第23話 私にかけられているもの?

 私はスピアーの丸い体をむぎゅっと掴み揺さぶる。


「スピアー! あなたでしょ? 私をこんなふうにしたのはぁぁぁぁぁ!!」

「ちょっ、まっ……話を聞けやっ」

「はやく、元に戻してよぉぉぉぉっ」


 痩せたいって思ってる私にこの仕打ち。しかもブレイドの前で……。涙がでるよ?


「うわぁぁぁぁぁん」

「だか……らっ! 話をきけゆーとるやろっ!!」


 ブレイドが近寄ってきてスピアーを捕まえようとする。ソレから私は後ろに下がって逃げる。

 今持っていかれる訳にはいかない。だって、見てよこの体。さらにお肉がついてるじゃない。


「あのな、エマ。ボクはどんな姿だろうとエマの事食べてやるから、ソイツを渡してくれないか」

「やだ!!」


 今回だけはそう言ってくれたって、絶対に渡さないんだから。私の今後がかかってる。ただでさえ減らない体重なのに、増えるなんて嫌よ!!


「エマお前のその体にはな、呪いがかかっとる。オレはそれの枷を少し外しただけやっ」

「やっぱりスピアーのしわざじゃない」

「違う、違う!! そうなるように呪われてるんや。お前の体は!! オレならその呪い抑えてやれるっ!? だからオレにもう一回アレをしてやっ」


 呪い? 私、呪われているの? え、どういうこと?


「詳しく教えなさい」

「交換条件や」


 私は考える。だけど、答えは決まってる。


「わかったわ。でも出来なかったらその時は――」

「ボクがお前を噛み殺す」


 ブレイドがするりと私の腕からスピアーを奪う。


「それでいい? エマ」

「あ、えーっと」


 殺すまでは考えてなかった。だから、びっくりする。

 そうだ、最初コイツスピアーは私の事食べるつもりだった。もと大きな竜に戻った時、大丈夫かどうかの保証なんて何もない。ただ、嘘はついてない気がする。だって、魔法で傷を治してくれたもの。やったのは私だけど、竜魔石を作ってくれたのはスピアーだ。


「とりあえず、私の体をもとに戻して。それからよ」

「それはこっちのセリフやっちゅーの。せめて人でもいいからはよ戻してくれ。このままじゃカッコウもつかん」


 はぁぁぁと丸い竜は大きくため息をつく。あれ、もしかして人型にもなれないの?


「ここじゃ、危ない。外に行こう、エマ」

「うん」


 そうだった。もし竜化されて元のサイズになったらここが壊されてしまう。

 私達は城の外へと向かった。

 あれ、何か忘れているような。


「エマ? 行くよ?」

「あっ……」


 そうだ。リリーさんを追いかけていたんだ。どこまで行ってしまったのかな。

 とりあえず、先にこちらをすませたい。でないと、ルニアに見られたら笑顔で追加ダイエットを言い渡されてしまうわ!

 それは、かなりの確率で、死んでしまうっっ!! 絶対に回避しなくちゃ……。

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