第22話 嘘だよね!?
すごく頑張ってとってきた物を慣れてきたこの場所でこれまた慣れたようにしゃりしゃりとかじる。
「ねぇ、ルニア」
「何、エマ」
「これ、美味しいんだけどね」
「うん」
「飽きてきたと思わない?」
ここに来て三日目、これと焼いたお肉しか食べてない。美味しいけれど、味が変わるわけでもなく。さすがに飽きてきたのっ!!
明日から頑張れと言われたから、今日はもうお肉がもらえる可能性は低い。
「ねぇ、ルニア」
「ん」
「あなた、料理は」
自信ありげにルニアは微笑む。
「死ぬぞ」
急に寒気がした。彼女の声が低い。
「……」
返す言葉が浮かばなくて口だけで笑った。
誰かで試したことでもあるのだろうか。考えて私はぷるぷると首をふった。
「私は、料理の本は読んだ事はあるけれど作った事はないのよね……」
「知識だけかぁ。あ、料理が得意な人は知ってるぞ」
「何ですって!!」
なぜそれを先に言わないの!! さぁ、さぁ案内して。私頑張っておねがいするからぁー。
「というわけで、この人がリリーさん」
「えーっと」
ピンク色のぷるんぷるんがぺこりとたぶん挨拶した。見た感じ、スライムよね。
「ここの料理人だったらしいぞ!」
腕も足も顔もない。どうやったって調理道具を持つのは無理そうだ。
「まあ、問題はこの体だな」
「そうねぇ」
私の都合で勝手に人に戻してもいいのかな。でも、私がしたいからしたっていう方が向こうは気負わずにすむ?
えらくもないのに、シルにエマ様と呼ばれてて少し引っかかってはいた。
よーし!!
腕まくりをしてリリーへと手をのばす。待っててねー、美味しい料理ぃぃ。
「ぴ、ぴぃぃぃぃぃぃ」
「あ、逃げた。何やってるんだよ、エマ」
「え、えぇぇぇ」
自分の口からよだれが出ていた。まさか、食べられると思ってしまった!?
「ま、まってーー!! 誤解、誤解なんですぅぅぅ!!」
逃げたピンクのぷるんぷるんリリーを追いかけて走り出した。その先に、同じように走るブレイドを見つけた。あれ、何を追いかけて……。
「おぉぉぉぉっったぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
ボディに衝撃が走る。まんまるいとかげ……、じゃない! 青竜が頭突きをしてきた。
「あー、スピアーっ!」
そうだ、スピアーに聞きたい事もあったのよ。聞こうと思って落ちる前に抱きかかえる。
「ちょっと我慢せーよ!!」
「へ?」
抱きかかえたソレに指をかぷりと噛まれた。ちょっと痛い。って、何するのよ!?
「あ、エマ……?」
「ん、なに? ブレイド」
「…………」
まじまじと見つめられる。やだなぁ、私の事もう好きになっちゃった? そんなに見つめられると照れちゃう――――。
火照る顔を押さえようとして気がついた。いつもより、丸く見える手。お腹まわりも苦しい。なんだかビリって音もする。
…………、まって。私、太ってる!? 何故!?
今日、あんなに頑張ったのにぃぃぃ。
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