第8話

「こころ、黒。聞こえたな? 周囲に災害が観測された」

「言われなくても分かるわよ。馬鹿じゃあるまいし」

 黒は足で一発床を踏みつけて言う。こころは銃を強く握りしめた。できれば陽花の奴に丸投げしたいぐらいなんだが、生憎今日はあいつは仕事で不在だ。新米教師に子供の命を任せるなよ。

「初めてじゃないらしいから分かると思うが、出撃準備を頼む。サポートはイヤーカフを通じて行う。以上」

 新は拡声機から顔を離す。新とこころは走って競技場の出口に向かう。

「渚も出るんだろ」

「うん……やる。……頑張ったらいっぱい褒めてくれる?」

 渚は首を傾げながら新に問いかける。

「ああ、そりゃいっぱい褒めてやるよ」

 子供だなと思いながらも新は思いっきり首肯する。その言葉を聞いて渚の表情がぱあっと明るくなる。渚は元気よく部屋から出ていく。さぁて、俺も準備するか。鈍ってなきゃ良いが、なんたって四年ぶりの戦場だ。陽花の奴から依頼されて受けた以上最低限はやらないとな。

 そこには地下施設とは思えない広大な部屋があった。直線が二本、滑走路のように引かれている。魔法少女たちの装いも普段とは異なる。こころは青いフリルのついた白い魔女のローブ。黒は真っ黒な軍服。渚は純白の病院服のようなローブ。

 新は耳にイヤーカフがついていることを確認。音声入力をオンにする。目の前には先程の訓練施設と同程度に複雑なコンソールがあった。小さなモニター設置され三人の視界が共有されている。

「目的地はここから北西二十キロの市街地だ。大量のソルジャーが観測されている。今のところ、タンクとコマンダーの出現は確認されていない。頼んだ」

「言われなくても、やるわよ。仕事なんだから」

 黒は頭を掻きながら返答。新はコンソールを操作する。その瞬間、地震のような揺れが発生。音を鳴らしながら部屋の天井の壁が開かれる。ダクトのような構造。魔法少女たちが文字通り飛ぶことでそのまま地上に出られる仕組みになっている。

「作戦開始!」

 合図で魔法少女たちの周囲が一気に淡い粒子に包まれる。黒、水、赤色が混じり合う。一際強い光が生まれ咄嗟に瞼を閉じる。次に目を開いたときには魔法少女たちの姿はその場になかった。

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