第4話 能力覚醒

 次に向かったのは宮崎県のとある神社。申し訳ないという気持ちで泣き腫らした幣立神宮とは全く違い、参道の鳥居を潜り神社が近づくにつれて気持ちが大きくなり助手席の背もたれに踏ん反り返るように寄りかかります。そしてこう思いました。


『ここは、私の“城”だわ』


 今度は涙を流すことなく宮司さんとご挨拶を交わし、一通り境内けいだいを案内して頂きます。そして回り終えた後、今回の神社に関連する巫女の感情を探っていくと次のように言われるのを感覚として拾いました。


『境内にある石に私の力を封印した。それを取り戻しに行きなさい』


 今回出てきた巫女さんは生きていた当時この神社にいるものの中で一番の力を持っており、それが人の手に渡らぬよう石の中にそれを封印したようなのです。しかしその封印を解くのはこの日ではなく、違う日に来るようにと言われてその日は何もせず福岡へ戻りました。


 突然、フィクションやRPGのような展開になり面食らいつつも福岡の事務所に帰って作戦会議です。


「封印を解くって言っても、何をすればいいんだろうね?」


 とりあえず祝詞のりとを読んでみる? という先生の提案から、その日は祝詞をコピーした紙を貰って帰りました。


(祝詞なんて読んだことないけど……まあYouTubeでも探せば出てくるかな)


 そのくらいの気持ちで、一先ずは読んでみようと自宅の簡易的な神棚(きちんとしたものではなく神様のお札を壁に貼ってその前に塩と水を置いていました)に向かいコピーした祝詞の紙切れを開きます。第一声、声を発した瞬間に流れるような祝詞がすらすらと口からこぼれ落ちました。


 “大祓詞(おおはらえのことば)”、“十種神宝払詞(とくさのかんだからのはらえことば)”をすんなり読み上げたその直後、私の意思とは裏腹に勝手に自分の口が動きこう言いました。


「あんたホンットに遅かったわねぇ……! もう一生目覚めないかと思ったわよ」



――こうして、二番目にご参拝した神社の巫女さんが喋り始めたのをきっかけに、私の見える世界は180度以上変わってしまったのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る