精された。近江さんは、次の朝も今までどおり優しく私を抱いてくれて、セックスで満足してくれたようだ。


 バレンタイン営業の効果は、私には無かった。ホノカはお世話になった制作会社や衣装協力の会社等、自分を使ってくれた所ばかり回ったようで、1つ2つともう予定が入っている。「隅に映ったり、一瞬映ったりばかりだけど、絶対に必要な役だから」と、台本と言うかコンテを見たホノカは、笑顔でお仕事を受けている。小学校の学芸会のようにみんなが主役とはならないのだ。

 私はと言うとユリエさんが見つけてきてくれたオーディションをいくつか受けていたが中々勝ち残れない。「コンバート」のはビギナーズラックというか、足さえ綺麗なら誰でも良かったのかもしれないとさえ思うようになった。「華も実績も無い駆け出しが仕事を選んでいたら、いつまで経ってもデビューが出来ない」というユリエさんの言葉も頷ける。

 やっと1つ勝ち残ったのが都内に10店舗くらい展開している中堅学習塾「東通塾」のポスターやフライヤー等の広告媒体だ。私はブレザーを着て生徒役の一人として載ることになる。

 「エリカ、制服だけど大丈夫だよね?」ユリエさんが半分笑いながら聞いてくる。

 「大丈夫ですけど、大学生の私が学生役でいいんですか?講師役だと思ってました。」

 「ははは、幼い顔や体が役に立ったじゃない。それにエリカはまだ大学1年生で10代でしょ。そんなに変わらないじゃん。」

 「笑い事じゃありませんよ。」

 「教育関係だからバカっぽいのや、顔や体つきが派手な子は無理なの。エリカみたいに真面目そうで、「私、男なんて知りません」って子がちょうど良いのよ。それにエリカ自身が有名私立の現役大学生ってのも評価してもらえたと思う。」

 「そういうものなんですね。わかりました。」


 撮影の日。ユリエさんと一緒に「東通塾」の本社へ入る。撮影は実際の教室で行われるようで、男女別の更衣室と、例によって長机とパイプ椅子が並ぶ会議室が共同の控室として充てられていた。現場入りして早速、更衣室でブレザーに着替える。上着を着るだろうが一応白の下着を着けてきた。私の学校はセーラー服だったので、白シャツにグレーのブレザー、グレー基調のチェック柄スカートは新鮮だ。ゴムで留めるだけの赤いスクールリボンだけではなく、紺のソックスと黒のローファーまで用意されているのだから本格的だ。ここまでするならメイクもしないほうが良いだろう。抑えめの色のリップだけ塗って控室に戻る。

 「ふーん、結構いけるわね。高校生にしか見えないわよ。」ユリエさんがまじまじと私の制服姿を見て感心している。

 「止めてくださいよ。恥ずかしいです。」

 「はいはい、櫛を通してあげるからおいで。…ついでに、三つ編みツインテールとかもやってみる?」ユリエさんは笑いを堪えながら言ってくる。

 「もー、髪は普通にストレートでお願いします。」

 私の緊張をほぐすためにわざと冗談を言っているのだろう、ユリエさんと私がやり取りをしている間も着替えを済ませたモデルたちが入ってくる。男女5人ずつで10名だ。塾らしく全員が同じ制服ではなく、3~4種類別々のを着ている。制作会社のディレクターが呼び込みに来て、教室へ移動する。いよいよ撮影だ。

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