八話 過去と今と未来
結局頭痛は一日で治って今日は水曜。
またいつも通り学校が始まって終わって。
みんなは帰った。
僕が呼びつけた須藤さんを残して。
…。
みんなが帰る間僕は素知らぬ顔してスマホを弄っていて、
須藤さんはトイレに立って戻ってきたんだ。きちんとバックを持ち運んで。
「…ごめんね、呼び出しちゃって。」
「うん、大丈夫だよ。」
「なんか流石に気になってさ。幼馴染二人が付き合ってたなんてさ。」
「あはは、めっちゃ食い付いてきたもんね。」
「いやもうそりゃ食いつくよ〜。」
「はは。」
「えなんか質問…って感じ?」
「まあそう質問…そう質問かな。」
須藤さんが椅子を僕の机まで運んで向いに座る。
…別に重そうって訳でもないけれど、これは僕が運ばせたってことか?
「あー…こういう所かな。」
「え何が?」
「椅子僕が準備するべきだったのかなって…」
「あ椅子…位は自分で運ぶよ〜。」
「あはは、ありがとね~。」
「…。」
「ふう…。」
「まあ久しぶりに…話してなかったからさ。」
「別にあれこれ聞きたいって訳じゃなくて。」
「まあそうだね。全然話してなかったね?」
「前はあんなに仲良かったのにね。」
「お互いの家で遊んだりね。」
「あー、岡田の家のが、岡田の家で集まったのが多かったよね。」
「あぁ~!そうそう。」
「何でもあったよねえ。」
「ゲームだけじゃない?」
「まあね…。でもいっぱいゲームして、覚えてるよね。」
「楽しかったよね。」
「うん。なんか岡田にゲームでは勝ててたのが凄いうれしかった記憶ある」
「あはは。私は二人で戦ってるの見るのが一番楽しかったなあ。」
「あーそうそう。よく見てたよね。」
「うん。」
「…なんかさ、すごい確率じゃない?」
「三月中のみんなってさ、瀬凪高校行っちゃったじゃん。」
「なんかもっとこっち来る人いるのかなとか思ってたら蓋を開けたら五人でさ。」
「あぁ~やっちゃったって。僕も思った。」
「あはは!そうそう!」
「も頭抱えたよ。」
「でもさ、それで…幼馴染が二人もいてさ。」
「偶然…だよね。すごいよね。」
「…。」
「…うん。偶然、すごいよね。」
「すごい確率だったからさ。」
「一年の頃はなんか…あるかなって思ってたけどさ。」
「結局なんもなかったね。」
「…だから岡田と付き合ってたの?」
「あっはは…。」
「それは中学の時から。」
「えっ!ああそうなの!」
「あははっ!声大きいよ。」
「えぇ~そうだったんだ。」
「えいつごろから?」
「二年生の頃…かな。」
「なんかさ…あっ、大庭君も覚えてたよね。」
「あー、佐伯さんがどうとか…。」
「佐川さんね。」
「そう。なんかいろいろあって…。」
「それで岡田に相談して…付き合った。」
「ああー、そうだったんだ。」
「気が付かなかった。」
「なんか田舎って誰と誰が付き合ってるとかすぐに情報が回るとか言うのにねえ。」
「あはは、なんかあるよね。そういうの。」
「私たちも目立つ方じゃなかったし秘密にしてたしね。」
「それに結構みんな誰と誰が付き合った…とかあったし。」
「そんな感じ…かな。」
「…。」
「なんか取り調べみたいになっちゃって…。」
「はは。私も大庭君が何してたとか気になるなあ。」
「ええ~僕はなんもしてないよ。」
「そうね、ほんとに。」
「…。」
「文化祭ってさ、伊藤さんが言ってるけど。」
「うん。」
「どう…思う?」
「僕はさ、出来たら良いなって。割と思ってる。」
「あー、私も。」
「出来たら良いよね。」
「みんなどう思ってるんだろ。」
「それこそ岡田とかさ…。あんま乗り気じゃないよね。」
「ああ~うん。わたしも聞くよ。岡田から。そういうの。」
「でもいい案とかあるかな。」
「バンド…。とかさ。」
「あはは、また喧嘩しないでよ?」
「しないしない。」
「…うん。」
「ほかにいい案見つかるといいね。」
「ね、ね。」
「やりたいよね。」
「大庭くんから岡田になんか言ってよ。」
「ま岡田はやるとなればやるタイプだと思うよ。」
「え~どうかなあ。」
「しない気もするよ。」
「結構頑固だよね。岡田って。」
「まあね…、そろそろまた岡田に呼ばれるんじゃない?ラインで。」
「あはは、…まだ来てないね!」
「でもそろそろ帰ろっかな。」
「また電気お願いしていい?」
「うん、僕がやっとくよ。」
「ありがと、楽しかったよ。」
「久しぶりに話せてよかった。」
「なんかあったらまた話そ。」
「あはは、まあなんかあったらね。」
「じゃね。」
須藤さんは椅子を戻し、僕に軽く手を振って教室を出た。
曇りのち曇り 雪鶴 @Yukituru3
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