第56話 もう一つの連絡先
「ここ!! ここに触ってないよな!?」
「たぶん……?」
持っていた物をルニアに取られた。さっきまでタネシスがあれで元婚約者に連絡を取っていたそうだ。
あ、タネシスは助けた私兵団の人。狼男から元にもどせば焦茶色の髪の年上お兄さんだった。
「あの、オレ帰れるんでしょうか」
「あー、そうだな。急いだ方がいいかも」
「え、どうしてですか?」
ルニアが私を見る。タネシスも一緒になって。何、私の顔になにかついてる?
芝居に使った洗濯物やご飯の片付けを進めながら私は顔を触って確かめる。何もついてないけど?
ブレイドが
服も念入りに確かめたけれど何もついていない。
「送るのはスピアーとわたしでいいか?」
「は、何でや」
「え、この人がどうやって?」
知ってる私達にはわかることだけど、スピアーの背に乗っていくつもりみたい。ん、でもまって? スピアーが完全竜の形態って小さくて丸い……。翼だけの姿で両わきに抱えて? 前と後ろに掴まって? なんだかすごくシュールな感じの想像しか浮かばない。ブレイドではどうしてダメなんだろう?
「いいから、行くぞ」
すごい勢いでルニアに二人は連れて行かれた。
大の男二人を引きずって連れていける騎士団団長の強さに改めてすごいと思いつつ、理由がわからないまま置いていかれ私は手をルニアのいた方にむけたまま下げられずにいた。
「ボクが連続で国をあけるのを避けてくれたのかな」
ブレイドがそう言って、腑に落ちる。そうだ、この国をいま守ってるのはブレイドだ。
「スピアーって手伝ってくれるのかな?」
「……なんだかんだ言って、
「何でそんなことがわかるの?」
「…………何でだろう。ただそんな気がしたんだ」
自分でも何故かわからないというようにブレイドは笑っていた。
◇
次の日の朝、二人は戻ってきた。
かなり慌てて……。
「エマ!! ハヘラータに一度戻れるか」
「え……」
今日はダイエットは? 昨日もサボったよね。だから、今日はしごかれると覚悟をしていたのだけれど。そのために動きやすい服装も選んでいたんだけれど。
「ハヘラータに戻る?」
それは逆効果ではないでしょうか。またストレスで太ってしまうと思うのですが。
あ、でもルニアは「一度」って言ってるからここに帰ってこれるんだよね。
「王からの要請なんだ……」
「王様?」
ルニアの手に昨日みた連絡用竜魔道具に似た物が握られている。
「黙っててごめん。わたしは王の
ルニアが王という人間は、私を追い出した王子の父親の事だろう。ハヘラータ現国王の命令。あの日、ルニアは私の事を心配して駆けつけてくれたわけじゃなかったの?
わからない事だらけだったけど、ルニアが居てくれたから私はいまここにいられるんだ。これだけは間違いなく事実だから、――恩返ししないと。
「わかった。でもちゃんと説明してね」
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