第9話 Clock-7

 その日。

 時田英治は、授業中であるにもかかわらず教室の窓の外をぼんやりと見つめていた。

 教師は、普段まじめな英治にしては珍しいといぶかしんだ。


 風の強い日だった。



 英治は、自分なりにルールを決めていた。

 未来の情報を知ったとしても、事件や事故を防ぐために行動するのは英治が住んでいる市内までと決めていた。


 何しろ、日本中・・・世界中で事件は起きている。

 すべてに対して英治が救うことはできない。



 その夜、スマホに表示された事故。

 強風のために、工事の足場が崩れて作業員の2名が大けがを負ったというもの。

 ただ・・・その場所は、隣の市。

 時間は午後3時。その時間は英治は授業中である。


 場所としても・・時間としても、英治がなにもできない・・とわかっている。


 わかってはいる・・・のだが。





 午後3時。

 ここから、隣の市なんて見ることも・・・事故の音を聞くこともできない。

 ・・・おそらく今の時間に事故は起こっているはず。

 幸いにして死者は出ていないはず。


 英治の胸の奥をチクリ・・と痛みを覚えた。


 英治ひとりではできることは限られる。

 一人では・・・


 英治はとてつもなく孤独を感じた。

 

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