第5話 才能とは!?

 レイヴァンに先導されてやってきました、訓練所!

 クロウ公爵家にも一大隊程度の私兵はいるわけで、警護勤務の他に魔物討伐や稽古訓練も実施されている。

 むさ苦しい男共の中に場違いなメイド少女(私)と執事長レイヴァンが、こうして足を運んで来たので物凄く注目を集めている。

 私の学園でのやらかしは、屋敷中に広まって評判が頗る悪い。

 歓迎どころか、敵意と軽い殺気でお迎えされましたとも。

 名目上は保護になっているので、殺される心配はしていない。

 殺気を向けられたところで、おしっこチビったりはしない。うんこもだよ!

「まずは、詠唱ありで簡単な魔法から始めましょう。貴方の魔法適正は、聖と闇でしたね。それ以外は、ありますか?」

「水と風が使えます。火と土は適正値が低いので、マッチ程度の火を灯したり畝を作る程度しか出来ません」

 どちらも無詠唱ですが、とは言わないでおこう。

「では、水魔法からお願いします」

「えーっと……清らかな水乙女・罔象女神ミツメハノミノカミに願い奉る。眼前の敵から身を守る盾を我が手に! 水壁ウォーターウォール

 私を囲んだ半円球の水壁が現れる。

「……何で半円球の水壁になるんですか? 後、呪文が微妙に間違ってます。正しくは、清らかな水乙女・罔象女神ミツメハノミノカミこいねがい奉るです」

「四方八方から攻撃されても、風魔法と組み合わせれば威力が上がり攻撃を通しません。逆に檻としても使えますし、刃を生成すれば敵をザクッと殺れます」

 ドヤ顔で使い道を説明したら、珍獣を見るような目で見られた。何もおかしいこと言ってないんだけどなぁ…。

「複合魔法を使う時、詠唱はどうしてますか?」

「複合魔法に詠唱が必要だと聞いたことありません。詠唱しなくてもイメージだけで、魔法を構築できますから!」

 私の回答にレイヴァンは1分ほどフリーズした後、整理がついたのか大きな溜息を吐いた。

「手本を見せるので、貴方は復唱して魔法を放って下さい」

「あ、それは助かります。詠唱呪文間違って覚えている可能性が高くて、試験で不発に終わることが多いんですよー」

 長ったらしい呪文を覚えるのが面倒臭くて、いつも適当に覚えているから不発か発動しても効果が弱い。

 短いもの呪文はしっかり覚えて、赤点をギリギリ回避させている。

 一応、期待されて特待生で入学した経歴がある。

 無詠唱魔法でも、適正値が高ければそれなりの威力は出せた。

 カンペ最高! 実際、今の自分がどれくらい出来るのか知りたかったんだよね。

「次は、風魔法です。50m先にある的に向かってお願いします。志那都比古神シナツヒコカミよ、我はこいねがい奉る。眼前に迫る脅威・偉大なる御方をお守りした朝霧の吐息で、我が敵を討ち払いたまえ。切り裂きウィンドカッター

志那都比古神シナツヒコカミよ、我はこいねがい奉る。眼前に迫る脅威・偉大なる御方をお守りした朝霧の吐息で、我が敵を討ち払いたまえ。切り裂きウィンドカッター

 レイヴァンの切り裂きウィンドカッターは的の真ん中から上部を綺麗に切断したのに対し、私は的を微塵切り粉砕していた。

「……何を考えて詠唱しましたか?」

 胡乱気で睨まれて、私は明後日の方向を見ながら答えた。

「玉ねぎを微塵切りする時に便利だな~って思ってやりました」

「変なイメージを浮かべない! 次、火魔法」

 それから、火・土・聖・闇と順番に詠唱して魔法を行使したら、レイヴァンの顔色が徐々に悪くなり終わる頃には土気色になっていた。

 無詠唱の検証も行ったが、水と風に関してはハッキリとしたイメージが出来上がっているため威力が高い。

 逆に苦手意識を持っていた火と土は、詠唱ありの方が威力が高かった。解せぬ。

「これは、どう報告したら良いものか……」

 頭を抱えて黄昏るレイヴァンに、

「ありのまま伝えれば良いと思います」

とサムズアップして返せば、無言で頭を叩かれた。暴力反対!

 結局、私の提唱する魔法理論に対して『イメージの力業』であると結論付けられた。

 適正値が低くても、正しく詠唱できれば上級に近い中級魔法になるらしい。

 結果、私は火と土魔法の呪文の暗記・暗唱が日課に加わる事となった。くすん。

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