学園編 7 本田邸 冥界の入り口

扉を開けて


恐る恐る 中を覗くと そこは12畳ほどの部屋で

ベッドが2つ並んでいるのが目に入る


ご両親の寝室だろうか? 人のいる気配はない 心なしか ホッと安堵のため息を漏らす


これ以上 中に入って調べたり 物色する必要はない

だろう


部屋の扉は 残り3つ


廊下へ戻り 辺りを見回すが先程と変わった様子は

見受けられない


1つ目の部屋に入り何事もなかった安心感からか

今日のお昼の会話が脳裏をよぎった


『あのっ 実は! 明石さんに

アンケトロニクスクウォリュート

の実験に協力して欲しいんです‥け‥ど‥』


実験とは何だ?


本田さんが詳しく説明してくれるものだと

タカをくくって その場での追求を避けた

その結果がこれなのか…


そしてまた1つ可能性も生まれる 本田さんは既に実験を開始している? いや それはないだろう

あたしはまだ何の説明も聞いてなければ承諾もしていないし…


などと自問自答しても答えは見つからない


やはり本田さんに直接 聞く必要がある


残りの扉を開け順番に部屋の中を確認していけば

本田さんが見つかる可能性は高い しかし 返事も

できない状況化にあるのだとしたら

一体 何が ……


そんなことを考えながら

階段を手前に 2番目の部屋の扉の前まで移動する

先程と同様にノックしようとした時


トゥトゥトゥトゥトゥ トゥットゥトゥ〜♪


ビクッ!


あたしは少し驚いたけど すぐスマホの着信音だと気付いた 静かな場所で いきなり音が鳴ると心臓に悪い


スマホを取り出し画面を見ると母親からの着信表示すぐ電話に出る


「 もしもし ‥‥ 」


電話は連絡も入れないで いつもより帰りが遅い娘を心配する感じの内容で


「 うん ‥ 友達の家に寄ってて 少し遅くなるかも だから… うん ‥ うん ‥ それじゃ 」


とりあえず嘘は言っない


嘘だーーッ!!!


頭の中で ◯ナ が叫んだ


いや 友達の家に来てるのは嘘じゃないからね

その友達は 行方い 知れずなのだけど …


心配をかけまい と今の状況は話さなかった


気を取り直し 扉に挑もうとするが


また ある考えが脳裏を過ぎった


本田さんのスマホは 今 何処にあるのだろう?


あたしの場合は制服のポケットに入れておくことがまず多い 時にはカバンにしまうこともあるが 身近に持ち歩くのが普通だろう 本田さんと電話をするコトは 全くと言うほど していなかったので履歴にはなかった 残念


しかし クラスの友達と全員ではないけど 連絡先を交換していたのを思い出してスマホの連絡先の画面を調べる


「あった」


喜ぶと同時に 少し震えた手で

あたしはスマホの電話のボタンに指を伸ばした



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