学園編 6 本田邸 ターニングポイント1

放課後


本田さんと あたしは一緒に下校することになった



「そっ… そう言えば お昼休みの話の続きなんだけど 」


「あ あ〜ッ え〜ッとアンケ … ト … なんとかだったっけ?」


「アンケトロニクスクウォリュート…」


よく噛まずに言えるものだ


などと感心していると

「明石さん… 今日これからなんだけど予定とか大丈夫かな?」

「ん」なぬ


あたしは今日これから寄り道する予定は特に無い 急いで家に帰ってやる様な日課も無い… 何にも無い… そう何も… 何も‥ シクシク そんな虚しさを噛みしめながら


「えっうん 特にこれといった 予定はないかな…」


「それじゃ この後 もし良かったら

私の家に来てもらえないかな?」


と お誘いの声がかかった


「え〜ッと … 本田さんの家って どの辺?」


「楠木ヶ丘なんだけど」


学校からも あたしの家からも それほど遠くはない


「じゃあ 少しお邪魔させて もらおッかな 」


「良かった その方が話もしやすいから 」


一度 家に帰って制服を着替える選択肢も考えたが 着替えて準備したり また待ち合わせしたり だと

何かと時間が掛かると思い このまま本田さんに付いて行くことにした


トコトコ歩きながら

周りにチラホラ下校する生徒も見える 人の目もあるため他愛のない会話をしながら


さらに トコトコトコ


歩きはじめて15分程したところで本田さんの家に到着した

お屋敷みたいに外観が大きいので 本田邸と呼ぼう うん


ご両親は仕事で夜まで帰らないらしい


そして

玄関まで来ると本田さんがドアの取っ手に手を掛け


ガチャリ


誰も居ない空間に


「ただいま」

「お お邪魔します」


お互い玄関で挨拶をする

「チョット部屋 片付けてくるから ここで少し待っててもらえるかな」

「うん」


本田さんは玄関のすぐ側にある階段を上がって

いった


友達の家には何度か行ったことはあるけど

始めてくる場所だと勝手がわからないからか

少し緊張してしまう


ご両親がいないのは幸いなことで それだけで気遣い気疲れすることが大幅に減少するのはありがたい


5分程した頃だろうか 2階から


ガタゴト


何か物音がしたような気がしたが 部屋を片付ける と言ってたので特には気に止めなかった なぜなら

乙女の部屋には友達に見られたくない物があったりするからね ウンウン 大いに見つからないように

隠してもらって けっこう 別に部屋を漁って秘密の花園を暴こうとする趣味は無いし それが友達の

部屋なら尚のこと


7分経過


待ってて と言われた手前 他所の家で許可も無く

勝手に動くのは良くない


お茶目心から勝手に後を着けて 一緒に部屋に入り 一緒に部屋を片付ける こんな感じのやりとりも

面白そうだし やってみたいけど実際にやって成功した前例は少ないだろう


10分後


少し 遅い? 自室で制服を着替えたり整理整頓や

何か準備してるなら全然なくはない スマホの時刻は15:55 もう 少し待ったし GO GO GO 行け 行け

行け と言われてるような気がしないでもないけど


そういえば ここは本田邸なのだ 今はご両親は留守だが もし鉢合わせした場合は 本田さんを下の名前で呼んだ方がいいのかな?

下の名前は確か ミサキ だ 普段呼ばないから 少し

考えないと出てこない 本田未咲さん これが正解♪

そんなことも考えながら…


15分が経過…


時刻は16:00 さすがに遅い気がする 許可無しで

上がって もし怒られたとしても 遅かったから様子を見に来たと 言ったら言い訳も立つ それでも 一応


「本田さ〜ん! 本田さ〜ん!」

少し大きな声で呼んでみた


「未咲さ〜ん‥」

下の名前も1度だけ


「 ‥‥ 」


脳ミソ(返事がない ただの屍のようだ )


脳ミソが代わりに返事した


本田さんが 階段を上がっていったことから 2階に

自分の部屋があるのだろう


「…お邪魔します」


もう 1度言うと 靴を脱ぎ


あたしは玄関を上がって 2階へと続く階段を 上り

はじめた


トコトコ


2階へ到着すると廊下を挟んで部屋の扉が4つあるのが見える


どれかが本田さんこと未咲さんの部屋だろう 他はご両親の部屋、寝室、書斎、物置きいくつか想像はできる 部屋の扉に名前が書いてあったら わかりやすいのだけど そんな家は少ない


初めてきた 家だから部屋は分からない


とりあえず もう1度


「本田さ〜ん‥少し遅かったから勝手に上がってきたよ〜」


「 ‥‥ 」


声を掛けてみるが やはり返事は返ってこない


少し様子を見る


人がいるような気配はどの部屋からも感じとれない


嫌な予感がする


あたしの感は当たらないことが多いのだけど…


とりあえず これでは拉致があかないので まずどれかの扉から 部屋に入り中を確認する必要がある 今のところ これしか手立てがない


ドキドキするなぁ


まずは 階段から手前の部屋 それとも奧の部屋から

どちら側から 逝く のが定石なのか? う〜ん 悩んでいると


ガチャリ


と1つの扉が開き


『明石さん! どうしたの? 何やってるの?』


と本田さんが驚いた様子で現れる


↑あたしの脳内願望で ただの妄想だった…


現実は無情にも辺りはシーンと静まりかえったままで 無気味さが増すばかり 防音壁や防音ガラスでも取り付けてあるのか 外の音も ほとんど聞こえてこない


このまま 何もしないで2階で待つ?


玄関に戻り待つ もしくは帰る


もう1度大声で叫んでみる いくつか選択肢はあるが

どの行動が正しいのかは わからない


今のところ 結果が予測できない


扉を順番に開けていく選択肢


これが1番この状況で 今の現状を打開できる

結果を見出せる 可能性が高い


しかし リスクはある 今の状況は少しヤバい気が

してならないのだ


通常で 考えられることは大体 4つくらい


部屋に帰ってきた本田さんが あたしの存在を忘れて


ガーン Σ(´ Д`;)


ベッドで横になって眠ってしまったパターン

ショックで乙女心はエグられるけど 逆に安心は

できる しかし この可能性は低いだろう


次に本田さんが 何か原因で倒れ意識を失っている

この場合は急がなくてはいけない!


だけど もし 泥棒や何者かが潜んでいて捕らわれてしまっているパターン この場合は 下手に動くのはかなり危険だ…


そして4つ目 誰もいないパターン 神隠しか 現状で

起こりうる現象なのかさえ分からない未知の可能性


あたしは気や念能力を使えないけど 常人の感覚で今この2階の空間から 人の気配は感じとれない

息を殺して身を潜めたり 隠れていた場合は わからないだろう だけど本田さんや 誰か 何かが 動いているような物音も今は聞こえないし感じとれない


思い返すと本田さんが2階に上がって数分後に物音が聞こえたような気がした が不確かな記憶でしかない


この状況は かなり危ういのでは?


ここは警察や 誰かを呼んで頼るのが1番なのでは?


いや 現状を把握できていない 説明も必要だろうし

来るまでの時間も掛かる 事件生があると決まって

もいない


4つの扉を開けて部屋の中を確認するのが 今の

現状を把握できる 1番の近道だろう


4分の1の確率… 未咲さんの部屋を1回目で当てるのは少し難しい ただ 当たったとしても部屋越しに会話できていない この状況では 決して喜べる結果に繋がるとは とても思えないのだけど‥


もう1度 上がって来た 階段の下や 辺りの様子も

伺い 警戒に 注意を注ぎながら 廊下の1番手前に

ある 扉の前で立ち止まる


勇気を出して


コンコン


「本田さん…」


少し待ったが返事はない


「 開けるよ」


と 中の人に聞かせる為でもあり 自分に言い聞かせ

勇気を 奮い立たせるような面持ちで



ガチャリ



扉を開けた






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