第四十三話 「в снегу(雪の中で)」
「う、うわ――――
「・・・ドウシタンダイ? ・・・ゴウナスワン?」
「ゆ、指が...っ」
「・・・・」
"ガキッ!"
「な、何だっ こいつは・・・っ!」
「・・・・」
一時凌ぎの考えで雪を避けるため山頂にある
建物へと入った河野、スサケフスキだったが....
「は、離れん――――っ
「・・・・」
"ブンッ! ブンッ!!"
"ガッ! ガッ!"
「...ォツ....ッ!」
「・・・・」
あまり使われていないのか、やや近代的な印象を感じさせる
建物の中で、河野がガラクタの様に置かれた
部屋の中の物を確かめる様に触っていると、
何気なく手にした金属片の様な物に
自分の手の指が張り付き、手を離そうとしても
その金属から指が離れない
「ヨイ...ヨイ...ト」
「んっ―――、 ンッ!?」
"ブンッ ブンッ!!
「チョイ、チョイ....、ト...」
"カチッ!!"
「く、くっ!?」
"ブンッ――――!!"
「ヨイ、ヨイ、... ...」
"カチッ!
「ッ!? ――――ス、スサケフスキ!?」
河野が慌てている様子を見て、スサケフスキは
無表情のままコートにしまっておいた
ライターを取り出すと、長唄を唄いながら
ライターの火を金属片に押し当てる
「・・・ダメダァー... ゴウナスワン...ッ
イケネェ... ソイツァイケネェヨ...?」
「!? と、取れた....」
"カランッ!"
ライターの火を金属片に押し当てると、
その熱が伝わったのか、河野の指と金属片が離れる
「ココ(ロシア)ジャア、チョットゥォノ
ユドゥァングワイノチダ...
サムサデテメエノユビトゥォソノ、
カタムゥアリィグワ....クツイトゥェトゥワ
ミテェダナ...」
「・・・・!」
"ポンッ ポンッ!
「ア~、ア~...
ヨイ、ヨイ、ヨイ、ヨイヨイヨイ~」
「(・・・・)」
河野の指が金属と離れたのを見ると、
スサケフスキはライターを軽く上に放り上げながら
長唄を口にし、再び自分が座っていた
椅子の方へと引き返して行く....
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「・・・・」
"ガタッ! ガタタッ!!"
「・・・コンヅォウア、"ワカサギ"クワイ...?」
"コッ コッ...."
「(・・・ディスプレイ、か)」
"コンッ コンッ!!"
吹雪が強まる中、外に出ようにも出れず、
部屋の隅に座りながら物が散らばった部屋の中で
中央辺りに置かれた汚れた机の上を見ると、
そこに、かなり古いテレビのモニターか
ディスプレイの様な物が
置かれているのが見える....
「チョイ、チョイ....」
"コン コン"
「(・・・・)」
何となく、窓際に座っているスサケフスキを見ると
スサケフスキは自分が遺跡から持ち出して来た缶詰に
気が取られているのか、歌を口ずさみながら
缶詰で窓の縁(へり)を軽く叩いている....
「オイ、スサケフスキ....」
「・・・ナンドゥワ? ゴウナ?」
「・・・・」
"ビュオオオオオオオオオオ――――
「・・・・」
「....ナニカ、アルッテノクワイ....?」
「・・・・」
「??」
"ヒュウウウウウウウウウ―――――
「(こいつは....)」
「ヨイ、ヨイ....」
"コン コン"
「・・・・・」
「・・・・・」
吹雪の中、外に出るに出れないのか
部屋の中に座るとやや落ち着きを取り戻したのか
河野はふと、今自分が何をしているか
考える―――――
「・・・・っ」
「ヨイ、ヨイ、ヨイ...」
"ビュオオオオオオオオ―――――
「(・・・何をしてるんだ...)」
「ア~ アアアア~」
「(・・・・)」
目の前には、まるで自分と
関りが無い様なロシア人。
"ビュオオオオオオオオ―――――
「(・・・・)」
そして、今、自分は見知らぬ地
ロシア、シベリア。
そのシベリアの地下にある場所で
警察の様な組織に追われている....
「(・・・・っ)」
「ヨイ、ヨイ、ヨイ――――....」
"ビュオオオオオオオオオオ―――――
考えがまとまらず、河野は雪が止むのを待ち
外に吹き付ける激しい吹雪を
遠く、先まで思い渡す――――
「ア~ アアアァァ~ ァアァァアアアァア~
ァァアアア~~ ァァアアア....ッ!」
"コンッ コンッ"
「―――――」
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