第二十六話 「божественность(神性)」

「Похоже вы пролили кофе


 на пол?

(大分、コーヒーを床にこぼした様だが...?)」


「エ・・・・?」


"カツッ カツッ カツッ カツッ......"


「(・・・・)」


今自分が置かれている状況に隆和が


取り乱し、慌てふためいた様子で


コーヒーを床に撒いていると、


古い、施設の跡か何かなのか


薄汚れた柱の影からツベフォフが


こちらに向かって歩いて来る――――


「г-н Цвефов,

(つ、ツベフォフ氏....)」


「Видимо они следят


 за нами,

(・・・どうやら、"彼ら"は


 私達の後を追って来ている様だ...)」


「или они?

(か、彼ら?)」


"バシャシャッ!!"


「・・・・!」


ツベフォフの一言を聞いて、


隆和は僅かに残っていたコーヒーの中身を


全て床の上にバラ撒く


「Конечно я говорю о N/S,

(もちろん、N/Sの事だ・・・・)」


「・・・・!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「(・・・ま、待てよ...?)」


「Ах пока они


 направляются в


 другое место.

(・・・ああ、取りあえず今は彼ら、から


 別の場所へ向かっている所だ――――)」


「(・・・・!)」


誰と喋っているのかは分からないが、変わらず


少し離れた場所で何も無い場所に向かって


一人言を呟いているツベフォフを見ながら、


隆和は今現在の自分の状況を考える――――


「(こ、この場所....)」


「――――――」


辺りを見渡すと、ガランとした


コンクリートに囲まれた周りの壁や床は


かなりの年数が経っているのか、


古臭く殺風景その物で、何か、


不気味さの様な物を感じさせる....


「Ах они нашли Велерога


 и идут глубже

(ああ、向こうは、ヴォレスローグを見つけて


 奥へと向かっているのか・・・・)」


「(・・・何で俺がこの男と


  一緒にいるんだ・・・?)」


「Я в порядке,Все идет


 гладко и плавно


 по воле.

(平気だ――――、


 全ては"意志"に従って順調に、


 滞(とどこお)り無く進んでいる――――)」


ブツブツと壁に向かって


言葉を掛けているツベフォフに気取られない様、


隆和はその様子をチラリとコーヒーのカップ越しに


覗き見る....


「(な、何が起きてるかは分からんが...


  何も逃げる必要は


  無いんじゃ無いか....!)」


「У тебя все нормально!?


 Я в порядке я в


 порядке!?

(大丈夫だっ・・・!?


 ――――平気、平気だろうっ!?!)」


"ビクッ!!"


柱に向かって大きな怒鳴り声を上げている


ツベフォフに、体が一瞬竦(すく)む


「(み、見た所、あのツベフォフ...


  や、奴は、気違いの様だ....))」


「Ты...! Ты собираешься


 забыть о


 существовании всей


 нашей крови и


 похоронить ее в


 небытии!?

(アナタはっ・・・!


 今までの我々の全ての血、存在を忘れ


 それを全て無へと


 葬り去るつもりなのか・・・っ!?)」


「(つ、ツベフォフは、N/Sに追われて


  どうやら頭がおかしくなった様だ....))」


「это неправда


 это неправда

(・・・違うっ ――――そうじゃないっ)」


バッ! バッ!!


「(・・・・!)」


壁に向かって派手な仕草で怒鳴り声を上げている


様子に、何か天才、いや気違いと紙一重の


危うさの様な物を感じ取る.....


「Россия, Россия!! Не то


 чтобы ты думал что


 миром правят случай


 и судьба!

(ロシア・・・っ ロシアは――――!!


 あなたが思っている様な、


 偶然と運命に支配された


 世界などでは無い――――っ)」


「(・・・麻衣っ...!)」


"ガサッ!"


「(・・・・)」


様子を見て不安を抱いたのか、隆和は


首に掛けていた


"トゥレジェ3~逆襲の疾風~"


のインストールされたゴーグルにそっと手を当てる


「(...誰か、助けてくれ....っ)」


ガタガタと手を震わせながら、


まるで精神剤を服用する様に


手にしたゴーグルに


僅かな精神の拠り所を得る――――


「Эймой

(・・・エイモイ....)」


「・・・・! 


 Г-н Цвефов

(つ、ツベフォフ氏....!)」


"コッ コッ コッ コッ―――――"


「идем дальше они


 кажется преследуют нас

(・・・先へ進もう。 彼らは、


 私達を追って来ている様だ...)」


「Вперед продолжать,

(さ、先へ・・・)」

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