第62話 ルニアの居る場所

「ブレイド、この辺でわたしだけ下ろしてもらえないか?」


 途中、ルニアが言った。ブレイドはスピードを落とし、ゆっくりと止まる。


「何で? ルニア、一緒にきてくれないの?」


 私に向けるルニアの顔がいつになく真剣で、本気である事がわかる。


「ごめんな、エマ。わたしは嘘をいっぱいついてた。一緒に見返してやろうぜなんて言っておいて、元婚約者の父親の命令に従ってエマの見張りをしてた。死なないように、護衛して欲しいと言われていたんだ。だから、エマに生きていてもらわないと困るのはわたしだったんだ。今回のだって、連れてこなければこんな目に会わなかった――。ごめんな……。だから、一緒に行けない。わたしがいなくなっても、エマはもう死なないだろ?」


 急にそんなこと言われたって嫌だ。ルニアが一緒じゃなきゃダイエットの仕方なんてわからないし、絶対に続けられない。引っぱってくれないと私にダイエットは続けられないよ。

 頭では考えているのに、声にならない。驚きすぎてなのかな。でも、はやく答えないと、ルニアがいなくなってしまう。……そう思えば思うほどなんと言えばいいのかわからなくなってしまう。


「エマは死なないかもしれないがルニア、君をここでおろすこともしない」


 冷静な声でブレイドは続ける。


「さっきの様子だと、この国に残せば君が殺されそうだった。だから、ここにはおろさない。エマが危険を押して助けに向かってしまうだろ? だから、ダメだ。エマにとってルニアは大切な友なんだろう?」


 私の考えていた言葉をブレイドが代わりに話してくれた。こくこくと必死で頷く。


「それにルニア、エマを見つけられたのは君のおかげだったんだ。ダイエットで使うからとエマにボクが作った竜魔石を渡しただろう? ボクは自分が作った竜魔石の場所がわかる。ただの石で作ったのにエマが持ち続けてくれていたのは驚いたけど。でも、それがなかったら見つけられなかった」


 ブレイドが作ってくれたからと持ち歩いていた石。そっか、それで知らせてなくてもあの場にこれたんだ。


「ダイエットはルニアが持ちかけたんだろう? まだエマは続けたいんじゃないかな。ボクはブレイドであってルニアではない。君の代わりになれないんだ。だから、帰ってからしっかりと話をして欲しい」


 ルニアがもう一度しっかりと私を見る。さっきと違うその表情は困ったように笑っていた。


「そうだなぁ。それ、減らさないとだよなぁ」


 私はまた必死にこくこくと頷く。お願い、一緒にいてよ。

 たとえ、向こうの味方にならないといけない日が来たとしても、それまでは私と一緒にいて欲しい。


「先に進むよ」


 ブレイドはまたマクプンへ向け空を飛び始めた。

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