第3話 夢の中での邂逅

 寒気がして目が覚めた。

 寒気の正体は、おそらく汗だ。暑かったのだろう。


 僕は布団を跳ねのけて起き上がった。

 そしてベッドに腰掛けたその瞬間、ローテーブルの向こう側に立つ人影を見つけて思わず二度見した。


「…………」


 互いに無言。

 僕はそいつを凝視し続けたが、そいつは視線をローテーブルに落としたまま動かさない。

 ローテーブルには僕が食べ散らかしたチョコレートの残骸が残っている。


 そいつは女だった。

 白い無地のワンピースを身にまとい、ちぢれた長い黒髪を脇くらいまで垂らしている。

 うつむいているせいで髪が顔にかかり、表情が見えない。


 しかし、なんとなく怒っているように見えた。

 これは目の錯覚かもしれないが、彼女には紫色のモヤがまとわりついているような気がする。

 それに、どことなく全身が青みがかっているようにも見える。


 こいつは、まさか……幽霊?


 女は少しだけ顔を上げた。

 ワンピースにも劣らない青白い肌。狂気を覚えるような見開かれた左目。右目は垂れた前髪に隠れて見えない。


 そして、青い唇が動いた。

 声はないが、なんとなく言っていることが分かった。


「食……べ……た……な……」


 僕がそれを理解した瞬間、女の幽霊の右手が伸びてきて僕の首を掴んだ。すごい力で首を絞められている。息ができないが、窒息するより先に首の骨が折れそうだ。


 窒息か、骨が折れるか。どっちが先だ、どっちが先だ、と考えているうちに、僕は意識を失った。

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