第10話 Clock-8

 ゆさゆさと体を揺さぶられる。

「起きてくださーい。こんなところで寝てると危ないですよ」


 酔っぱらって、いつのまにか寝てしまっていたらしい。

 目を開けると、道路の上のようだ。

「う・・・ぁ?」

 体を揺さぶっているのは、少年のようだ。

 中学生くらいだろうか?

 路上で寝ているところを起こしてくれたらしい。


「大丈夫ですか?起き上がれますか?」

「あ・・・ぁあ・・・」


 よたよたと何とか起き上がる。

 少年が支えようとしてくれる。


 大の大人が情けない。


 千鳥足で、なんとか歩道にあがり、民家の塀に手をついて体を支える。


「大丈夫ですか?タクシーを呼びましょうか?」

「いや・・・大丈夫・・・家まですぐだから」

「じゃあ、送っていきましょうか?」

「いや・・ちょっと休んだら帰るから。すまん」

「わかりました、気を付けてくださいね」


 少年はペットボトルを押し付けてきた。

 どうやらミネラルウォーターのようだ。

 ひんやりとして気持ちいい。


「じゃあ、僕はいきますから」

「あぁ、ありがと・・・」



 少年が去って行ったあと、ペットボトルを額に当てる。

 少し酔いがさめた気がした。


 家までもう少し。

 酔っぱらいは、ゆらゆらと体を揺らしながらもゆっくりと歩き出した。





 その酔っ払いの姿を、物陰から少年・・・時田英治は見ていた。

「まったく・・酔っぱらいは困るんだよ・・・」

 英治は小柄で童顔のため、中学生に間違えられていたのである。


 ネットニュースで見た事件。酔っぱらいが路上で寝てて、走ってきた車にひかれて亡くなったという内容であった。


 なんとか、未然に防ぐことができた。


 ニュースでは、市内の国道で深夜に事故があったとしか書かれておらず、具体的な場所と時間が不明。そのため、何度も往復して探し回る羽目になった。


「あぁ・・・明日は寝不足間違いなしだなぁ・・困ったなぁ」

 英治は憂鬱な気分になっていた。

 明日は土曜日。しかし、午前中から予定が入っている。


 英治は帰りにコンビニに寄って、眠気覚ましのドリンク剤を買って帰るのであった。


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