第63話 ホッとひと息と思ったら
マクプンに到着しおろされる。鷲掴みで運ばれるのってけっこう辛かった。出来れば次回は背中がいいな。
「あれ?」
私の体が急に丸みを失った。スピアーがまた緩和を始めたのだろうか?
でも、何かがおかしい。とても中途半端に細くなった。ほんのりと多めに残る脂肪、ぷにぷにお肉……。
「エマ、どうした? なんか中途半端だな」
「うぅ、ルニア。どうしてこうなったの?」
「わたしに聞かれてもなぁ。まあ、ダイエットは続けるんだから問題なんてないだろ」
「そ、そうだけど……」
ルニアは嬉しそうに笑ってくれた。だから、いっかと自分に言い聞かせる。そうだ、これから頑張るんだ。呪いだっていつか自分で――。
「エマ、ルニア。ボクは何もなかったか確認してくるから」
人の姿に戻ったブレイドは近くにかけてあったらしい服をまとっていた。すでに城へと歩き出している。
「はい! いってらっしゃい」
「おー、わたし達は少し休ませてもらうからな」
「あぁ、今度から遠くに出かける時は一言くらい声をかけて欲しい」
「気をつけます」
なんだか、お母さんみたい。心配させてしまったな。
ブレイドが見えなくなってからルニアはヘタヘタと座りこんでしまった。
「だ、だ、大丈夫!? ルニア」
「いや、さすがにあの怒気を間近でずっと感じてたら、なぁ」
「怒気? 私、怒ってなんかないよ?」
「いやいや、エマじゃなくて、な?」
「もしかして、ブレイドが?」
「そうそう。なんだろ、置いていかれたからなのかな。すっごい怒ってた」
「え、全然わからなかったけど……。ルニアはそういうのわかるの」
「あー、人の気持ちっていうのかな。うーん、殺気とかは敏感に感じるなぁ。感じ取れるからこそ、この相手は安全だとか駄目なヤツだとかなんとなくわかるわけだけど」
ルニアは何かを思い出すように空をあおぐ。
「エマ、お腹すいたろ。ごはん食べに行こう」
「う、なぜそれを。まさか、そんなことまでわかるの?」
「いや、さっきからお腹がなってるだろ。気持ち大人しめなのが」
ククッと笑われる。そうです。だいぶ前からお腹が空いて、正直あの緊張の場面でお腹が鳴らないか心配だった時もあった。
「わたしが作ってやろうか?」
「あ、うん。それは……」
どうしよう。ルニアの料理の腕前って確か、「死ぬぞ?」だったよね。うん、死にたくない。
「私が作る!! ルニアは待ってて!! リリーさぁぁぁぁん!!」
私もまた、まだまだ料理なんて言えない腕前でリリー頼りになってしまうけれど。上手くならなきゃ。
ルニアに美味しい料理を食べてもらいたい。それで、私の料理が食べられないなら、ここからいなくなるなんてできないなって言わせてやるんだから!!
そうだ。怒らせてしまったかもしれないブレイドにあとで謝りにもいこう。
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