ずっと白い雪が降りますように

中里 蓮

もし雪が

もし雪が黄色だったら。

僕の赤いコートがオレンジ色になって台無しだし、

なめたらきっと酸っぱいに違いない。


もし雪が水色だったら。

天気がいいんだか悪いんだかわからなくなって、

海に行きたくなっちゃうかも知れない。


もし雪がピンクだったら。

僕は我慢できない。

お皿を天にかざして山盛りになった砂糖をかけてスプーンで食べる。


もし雪が金色だったら。

たくさんのかんむりをつくって、

それが全部入るくらいの金庫を買いに行かなくちゃ。


もし雪が黒だったら。

雪だるまはあんまり作りたく無いし、

雪投げは爆弾みたいでちょっとこわい。



雪が白いのは、今のうちかも知れない。

うそじゃないよ、みてごらん。


緑だった大地は、灰色のコンクリート。


青かった海は、にごった茶色。


透き通っていた風は、どんよりしてる。


だから、今のうちに白い雪を楽しむんだ。

誰よりも早く公園に行って、

画用紙に絵を描くみたいに足跡をたくさんつける。



もし雪がずっとずっと白だったら。

僕も僕らしく生きていける気がするよ。




『湘南文学』2002年1月1日発行 市民のページ 掲載





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